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延伸した北陸新幹線に乗って敦賀の友と邂逅し、能登でボランティアをする旅(合間にちょっと走る)

2024年3月30日 午後4時すぎに、私は出張先の長野駅から北陸新幹線に乗り込んだ。ここから、一週間ほど前に延伸したばかりの終点の地「敦賀」に向かう。

明日の朝から『ふくい桜マラソン2024』に参加するので、福井県内に前日入りするのだ。

敦賀駅に到着したのは、午後6時すぎ。5度目の来訪になるが、もちろん3階に新設された新幹線ホームに降り立つのは、今日が初めてである。

2階に降りて、在来線との乗り換え改札を抜ける。どうやら新幹線構内から直接外に出る術はないようだ。

在来線構内を進み、エスカレーターで1階に降りる。その先に動く歩道が延々と続いている。元々の駅舎からは、かなり離れたところに新幹線ホームが作られたということだ。

在来線からの改札口は、新幹線開通前と変わらず自動改札3台だけで乗客の出入りを賄っていた。あくまでも在来線との乗り継ぎのターミナルであり、この駅での乗降はあまり想定されていないようだ。

駅を出て、気比神宮の方に向かって1㎞ほど歩いていく。以前よりも歩道が広くなって、駐車スペースやベンチなどが多く設置されていた。今流行りの「ウォーカブルな街づくり」というやつだろうか? これで街が閑散としていたら目も当てられないのだが、じつは今まで来た時とは比べ物にならないほどの人手でにぎわっていたのだ。

やはり新幹線の延伸効果は絶大なのだろうか? 駅周辺の飲食店には軒並み行列ができ、主にに国内からであろうグループ客たちが通りを行き来していく。シャッター街だった駅前アーケードでは、ホテルを建築している現場がいくつも見受けられた。元々原発の作業員によりホテルにはけっこうな需要があったのだが、有名どころのビジネスホテルがほぼ存在していなかった。そこに加えて新幹線が来たものだから、私も今日は近辺のホテルでは部屋を取れず、歩いて30分ほどの宿に泊まることになったくらいだ。

などと敦賀の現状を説明しているうちに、これから一緒に飲みに行く友の自宅兼店舗に到着した。

天清酒万寿店』。気比神宮の参道で200年近く営業を続けている、地域に愛されている銘店だ。この店の7代目店主、N島さんと私はランニング仲間で、ここ数年はなにかと理由を見つけて敦賀まで足を運んでは一緒に走り、飲んでいるのである。

N島さんの案内で、予約していただいた近所の居酒屋へ移動した。

カウンターに並んで座り、日本海で獲れた鮮魚を中心とした料理に舌鼓を打ちつつ、互いの近況について会話を進めていく。

北陸新幹線の延伸に先立ち半年ほど前から様々な取材を受けた結果、全国各地からの注文が殺到して、N島さんはうれしい悲鳴を上げながら心身の限界近くになるまで働きづくめだった。その忙しさもようやくひと段落しそうではあるが、今日もこの後作業場に戻って皮まんじゅうを作らねばならないのだ。もちろん、明日のレースにも参加できない。

N島さんの仕事の邪魔をするのも申し訳ないので、二軒目に繰り出すこともなく、再開を誓って今宵は散会となった。


一夜明け3月31日、日曜日。

宿をチェックアウトして、30分歩き敦賀駅へ。ここから一区間だけ新幹線に乗り、福井駅へたどり着いた。

スタッフの案内に従って福井城の方まで移動すると、手荷物預かり所や更衣室などが現れた。しかしすごい人手だ。47都道府県でフルマラソンの大会がなかったのは福井県だけだったとのことで、この大会が地域のランナーたちに待望されていたのだろう。

沿道の桜が咲いていることを期待され「桜マラソン」と名付けられた。大会Tシャツも桜色だ。しかし、ここ10日くらいの急激な気温低下によって、桜はまだ蕾すら付けていない。残念だが、桜並木を駆け抜ける楽しみは来年以降に取っておこう。

スタート地点に案内され、桜色の人混みの中で待機していると、9:10 に号砲が鳴った。

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駅前の大通りを進み、交差点を右に折れる。沿道の応援もにぎやかだ。目の前が空いてきたので、ペースを上げて進んでいく。3㎞の標識を越えた先に折り返し地点が見える。ここから方向転換して、来た道を戻っていく。

交差点を左折して進んでいくと、ゴールゲートが現れた。ゴール!

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じつは私が参加したのは5kmの部だったのだ。3週間後に長野でフルマラソンを走るので、今日は軽く流すことにしたのだった。

朝から身体を動かしたので、腹が減った。昨日N島さんに聞いたそば屋に向かうことにする。

会場から40分ほど歩き、『笏谷そば』に到着。

前に10人ほどの行列ができている。ちょうど開店時刻だったので、待たずに入ることができた。古民家風の店内に入り石畳を進むと、お座敷に通された。

注文したメニューは「あげおろしそば」。越前そばでは定番のメニューのようだが、この店の特徴はすべての具材が細かく刻まれていること。

そばは見えないが、器の底部から引き上げると、けっこう入っている。

混ぜ混ぜしてからいただいた。揚げはカリカリ、大根おろしはさっぱりかつ辛めで美味い。

腹が満たされたら、今度は汗を流したくなった。5㎞しか走っていないのでたいして発汗していないのだが。福井駅まで40分かけて戻り、えちぜん鉄道で芦原温泉に移動した。

旅館がやっている立ち寄り湯を探したが、なんと営業している宿がない。市営の日帰り温泉施設は、なんと施設改修のため休業していた。

私は手元のスマホを駆使して情報収集し、駅から20分ほど歩いた先にある『青雲閣』が立ち寄り入浴をしているとの情報を発見した。テクテクと進み青雲閣に到着したのが13:30。受付を済ませようとすると、「入浴は14:00からになります」とのこと。

