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若い世代で増える大腸がん~気になる症状があればすぐに検査を~アンチエイジング研究所マガジンVol.52


はじめに

みなさん、こんにちは、やまだです。今回は、大腸がんについてお話ししたいと思います。
大腸がんは一般的に高齢者の病気と考えられてきました。しかし近年、50歳未満の若年層での大腸がん発症率が世界的に増加しているという研究結果が相次いで報告されています。この現象は単なる統計的異常ではなく、新たな公衆衛生上の課題として注目されています。本記事では、若年発症大腸がんの増加の背景にある要因や、その対策について解説します。

若年層での大腸がん増加の現状

医学誌「Lancet Oncology」や「Science」誌に掲載された研究によると、若年層の大腸がん発症率は1990年代以降、年間2~4%の割合で増加しています。

https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(24)00600-4/fulltext

https://www.science.org/doi/10.1126/science.ade7114

特に30歳未満では顕著な増加傾向が見られ、2030年までには20~49歳におけるがん死因の主要な要因となると予測されています。

図1 若年層(25~49歳)と高齢者(50~74歳)の大腸がん発症率の推移 日本は2行目左から3列目

この背景には、スクリーニング受診率の低さや診断の遅れが挙げられます。例えば、若年患者が症状を抱えて医療機関を訪れる場合でも、その症状ががんと結びつけられないことが多いです。

リスク要因と考えられる要素

若年層での大腸がん増加の要因は明確には特定されていませんが、遺伝的素因と環境因子の双方が影響している可能性が指摘されています。

  1. 遺伝的要因
    若年層の大腸がん患者の中には、遺伝的要因を持つ人が少なくありません。リンチ症候群や他の遺伝疾患がその一例です。しかし、これらの遺伝要因だけでは全体の増加を説明するには不十分です。

  2. 環境因子
    食生活や生活習慣の変化も影響していると考えられます。砂糖入り飲料や赤身加工肉の摂取増加、抗生物質の使用、帝王切開の割合増加などが挙げられます。これらの因子は腸内細菌叢に影響を与え、大腸がんリスクを高める可能性があります。

  3. 腸内細菌との関連
    近年の研究では、腸内細菌叢の変化が大腸がんの発症に深く関与していることが示唆されています。特定の腸内細菌が産生する物質が大腸の細胞に影響を与え、発がんを促進する可能性があります。例えば、コリバクチンという物質は腸内細菌が産生する大腸がんの新規リスク要因として注目されています。

  4. 肥満とメタボリック症候群
    肥満や運動不足は若年層における大腸がんリスクを高めるとされています。特に思春期や青年期の肥満は、その後の発症リスクに直結します。

診断と治療の課題

若年層では、進行がんとして診断されるケースが多いことが問題視されています。症状としては、直腸出血や腹痛、便の形状変化などがありますが、これらが軽視されることが多いのです。また、診断までに時間がかかることで、治療の選択肢が限られる場合もあります。

さらに、若年層特有のがんの生物学的特性として、通常より攻撃的な傾向が見られる可能性が指摘されています。例えば、特定の遺伝子変異や腫瘍の位置の違いが、治療反応や予後に影響を与えることが示唆されています。

早期発見の重要性

大腸がんは早期に発見されれば治療の成功率が高まります。「大腸がんの予防と早期発見には、大腸内視鏡というすばらしいツールが役立ちます。実際に(がんになる前段階の)前がん病変を見つけて取り除くことができるからです」と、米がん協会(ACS)でがん統計調査の上級科学ディレクターを務めるレベッカ・シーゲル氏もそのように話しています。早い段階で発見できれば、5年相対生存率は90%にのぼるからです。
シーゲル氏が著者の1人を務め、ACSが2023年3月に医学誌「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に発表した論文でも、米国では55歳未満で診断された人の割合が1995年の11%から現在は20%まで増加していたことが報告されています。

https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.3322/caac.21772

以下に、早期発見のために推奨される検査方法を紹介します。

  1. 便潜血検査
    便に潜む血液の有無を調べる検査で、目に見えない微量な出血も検知できます。毎年便潜血検査を受けることで、大腸がんを早期に発見できる確率が高まります。文献によれば、毎年便潜血検査を施行することで、約60%の死亡率低下効果があると報告されています。

  2. 大腸内視鏡検査
    大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は、小さい腺腫や早期がんの段階で発見することが可能で、早期発見に適した検査方法の一つです。ただし、検査前の準備や体への負担が大きいことが課題とされています。       検査前に下剤を2リットルほど飲んで腸を空っぽにする必要があるので大変ですが、検査時に静脈麻酔をかけることができる医療機関が増えてきているので、検査自体の負担は少なくなっていると言えると思います。デメリットとしては、検査中に自分がカメラを見れないことと当日の運転ができないことくらいでしょうか。https://www.senju-ge.jp/media/naishikyo-sedative-merit#i-3

  3. 大腸CT検査(CTコロノグラフィ)
    最新の精密検査法である大腸CT検査は、大腸に炭酸ガスを注入し腸管を膨らませた状態でCT撮影を行い、3次元画像を作成して大腸の病変を診断します。大腸内視鏡検査に比べて体への負担が少なく、検査時間も短いのが特徴です。こちらのデメリットは、CTなので放射線をあびることくらいです。

食生活で意識すべきことは!?


基本的に、植物性の食事は、発がんのリスクを抑えます。https://www.nature.com/articles/nrgastro.2016.165

フィトケミカルの重要性

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