クズ芸人の同居生活。小説。
路上ミュージシャン。
バイトの終わりに駅前でギターを演奏する。
これが日課になったのはいつ頃だろうか。
女性の歌声はクリアでハスキーな歌声。
しかし、女性の歌は誰一人にも届かず雑音のBGMに書き消されていた。
たまに歩みを止め、曲を聞く人もいるが一曲聞かずに去っていく。
そんな日常茶飯事の毎日を過ごしながらもギターを演奏する。
ところがこの日は珍しく一曲聞いて帰る男性がいた。
ギターケースに何かを置いて去っていった。
何かと思い見ると一枚の紙切れとポスターがあった。
お笑いライブ!ピン芸人の笑い。
と書かれていた。
どうやらお笑いライブのチケットのようだ。
しかし期限が10年前だった。
「期限切れてる!紛らわしいな!」
この始まりがピン芸人と路上ミュージシャンの始まりであった。
次の日。
昨日のピン芸人が一曲聞き紙切れを置いていった。
お笑いライブ!ピン芸人の笑い。
期限は9年前。
次の日。
またお笑いライブチケットがあった。
期限は8年前。
次の日。
チケットの期限は7年前。
次の日。
期限は6年前。
次の日。
5年前。
次の日。
4年前。
次の日。
3年前。
次の日。
2年前。
次の日。
1年前。
そして次の日。
計算だと今年になる。
チケットの期限を見ると今年だった。
しかしそのチケットは期限切れではない。
どうしようか迷ったが作詞作曲のヒントになるかもしれないとお笑いライブを見に行った。
ライブ会場についたがそれほどお客さんはいない。
お笑いライブは見たことがない。
そしてお笑いライブが始まった。
数名のピン芸人がそれぞれネタを披露し、終盤になるとトークショーが始まった。
『来てくれたんですね!』
とライブチケットを置いていったピン芸人がいた。
どういう反応をすれば良いのかわからず困っていた。
すると舞台上から。
『僕と付き合ってくれませんか!?』
と言われた。
先輩芸人だろうか。
またこいつ片想いの人呼んでるよ!
とガヤがあった。
あーなるほど。舞台上での流れ。
その一人になったのか。
と考えていた。
断るはずだが。
『最高のヒモ生活をあなたにお届けします』
と言われた。
最高のヒモ生活!?
と考えていたが先輩芸人は何とかフォローする。
何だか断れない空気だなー。
となりなぜか付き合うことになってしまった。
おい!マジかよ!こいつクズ芸人だから絶対やめとけ!
と先輩芸人が言っていた。
お笑いライブが終わると。
『君の家泊めてくんない?』
『前の彼女の家追い出されてさ』
『フランス料理晩御飯に作るから!』
と言われた。
「どんなフランス料理?」
『そりゃーもう最高のフランス料理を作るよ!』
『ピン芸人になる前はフランス料理のお店で働いてたから』
「へえー」
と返事を食材を買うわけでもなくついてきた。
『じゃあ晩御飯作るね』
といわれくつろいでいたらすぐに。
『できたよー』
との声が。
見ると卵ご飯だった。
「なにこれ?」
『見てわからない?卵ご飯だよ』
『あ、!醤油ね!ここにあるよ』
「帰れー!」
『ちょ何々!何で怒ってるの?卵二つが良かったの』
「フランス料理は!?」
「せめてオムレツにしようよ!」
「一工夫しようよ!」
「あー何言ってんだ!」
「そういう事じゃない。そういう事じゃないだろ!」
「いいから帰れー!二度と来るなー!」
『ちょ待て待て。落ち着いて』
「何?」
『晩御飯作ってあげたから3000円になります』
「どこの家政婦だー!」
『ちょ3000円ないと生活できないよー!』
きりがないから渡して帰ってもらった。