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Let it goの訳し方

あのさー俺、最近たまたまさー、小児がん病棟関係の動画を見つけて視聴して、いたく感動してたわけ。

この動画でリンキンパークのIridescentという曲が使われてんだけど、サビのLet it goという部分を「あきらめろ」って訳している動画があったわけ↓。

なんか、ワーナーなんとかっていう、どっかの大企業の名前を冠した偉そうなチャンネルなんだけど、間違ってないか、この訳

あのさー、俺が部屋で一人涙を流して視聴してた動画ではさー、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた子ども達が骨髄移植か何かの手術に一縷の望みを託して真剣な面差しで自分の順番を待っていたり、悲観したのか急に泣き出しそうになる医療スタッフがいたり、そういう彼等を病院のシンボル的存在の天使っぽい女の子が優しく見守っていたりしているのにさ、なんでサビが、「あきらめろ」なわけ? 

この動画視聴して絶賛のコメント書き込んでいる英語圏の人々が、「あきらめろ」という意味でLet it goという言葉を理解していると思うか普通?

ついでに言うとさー、この動画に登場しているタトゥーのおっさんはさー、一昨年ぐらいに亡くなったんだけど、彼自身がトラウマサバイバーだわけ。

彼は最終的には自殺という形で自分の人生に終止符を打ったのだけど、彼が作った作品は、絶望や恐怖とガチンコで向き合う内容のものが大半で、そんな彼には「あきらめ」という言葉はどう考えても不似合なわけ。

Let it goの訳は、「あるがまま」でいいんじゃない? これ、「あきらめろ」と似ているようで、全然違うよ。

森田療法的(注1)と言ったらいいか、全身でぶつかって味わい尽くしてんだよ地獄を。地獄を己の住処とする覚悟がここにはあるんだよ。絶望と恐怖を故郷にする(受け入れる、そのままにする)というブレイブな熱い何かがここにはあるんだよ。

要するに、絶望と恐怖の中にそのまま立ち続けて、その上で最善を尽くそうとしているわけ。「あきらめろ」だと、その辺のニュアンスが全く出ない。なにその芸の無い訳。

小児がん病棟関連の動画でだけじゃなくて、ワーナーなんとかのトランスフォーマー動画でも、この訳の部分、完璧に浮いているやん。「あきらめろ」なんて訳は、人類を守るために強大な敵と闘うトランスフォーマーには最も不似合でしょ。敵が強いなら敵に降伏しろとでも言わんばかりの誤訳やん。たとえ可能性が限りなくゼロに近くても、フルパワーで闘うのがヒーローでしょ? まだ、アナ雪のLet it goの訳のほうがしっくりくるぜ。「ありのままで」とか「なるようになれ」のほうが、まだブレイブ要素が感じ取れる。

怒りにまかせて俺、ばばっとここまで書いてもうた。

あとは知らん。Let it go。


注1:「森田療法であきらめるということが問題になる場合があるが、これも何をあきらめるかをはっきりさせて議論しないと、無用な混乱を招く恐れがあろう。森田療法があきらめを説く精神療法ではないと言われる時は、そのあきらめの内容は、人生の中で果たす努力全般を放棄し、自分からは何ら積極的な行動を起こそうとしない世捨て人のような態度を意味している。その意味では確かに森田療法はあきらめを説く精神療法ではない。しかし、何をあきらめるのかを限定すれば、森田療法はあきらめを説く精神療法であるとも言える。つまり感情などの心の自然を自由にコントロールすることをあきらめ、できることを見極めて必死に行動していくことを指導するのが森田療法なのである。」 『森田療法における自然観』より引用

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