昆布は持て余さない 後編 おうち昆布締め
続き物の記事、冒頭何書くか困りますね。
前記事はこっち
です。
さて、板昆布はいいぞという話題の後半節は、昆布締めの話だ。
そもそもご存知ですか昆布締め。あれね、白身の魚を昆布で挟んで寝かすと昆布味が魚にうつってうまいっていうやつね。さらに魚の水気も昆布が吸うので、日持ちもするようになるらしい。
漫画「江戸前の旬」だと何気ない技として使われていて、一方「将太の寿司」では必殺技めいて登場した、この扱いの差が印象的でしたね。青年誌と少年誌の違いでしょうか。
閑話休題、昆布締めというのは当家にとって長らく「お店屋さんの味」であった。
それらしきものをこしらえようと、とろろ昆布で刺し身を巻いてみたり、粉末だし昆布に切り身を埋めてみたりなどしたが、いまいちおいしくなかった。
しかし人間というのは、あまり食べ慣れないとか、現実的に作るのが難しいとかいうものを「猛烈に食べたい!」と思うことはないものである。「よそのたべもの」のカテゴリにしまわれてしまう、とでも言えばいいのだろうか。
例えば何かの拍子に食べたエスカルゴのブルゴーニュ風が美味しかったとして、だからといって「家でエスカルゴのブルゴーニュ風食べたいし作ろうかな」と思うことはあんまりないのではないだろうか。
当家にとっては、昆布締めというのはそういう立ち位置のしろもので、あんまり「作ろう」とは思わないものだったのだ。
そこに昆布がやってきた。「今こそ昆布締めをやってみるときでは」と天啓が下った。折角の板昆布である。これに使わずになんとする。
行きつけの魚屋で鯛のサクを買うと、料理酒で湿らせた昆布ではさみラップでくるんで冷蔵庫に一晩寝かせた。
↑魚屋で買うと こんなに高くない
いやほんとに昆布締めの作り方というのはこれだけだ。
白身のサクを用意し、酒で湿らせた昆布ではさみ、一晩寝かせる。
なんだったらちびっこの家事手伝いとしても余裕であろう。昆布締めという成果物をちびっこが喜ぶかどうかはだいぶ分が悪いけど。
しかし、これだけのことが、だし昆布、板昆布というものを常備しない当家では長らく行われなかったのである。
で、一晩待った。
そして翌日、ちゃんと食えるものができているのか、と不安がりながらサクの端っこを切ってつまむとちゃんと昆布締めになってるじゃないですかあなた。
えらいぞ昆布。くまはその間いびきかいて寝てただけだが、昆布は一睡もせずキッチリ仕事をしてくれた。おかげでその晩は日本酒がたいそう進んだ。
そうして昆布締めという概念がアンロックされたため、当家では以来、昆布が常備されるようになった。今年の晩春のことである。白身のサクが安いときに度々作る。
もちろん、ガチの料理屋で出そうと思ったらこうシンプルにはいかないのだろうが、所詮は家庭料理である。てきとうでええねん。白板だとか羅臼だとかめんどうなことはいっこも考えなくていい。板昆布であればいい。
初回こそ高い昆布で作ったけれども、昆布締めのハウツーを理解した2度め以降はスーパーのプライベートブランドで売っているやっすい昆布である。それで問題なくうまい。でも早煮昆布というのいだろうか、安くて薄いシワシワしたタイプの昆布だと魚と接触しにくいので、まったいらな昆布を選ぶほうが楽だとは思う。
なお、「サクでは多すぎる」という場合には、お刺身の状態からでも昆布じめになるらしい。昆布で挟んで3,4時間が食べごろだそうだが、試したことはない。誰か人柱になってくれんか。
注意点としては、あまり長いこと昆布を当てないこと。水気が抜けすぎてかたいグミみたいになるらしい。サクならば1晩、刺し身なら上記が目安だ。
あと昆布がもったいないけど保存して再利用ーーとかは考えないこと。直ちに佃煮にするとかであれば問題はないと思うけど、だいぶ水気を吸っているので保存性はむちゃくちゃ悪くなっている。傷まないうちに使うか捨てよう。昆布というやつは、ただでさえ糸を引くからアカン時の見分けが付きづらくて始末が悪いよね。
まぁそういったわけで、乾物としての昆布というやつには、昆布だしをとる以外にも様々な使いみちがある。ウチではもう完全に漬物の味をエンハンスするか、昆布締めの材料としてのみ乾物の昆布を買っている。昆布だしは相変わらずリケンの粉末昆布だし
に頼る始末だ。
こういった意識の低い料理しかしないおうちでも、昆布ってやつは全然使えるし、ぜんぜん怖くないので、みんなもスーパーに行ったら乾物の棚で昆布を買おう。
ーーとか言ってたら前後編に分けたにもかかわらず文字数が2000に迫ったので、今回はこのあたりで失礼。