ロビーで30分時間をつぶし、なんとか入浴することができた。ここまで苦難した分を取り返そうと、90分も入ってしまった。

さっぱりしたところで、次の目的地に向かう。路線バスで駅まで出て、つい先日JRから第三セクターの並行在来線となった「ハピラインふくい」の電車に乗って、石川県の野々市駅まで小一時間かけて移動した。

ここから15分ほど歩いて、国道沿いの沖縄料理屋『でいご』へ。しかし、今日は走りに来たのに歩きの方が圧倒的に多いな。

現在の店主がこの店を事業承継する際に少しお手伝いをしたことがあったので、その後どうしてるかなと思い立ち寄ったのだ。

とりあえず海ぶどうを頼もうか。「すいません、品切れで」 とのことで、代わりに出てきたのは島らっきょう。

塩もみしているだけだというが、さっぱりとして美味い。

次は麩チャンプルーにしよう。「すいません、麩を切らしてまして」。豆腐チャンプルーにしてもらった。

これも美味い。泡盛が進む。

この後、サービスで出していただいた小鉢料理の原材料に紅麴が入っているなどの小ネタもはさみつつ、明日も早いので失礼することにした。


金沢の宿を6時にチェックアウトし、駅前でタクシーを拾って健民海浜公園の入口まで来た。

今日は4月1日、月曜日。世の中は新年度の始まりで慌ただしく動いているだろう。しかし、フリーランスの私にはあまり関係ないのだ。おそらく今日はとても空いているだろうという思惑で、能登半島地震の被災地ボランティアに参加することにした。

ここからチャーターバスで、七尾市に向かう。車内には15人ほどが同乗しているが、昨日まではもっと大勢の参加者でごった返していたそうだ。

途中、道の駅で休憩をはさみ、90分ほどで災害ボランティアセンターに到着した。

当日のスケジュールと班分け・役割分担を行った後、それぞれのボランティアが今日の持ち場に散らばっていく。私は軽トラの助手席に乗り、道案内と荷物の上げ下ろしの補佐を行うことになった。

今日のパートナーである運転手のおっさんは、ボランティアには定期的に参加しているとのこと。元警察関連の方だという。軽トラで道を進んでいくと、あまり沿道に大きな被害の跡は見つけられない。ただ、走っていると突然ガタガタと悪路が不規則に登場する。これは地震で寸断された道路を応急処置でつなげたために起こる事象だ。

30分ほど進んでいくと屋根にブルーシートが掛かった民家が散見されるようになった。ひとことで七尾市といっても、市町村合併を経たこともありかなり広大なのだ。被災状況も地区によりまちまちなのだろう。

結局、2軒の民家から瓦礫を引き取り軽トラに積み込んで、集積場まで運び分別の上引き渡し、今日の作業は終了した。七尾では瓦礫の引き上げと運搬業務はおおむね完了に近づいており、集積所も明日から別の場所に移されて業務縮小となるそうだ。

七尾は能登でもかなり内陸寄りなのでボランティアの金沢からの日帰りも容易だが、より被害の大きい輪島や珠洲だと、そこにたどり着くだけで一日を費やしてしまうのだろう。次回はもっと時間を取って奥能登で作業に入ることにしよう。

金沢に戻るバスの中、そんなことを考えていた。

金沢駅に着いたのは17時過ぎだった。乗車する予定の新幹線の時間までは小一時間ある。がんばった自分へのご褒美として、寿司をいただくことにしよう。

北陸新幹線で一時間ほど東京方面に戻り、新潟県の上越妙高駅で在来線に乗り換え、高田駅で下車した。

駅前の宿にチェックインすると、すぐに次の目的地へと向かった。「日本三大夜桜」との呼び声も高い、高田城址公園へと赴くのだ。折しも4,000本の桜が煌びやかにライトアップされるイベント「観桜会」の真っただ中だ。私は胸を躍らせながら歩みを進めていった。

あれ? 福井よりは多少ましだが、まだ満開どころか見どころにも程遠いレベルの開花状況だ。人通りもまばらで、気候も心なしか肌寒い。

屋台の出店だけは多く、煌びやかに自らの姿をライトアップしていた。

まあ、こんなこともあろう。しかし、私にはもうひとつの楽しみがあるのだ。

去年社員求人をお手伝いした町家バー『桔梗』がここと宿の間にある。その後どうしてるかなと思い、立ち寄ってみるのだ。

…… どうやら月曜日は定休日のようだった。

まあ、こんなこともあろう。また機会を改めて訪れればよいではないか。なにしろ上越妙高までは、最近は月の半分近く滞在している長野から新幹線でたったの2駅なのだから。

さあ、明日は宿をチェックアウトしたらまた長野に戻って仕事を片付けてから、東京に戻ろう。



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蒲公英
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