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登山道の劣化に保全が間に合っていない!【登山道整備】【中編(実践)】

こんにちは!踏青工作室です。
先日、愛する気持ちが高じて山を守りたくなったことを書きました。今回は、山の守り方のひとつとして、実際に「北杜山守隊」という団体の登山道保全ワークショップに参加した際のことをお伝えしたいと思います(北杜山守隊については、【前編】や公式HPをどうぞご覧ください)。


①えぐれたところを埋め戻す!

皆さんも、登山中にえぐれた登山道を目にしたり、気になったことがお有りではないでしょうか?「北杜山守隊」の登山道保全ワークショップの開催された日向山(山梨県北杜市)を含め、今、全国の登山道で起こっているのは、保全不足

登山者の踏圧の他、降雨で発生する水流が登山道をどんどん浸食していますが、保全が間に合っていません。それは、リソース(担い手、財源)が全く足りていないからなのです。

今回のワークショップでは、登山道のえぐれた場所に何本か丸太を渡し、小枝や落ち葉・土砂をつめて階段状にしました。この時、修復対象の周辺にある倒木、落ち葉、流れ出た土砂を使いました。これは「近自然工法」という、地質や環境に合わせ、自然に戻りやすい状態を目指すものなのだそうです。その際、丸太をハの字型の階段状に配置し雨水を蛇行させ、流れる水のスピードを落とすことで、土砂の流出を減らす狙いもあります。

・直すところの設計図をつくる!

修復対象の周辺にあるものを使って修復していきます(麓から資材を担ぎ上げたり、ヘリで下すのではない)ので、現場で手を動かし始める前に、必要な丸太を計算し、直すところのイメージを全員で共有しました。

まず、①直す範囲(始点:下側と終点:上側)を決めます。そして、②その落差を測ります(始点に立ち、終点の高さまで垂直にメジャーを伸ばし、この終点の高さから終点までの距離を測ります)。③一段を15センチ(子供でも歩きやすい高さ)とし、終点まで何段になるかを算出します。
→これで、必要な丸太の数が算出されました。

丸太の代わりに細い枝を地面に置いて、これから丸太をどう置いていくかイメージします。勾配がきつくなるところでは、丸太の配置は等間隔ではなく細かく(多く)なります。

こんな風に丸太を置こうかと設計図を作っています

④次に、えぐれている登山道の幅を測ります。えぐれている幅より、丸太は20センチ長く(両端10センチずつ余裕をもって)用意します。
→これで、丸太の長さが算出されました。

・周辺の藪から丸太を調達!

必要な丸太の数と長さがわかったので、近くのしげみから倒木を調達します(※山梨県に許可をもらいます。倒木も立派な財産です)。登山道脇の斜面に入るので、傾斜もあり、足元は笹に覆われ不安定です。一本の丸太を運んでくるだけでも、大人3人がかり。大変骨の折れる作業でした。

丸太は枯れていても結構重い

倒木の丸太の他、埋め戻しのアンコとして、小枝や落ち葉、流れ出た土砂も集めておき、これらの材料を使って登山道のえぐれた箇所を修復しました。

最終的に、対象にした1.3mの区間に6段設置しました。かかった時間は約3時間。ワークショップ参加者9名、スタッフ7名、計16名の汗の結晶です!

じゃーん!完成!!

②自分の一歩の影響力。登山道からはみ出さない!

もうひとつ大切な意識として、今ある登山道を広げないように歩くことを教わりました。実際に、登山道のくずれているところでは、歩きやすいという理由からか登山道以外に踏み出してしまった跡や、早く下りられそうな場所では、ショートカットをしてしまったと思われる場所がありました。このような踏み跡は、次に歩く人を誘い込んで、さらに濃くなってしまいます。

どうしても登山道からはみ出さざるを得ない場所はあると思いますが、はみ出さなくても歩けるのなら、なるべくはみ出さないことを私も心掛けたいと思います。


いかがでしょうか?この日我々が修復できたのは、日向山の登山道の中のたった1.3mの区間でした。どれだけ登山道保全にリソース(担い手)が不足しているか、少し身近に感じていただけるのではないでしょうか?

次回、【後編】では現場を離れ、座学で学んだことを共有したいと思います。お役立ていただけましたら嬉しいです。

つづきはこちら!


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