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「愛着って結局家庭の問題でしょ?」って思っている人に必ず読んでほしい話

いきなり怒り出して,ものに当たるわ,怒鳴ったり叩いたりするわ…
あまりにもバレバレの見えすいたウソをつく(その後認めてめっちゃ謝る)
遊んでほしいんやろうけど,ものを取ったり悪口を言っては逃げていく

そんな子ども達の扱いに困っている先生や保護者の方はきっとたくさんいるのではないでしょうか?

その行動があまりにも「不適切」なので,つい大声で叱ったり,ものを取り上げるなどの罰を与えたりしていませんか?

でも,”なぜ,そんな行動をしてしまうのか?”をよく考えて関わらないと,その叱責と罰がとんでもない逆効果になっているかもしれませんよ

なぜなら,そこに「愛着」の課題が潜んでいる可能性が高いからです。


愛着とは

子どもの成長・発達を考える上で,「愛着」の発達というのはとても重要な視点です。

愛着とは,『子どもとその最初の養育者(特定の人)との間に形成される深い絆』のことを言います。

愛着とは

「愛着」が適切に発達していることで,心理的な安定性や,感情理解や感情表現,人間関係の形成がうまくいきます。

逆に,愛着が適切に発達していないと,ちょっとしたことで感情的になったり,適切な方法で人との関係づくりができなかったりします。

愛着の3つの基地機能

愛着には3つの基地機能があります。

愛着の3つの基地機能

安心基地機能

「特定の人」と一緒にいるときに,”落ち着くな”,”ほっとするな”などのポジティブな感情を生じさせる感情の基地のことを安心基地機能と言います。

一緒におでかけをして,「今日も一日楽しかったね」と言い合う
公園で遊んでアイスを食べて「あぁ疲れた!でも楽しかったね」と笑い合う

そんな幸せな時間をともにするなかで育ってくるのが安心基地機能ということになります。

安全基地機能

恐怖や不安,怒り,悲しみなどのネガティブな感情をもった時,「特定の人」に守ってもらえるという認知・行動の基地のことを安全基地機能と言います。

「お腹が痛くてしんどいよぉ」と言ったら「大丈夫だよ」と言ってお腹をさすってくれた
友達とケンカをして泣きながら怒っていたら「悔しかったね,腹たったよね」となぐさめ話を聞いてくれた

そんな経験を通して,”少々のことがあっても自分は大丈夫!何とかなる!!”と思えるのが安全基地機能です。

探索基地機能

「特定の人」から離れて行動し,その後また「特定の人」のところへ戻ってくるという一連の行動を可能にし,そこで得た自身の体験を「特定の人」と共有し,受容してもらうことで,ポジティブな感情は増加,ネガティブな感情は減少させてくれる機能を探索基地機能と言います。

「今日さ,学校で発表して先生にほめられたよ」と言えば,「そう!それはすごいね,よく頑張ったね!」とほめてもらえる
「明日のテスト全然自信がないよ,どうしよう」と言えば,「大丈夫!いっぱい頑張ったし,その頑張りが一番大事なんだから」と励ましてもらえる

喜びは倍増!悲しみや不安は半分にしてくれるのが探索基地機能です。

愛着の課題を抱えていると…

「愛着」の発達に課題がある(愛着がちゃんと育っていない)と,冒頭で述べたように,感情や人間関係づくりにおいて問題が生じてしまいます。

もう少し詳しく説明すると,図にあるように,3つの基地機能それぞれの未発達による問題状況が見られることになります。

愛着の課題による問題行動

安全基地機能が育っていないと,ネガティブな感情が取り除かれない不安や恐怖から,ウソや自己の正当化,あえての危険行為!などの自己防衛の行動が見られます。

安心基地機能が未発達だと,ポジティブな感情が得られないことへの不安から,過剰に愛情を求めたり,適切ではないやり方で注目を得ようとする愛情欲求行動が見られます。

探索基地機能が整っていないと,自分が受け入れられない不安から,”どうせ自分なんて…”という自己否定や,「あいつなんかダメや!」と他者を下げて優位性を感じようとするなど,自己評価の低さを露呈する言動・行動が見られます。

愛着再形成のためにできること

「愛着」が適切に育っていないと,「家庭に問題があるから学校はどうすることもできない」「結局,家庭の問題だから仕方がない」と諦めてしまうことがありますが,そんなことはありません!!

愛着研究の第一人者の米澤先生は,『愛着障害は何歳からでも必ず修復できる』と言い切ります。

では,何をどうすればいいのか?
学校や子どもに関わる人が,どのように支援することができるのか?

愛着”立て直し”への支援

安心基地機能の支援

まずは,安心基地機能を整えることを意識します。

折り紙やおしゃべりなどをしながら一緒に遊ぶことを通して,様々な感情の交流を図ります。(感情のラベリング支援)

お手伝いやお願いを聞いてもらい,「あなたのおかげで助かった」「あなたは〇〇が本当得意だね!」などの声かけをします。(役割付与支援)

このような支援を通じて,子どもの自己有用感(自分も人の役に立てるんだ)や自己効力感(自分にもできることがある)を育てます。

安全基地機能の支援

”この人といれば安心できる”,”なんかほっとする”という感情が育ってくれば,次は安全基地機能を育てることを目指します。

楽しいことをしてワイワイできても,悩みや困り感を相談したり助けを求めたりすることは難しいものです。

そこを乗り越えて,安心感をベースにしてネガティブ感情を開示できるように支援していきます。

探索基地機能の支援

安心と安全が育ってくれば,もう支援者(特定の人)との関係は十分に愛着対象と捉えられるようになっていると思います。

そこで次に求められる支援が探索基地機能の支援です。

愛着対象は,発達とともに「特定の人」から,特定の人以外の大人,友人,パートナーといった具合に広がっていきます。

それを意図的に仕掛けて支援していきます。

例えば,特定の人(初めの支援者)と子どもの遊びに,愛着関係を広げたい別の大人や友人を仲間に入れて一緒に遊びます。(橋渡し支援)

新たな愛着対象との関係ができてきたら,初めの支援者(特定の人)から離れ,友人や他の大人と活動するのを見守り,後でその様子(楽しかったことや困ったこと)を聞いて感情を共有します。(見守り支援)

最後に

スクールカウンセラーとして学校現場にいると,愛着の課題を抱えていると見られる子どもが増えているように感じます。

愛着に課題を抱えた子ども達は,とにかく叱られるようなことをわざわざするので,愛着についての理解がなければ,なかなか適切な支援ができるものではありません。

愛着は,感情の交流や人間関係づくりのベースになるものであり,子ども達がその後の人生を豊かで幸せなものにしていくために欠かすことができないものです。

ぜひ,愛着についての正しい理解のもとに,困っている子ども達に適切な支援を届けていきましょう☆彡


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