学校の駐輪場。恋愛短編小説。
あれ。誰だろう。俺の自転車に誰か寝てる。
筒井さん。起きてください。筒井さん。
「寝てなどいない。寝てなどいない」
起きてください。筒井さん。
「ハッ!私は寝ていたのか!」
寝言を言いながら寝てましたよ。
こんなところで何してるんですか?
「き、君が遅いから寝てしまったのだ」
「私は君を待っていたのだ!」
え!?俺を。
「さあ!一緒に帰ろうじゃないか!」
ずっと俺が来るの待ってたんですか?
「ま、待ってなどいない!君の自転車を守ってるついでに君が来たのよ!」
「あまりにも遅いからつい寝てしまったのだ!」
そうなんですね。
じゃあ帰りましょうか。
「ハッ!待て待てー!」
「君に重要なことを言い忘れていた」
重要なことですか?
「それはだな」
それは?
「歩いて帰るの面倒だからこのまま自転車をおしてくれないか!」
どこのお嬢様だよ!
「えー!歩くの面倒だし君は自転車。私は徒歩だ!」
「そうなると必然的に君は歩きながら自転車をおして帰ることになる」
「するとペダルがぶつかって痛くなる!」
「どちらにしても自転車をおして帰ることになるのだから、私は自転車に座ってるから君はおしてくれないか!」
しょうがないですね。じゃあ帰りますよ。
ガコン!
「痛っ!」
「君!段差でぶつかってしまったではないか!気を付けたまえ!」
すいません。
「すっかり夕暮れだな」
夕陽って綺麗でいいですよね。
「少し見て帰らないか」
いや。疲れたので早く帰りましょう。
「えー!何で何で何でだー!こんなに綺麗な夕陽だ!」
「ゆっくり帰ろうではないか」
「それとも急ぐ理由があるのか」
いえ。特には。
「わかった!わかったぞ!彼女だな!」
彼女はいませんよ。
「本当か!彼女はいないのか!」
彼女はいませんよ。
筒井さんは彼氏いますか?
「私か!?」
「私はだな」
「教えない!」
教えないのかい!
「それより夕陽の空を見てみて!」
「あの雲ハートの形に見えないか?」
そうですね。見えますね!
「そうでしょ!良い景色ではないか」