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減税の政治学 篇

 大上段に構えてタイトルを「減税の政治学」としたのですけれども、ここではいわゆる西洋科学の意味での政治学や経済学の話はいたしません(ちなみに、忘れてしまいそうですが経済学がぼくの主戦場ではある)。

 あいも変わらず仁と徳、すなわち儒学をベースに政治として減税することの意味を綴っていこうと考えているのですが、ちょっと違ったな、と思われる方はこちらへどうぞ。

 なんかよう分からんですよね。減税する財源がない、って減税した後に入ってくる税収をどう使うかを考えるのが政治における経営ってもんじゃないんですかね。

 これを経済学的に切っていくこともできるのですが、今日は根本の話をします。

「政治家ども、耳かっぽじってよう聞けっ!」

という勇気もないので、目立たないようにひっそりと、こちらで。

 まずは『大学』から。大学といってもアレですよ。うちの息子が行ってるのか行ってないのかよくわからない大学ではありません(その大学も『大学』が語源です)。これは四書五経とよく纏められますが四書のうちの一冊で、四書とは『論語』、『孟子』、『中庸』、『大学』を指します。ちなみに大学とは国家を治めるための学問、いわゆる帝王学を意味しますが、人間を修めるための学問『小学』もあります。

 この『大学』の中に「本末論」と呼ばれている一節があります。

是の故に君子は先ず徳を慎む

①徳有れば此れ人有り

②人有れば此れ土有り

③土有れば此れ財有り

④財有れば此れ用有り

徳は本なり。財は末なり。
本を外にして末を内にすれば、民を爭わしめて奪うことを施す。是の故に財聚れば則ち民散じ、財散ずれば則ち民聚まる。

 漢文の書き下し文って何だか難しく感じてしまいますが、書いてあることは「風が吹いたら桶屋が儲かる」的な単純な論理ですので、如何にして桶屋が儲かるかを分かりやすくするべく番号を振ってみました。

 この前段は、殷の紂王がどのように徳を無くして滅びたかが書いてあります。このゆえに、君子はまず徳を積みなさい、から始まります。君子が徳を積めば、自然と人が集まってくる、というのは「徳とは何か? 篇」に書いたとおり。

 人が集まれば「土あり」つまり田畑が耕される、今でいうと商売ができる。そうするとそこに初めて「財あり」の状況が生まれる。ここで初めて税金が発生するわけですね。税収が入ると、道路を作ったり学校を作ったり「用あり」ということが政治の力でできる。

 要約すると、徳の高い政治をする→人が増える→GDPが上がる→税金が増える→政治が行えるという順番で国家を運営しなさい、と言っているのです。

 儒学というと、なんとも保守的な、頑固な、老害的なイメージを持たれがちですが、その政治哲学は実は非常に自由で民主主義的なものです(そもそも自由民主主義は、四書五経からスタートしている面もあるのですが、それはまたどこかで)。

 そしてこのあとに続く「本末論」は論旨が明解ですね。

 徳が本なんだと。根っこに徳があって、そこから幹や枝が伸びていって財が末にある。この本と末がひっくり返ると「民を爭わしめて奪うことを施す」ことになります。まさに闇バイトが横行する今の日本の現状を表しています。

 そして、この本と末がひっくり返ってしまうことを本末転倒と呼んだんですね。ここが語源です。

 誰か、今の日本の政治が本末転倒になってるから、まずは減税しろや、って伝えてくれませんかね。偉い人。

(了) 2025 vol.012

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