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ポリフェノールの驚くべき健康効果 〜最新研究が明らかにする若々しい体づくりの鍵〜アンチエイジング研究所マガジンVol.55


はじめに

私たちの身近にある果物や野菜、お茶などに豊富に含まれるポリフェノール。この天然の化合物が、私たちの健康と若さの維持に重要な役割を果たしていることが、最新の研究で次々と明らかになってきています。今回は、ポリフェノールの持つ多彩な健康効果と、効果的な摂取方法についてご紹介します。

ポリフェノールとは

ポリフェノールは、植物が自身を守るために作り出す防御物質です。化学構造的には、分子内に複数のフェノール基(水酸基)を持つ化合物の総称です。

ポリフェノールの構造 https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=666

代表的なものには、レスベラトロール(ブドウの皮などに含まれる)、カテキン(緑茶に含まれる)、アントシアニン(ベリー類に含まれる)などがあります(1, 2)。

ポリフェノールの種類 https://www.kao.com/jp/healthscience/report/report066/report066_01/

ポリフェノールは、その化学構造によって以下の主要なグループに分類されます。

  • フラボノイド類:最も一般的なポリフェノールで、さらにフラボノール、フラバノール、フラボン、イソフラボン、アントシアニンなどに細分化されます。

  • フェノール酸類:コーヒー酸、クロロゲン酸などが含まれ、コーヒーや果物に多く存在します。

  • スチルベン類:レスベラトロールが代表的で、ブドウやピーナッツに含まれています。

  • リグナン類:亜麻仁や胡麻に多く含まれ、植物性エストロゲンとしての作用が注目されています。

抗酸化作用による細胞の保護

ポリフェノールの最も重要な機能の一つが、強力な抗酸化作用です。 私たちの体内では、日常的な代謝活動や外部からの刺激により、活性酸素と呼ばれる有害な物質が発生しています。活性酸素は、細胞膜や遺伝子(DNA)を傷つけ、老化を促進する要因となります(3)。

近年の研究では、ポリフェノールが活性酸素を効果的に除去し、細胞の損傷を防ぐことが確認されています(4)。下記に具体例を挙げて説明します。
それは、古くから地中海料理で愛されてきた2つのハーブ、セージとローズマリーです。

セージ https://www.medicalherb.or.jp/archives/238435


ローズマリー https://yamasaki-zoen.com/gardening/gardening-201601.html


セージとローズマリーは同じシソ科に属する植物で、地中海地方の伝統的なハーブとして広く使用されてきました。特にローズマリーは、高温調理にも耐えうる強力な抗酸化作用を持つことで知られています。では、なぜこれらのハーブはそれほど優れた抗酸化力を持っているのでしょうか?
抗酸化パワーの秘密:カルノシン酸とカルノソール
これらのハーブが持つ強力な抗酸化作用の鍵となっているのが、「カルノシン酸」と「カルノソール」という2つの成分です。これらの成分は、「カテコール構造」と呼ばれる特殊な分子構造を持っています。この構造が、一般的な抗酸化成分よりも格段に高い効果を発揮する理由となっています。

従来の理解では、カルノシン酸が酸化されてオルトキノンという物質になり、それがカルノソールに変化すると考えられていました。しかし、最新の研究で以下のような複雑な仕組みが明らかになりました:

多段階の変化:カルノシン酸は酸化されると、2種類の異なる物質を同時に作り出します。これらの物質は更に変化を続け、新しい抗酸化物質を生み出します。
1.循環的な仕組み:カルノソールは酸化された後も、別の抗酸化物質(ロスマノール)に変化します。
2.高温での調理時でも、カルノソールは酸化された後に自己再生する能力があります。
3.効率的な働き:これらの成分は単に酸化を防ぐだけでなく、酸化された後も新しい抗酸化物質に生まれ変わります。
この循環的な仕組みにより、少量でも効率的に抗酸化作用を発揮できます。

カルノシン酸からロスマノールへの反応 https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=406


抗酸化力が回復する機構 https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=406


日常生活への応用
これらの研究結果は、セージとローズマリーが単なる香辛料以上の価値を持っていることを示しています。調理時の抗酸化剤として、ローズマリーは高温でも効果を発揮するため、調理時の酸化防止に最適です。
保存方法に関わらず効果的です。カルノシン酸がカルノソールに変化しても、どちらの形態でも優れた抗酸化作用を発揮します。

抗炎症作用と慢性疾患予防

慢性的な炎症は、多くの生活習慣病や老化関連疾患の根底にある要因として知られています。ポリフェノールには、この慢性炎症を抑制する効果があることが、複数の研究で示されています(5, 6)。

特に興味深いのは、ポリフェノールが炎症性サイトカインの産生を抑制し、NFκBなどの炎症関連転写因子の活性化を防ぐことです。 これにより、動脈硬化や糖尿病、関節炎などの炎症性疾患のリスクを低減できる可能性があります。

脳機能の保護と認知機能の向上

加齢に伴う認知機能の低下は、多くの人々が懸念する問題です。 ポリフェノールは、脳の健康維持にも重要な役割を果たすことが分かってきました。
ブドウに含まれるレスベラトロールや、ベリー類に含まれるアントシアニンは、脳血流を改善し、神経細胞の保護効果があることが報告されています(7)。 また、これらのポリフェノールは、脳由来神経栄養因子(BDNF)の産生を促進し、神経細胞の新生や可塑性を高める効果も持っています(8)。

心血管系の健康維持

心臓病は世界的な健康課題の一つですが、ポリフェノールは心血管系の健康維持に多面的に貢献することが分かっています。
例えば、カカオに含まれるフラバノールは、血管内皮機能を改善し、血圧低下効果があることが臨床研究で示されています(10)。 また、赤ワインに含まれるレスベラトロールは、血小板凝集を抑制し、血栓形成を予防する効果があります(9)。 さらに、これらのポリフェノールは、コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化の予防にも役立ちます。

代謝機能の改善とダイエット効果

ポリフェノールは、体重管理や代謝機能の改善にも効果があることが注目されています。緑茶カテキンは、脂肪の燃焼を促進する効果があることが、多くの研究で確認されています(11)。

茶カテキン摂取で褐色脂肪細胞が活性化して、肥満を解消 https://www.kao.com/jp/nutrition/about-cat/cat07/

また、ポリフェノールは腸内細菌叢にも良い影響を与え、代謝の改善や免疫機能の強化につながることが分かってきました。 特に、難消化性のポリフェノールは、善玉菌の餌となり、プレバイオティクスとして機能します(12)。

美容効果と皮膚の健康

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