神田川俊郎先生が私に話したこと
料理人の神田川俊郎さんがお亡くなりになられた。
正直、とても悲しい。
実は私、二十年ぐらい前に、神田川俊郎先生にお会いしたことがある。
今はどうか知らないが、当時は北新地の神田川さんのお店に行くのが有名人の一種のステータスみたいな話があったのだ。
そんな中、私の占いをえらく気に入ったお客様が、若造の私に
「tarosu君、今度占いのお礼に神田川連れて行ったるわ!」と言われ、後日本当に連れて行って貰ったのだ。
当日、ドキドキしながら神田川先生のお店に入ったのだが、味は本当に確かで「こんな料理があるのか」と感激したのを今でも覚えている。
当時はスマートフォンではなくて、携帯電話。まだ携帯電話に写真を撮る機能が搭載されていない時代だった。
なので、当時の写真がないのがとても残念であるが、ここで話をした事はとても印象に残っている。
特に、初めてお会いした時の話が忘れられない。
占いのお客様はお店の常連だったのか、神田川先生と面識があったようだ。
そして、こんな話になった。
昨日Twitterでざっくりと書いたのだが、当時の会話を思い出しながら書いてみることにします。
会話形式でお楽しみ下さい。
お客様(以下客)「今日は面白い子連れてきましてん」
神田川先生「えらい若い男の子やな」
私(以下、たろ)「はじめまして。tarosuと申します」
神田川先生「けったいな名前やな。何してる子や?」
たろ「はい。占いをやっております」
客「この子占い師さんやけど、腕は確かやねん。将来見込みあるから連れてきてん」
神田川先生「君、占い師さんか?」
たろ「はい。占い師をやってます」
神田川先生「占い師やけど、オーラがあらへんな」
たろ「はい、よく言われます」
(今も占い師さん独特のオーラは殆どないのだが、昔はもっとオーラがなかった)
神田川先生「僕もたくさん占い師のお客さん見てきたからわかるねん」
たろ「そうなんですね」
神田川先生「まあ才能はあるかもしれんけど、しっかり努力を積み重ねないと一流になれんで」
たろ「はい。本当にありがたい言葉です」
神田川先生「たださっきから会話聞いてたら、確かに自分面白いから見込みはありそうや」
たろ「そう言ってもらえると嬉しいです」
客「本物の料理人が言ってるんやから、tarosuくんやっぱり見込みあるんやで」
たろ「お二人に言われると嬉しいですが、調子に乗らないようにしないと」
その後、しばらくお客様と会話をした後、会計の前に再び神田川先生が現れた。
すると、あの名言を引っ張り出したのだ。
神田川先生「ちょっとした心遣いも味のうち」
たろ「おお、聞いたことあります」
神田川先生「聞いたことあるか?」
たろ「はい、あります!」
神田川先生「テレビでよく言うてるフレーズやけど、占い師でもどんな職業でも心が大事や」
たろ「すごく響きます」
神田川先生「新地っていろんな人、お客さんがおる。心が伝わらないとあかん」
たろ「はい!」
神田川先生「花に水、人に愛、料理に心や!」
(うぉー、生で聞きたかったあのフレーズた!と思いながら)
たろ「心ですよね」
神田川先生「そうや、心や」
たろ「素敵な話をたくさん聞けて嬉しいです!」
神田川先生「占いでも成功して、また食べに来てや!」
たろ「はい!」
神田川先生が帰り際、上機嫌でサービス精神旺盛に話してくれたことを、今もたまに思い出す事があります。
さらっと人の心を掴み、場を和ませる。
お弟子さんには特に厳しかった話もありますが、思いやりやおもてなしをしたいと言った心については、見習うべきところがあるなと会話しながら私は感じたのです。
私自身が元々、商売人の息子として育ったというのもありますし、神田川先生のこだわりや雰囲気を感じ取ったので、私としては理解できることでした。
綾小路きみまろではありませんが、あれから二十年。
占い師のオーラは未だに出ませんが、私は占いを続けています。
心を込めて占いを。
そして、心を届けられるように精進します。
神田川先生、ありがとうございました。
そして、安らかに。
最後に以前書いた、神田川先生の言葉を引っ張って書いたコラムです。
こちらはサクッと読める気がします。
よろしければこちらも読んで貰えると嬉しいです。