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本が好きなのかわからない話

ここ1ヶ月、2ヶ月くらいで、また“本を読みたい”という欲求がわいてきて、それが嬉しい。

これはもうランダムで訪れるから、
読めない時は全く読めないし本屋さんにも近寄らなくなる。


わたしは本が好きなのか、未だによくわからない。

小さい頃から両親は惜しみなく本を与えてくれて、
小学生の時は学校の図書室中の本を読み漁っていたし、
児童館でも図書室が好きだった。
ハリーポッターシリーズは全て読んでいたし、
中学の夏休みには、ナツイチとか夏の100冊みたいな各文庫のフェアから本を選ぶのが楽しみだったし、
高校生の時は授業をサボって本を読んでいた。
評論とか哲学書に手を出し始めたのも高校生の時だった。
大学は日本文学が専門で、今も本に携わる仕事をしている。


と書くと、めちゃくちゃ本を読んでいる人みたいだけど、ないと困るのはどちらかというとドラマとかテレビだし(その話も今noteに書いてるところ)、活字中毒というのともなんかちがう。今は断然スマホを見ている時間の方が長い。

大学生の頃は授業で扱うこともあって週に3,4冊のペースで何年間か読み続けていたけど、社会人になった今は、買っても積読が趣味みたいになっている。もはや買う時に、この本を読もうというより、積んでおこうみたいな気持ちになる。(大げさ)


たぶん、本が好き、というよりも、本を読む自分でいたい、というほうが強い気がする。

社会人になった時に、あまりに大学と違う環境の中で、自分を守るためにそう決めたような気もする。

学生の頃は、本を読むだけの時間と体力があった。好きな時に読み始め、そこから何時間でも読み続けられた。授業終わりに図書館に行って、閉館の21時とか22時とかまで読み続けていたこともあった。

だけど社会人になったら、休むほうを優先したくなったし、次の日のことを考えて夜更かしもあまりしなくなった。旅行とか演劇とかライブとか、わかりやすく楽しいほうや、座れば半強制的に作品を体験できる方を選ぶようになった。

それでも、“読みたい本”というのは常に手放さなかった。
本屋さんにもランダムだけど行きたくなる。

本屋さんに行きたいと思うのは、だいたい気持ちがざわざわしたり、頭が疲れすぎた時だ。本屋さんにしばらくいると、頭の中が静かになる。買わなかったとしても、本の表紙や背表紙をなぞっているだけで、不思議と心が落ち着いてくる。

そうやって集めた本が、気づいた時には大量になっていた。何冊あったのかはわからない。千冊?二千冊?万単位までいっていたのだろうか?

数えようと思ったこともなかったけど、あまりに増えたからある時でかい本棚を買った。高さが天井ぐらいまである上に、中はスライド式で二重になっていて、両開きの扉にもぎっしり本が入るようになっているすごい重量感のある本棚だった。地震がきたら一番やばいやつ。

その本棚にも入り切らず、ちょっと大きめサイズのベッドの下は、すべて衣装ケースに入れた本だった。

その本たちを、すべて失ったことがある。
昔付き合っていた人に別れたいと伝えたら、私の本も含め、持っているものをすべて捨てられた。
あれだけの本を、どうやって捨てたのか未だに謎だけど、管理人さんの話だと、友達を連れてきて大量にものを捨てていた時があったらしい。私がいない間に、きれいさっぱりなくなっていた。

その時に、わたしのそれまでの読書体験は、形を失った。というと大げさだけど、今となっては身軽になったなと思っている。
もうどんな本を持っていたかもわからない。
その時々の、作家やジャンルのブームみたいなものもあるから、今では全然思い出せない本が大量にある。

めちゃくちゃ大切な本もあったから(しかもそれは二度と買い直すことのできない類の本だったから)、当時はもう思い出しては悔しくて悔しくてたまらねえみたいな時期もあったけど、だんだんそこからも解放されてきて、わたしが覚えていればいいかと思えるようになった。

はからずもそのことで、中学くらいから続いた、自分がたくさん本を読むことを支えにしていた時代が終わったような気がした。

この先、数は多くはなくとも、自分はずっと本を読み続けるんだろうな、という感覚も新たに生まれたからなのかもしれない。(これは今書いていて初めて思った)

本を読んでいるときの、
だんだん集中してくると、水の底に沈んでいくような感覚が好きだ。

いつも味わえるわけじゃないけど、
その感覚を覚えているから、また本を買おうと思うのかもしれない。

仕事をしているとわたしは、簡単にわかりやすい言葉ばかり喋るようになる。本当はわかりづらくてめんどくさいことがたくさんあることを思い出したくて本を読む自分でいたいのかもしれない。

このnoteも、何度も書いては消して、こうじゃないあーじゃないと考えてみた。

とはいえ、別に誰に強制されて読むわけでもない。これからも好きに読み続けたいし、読めない時は読まない。 本が好きとは、まだあんまり自信もって言えないけど。


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