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カウンセラーにとっても「自分にできないことを知る」のは大事(「リファー」について)

傾聴やカウンセリング、困っている人の支援を考える「伴走型支援者養成講座」の紙面ライブ。第4回はこれまでの「傾聴」にまつわることから少し離れて、リファーの重要性について。

支援者として傾聴やカウンセリングを学びつつ(余談ですが、傾聴やカウンセリングの学びには終わりが無いので、もちろん講師である私も学びながら実践を行っている)、相談者さんのお話を聴かせていただく機会が増えてくる。そうすると、「自分の力ではどうにもならない」と思えるような相談者さんと出会うこともある。そのような場合に行うのが「リファー」です。
参考文献という意味のリファレンスの動詞であるrefer。元々「自分では判断できないことを、誰かに頼って紹介する」という意味があるようです

「リファー」とは、相談者の抱える問題がカウンセラーやキャリアコンサルタントの能力や知識、技術、専門性を超え、十分な対応ができない場合に、問題解決のために適した専門機関を紹介したり、支援を依頼したりすることです。(リカレントカウンセラーサイトより)

そのためにはまず、「カウンセラー自身が、自分にできること」を把握しておく必要があります。単に、自分と合わないから、嫌いなタイプだからということでクライアント(相談者)を選んでいたら、カウンセラーとしての幅が狭くなることは自覚しておく必要があります。もちろん、合わないと感じた相談者さんを無理に継続して見ることは、お互いにとって良くないことなので、適切なリファーは必要になるでしょうが。

次に、丸投げであってはいけないということもあると思います。
自分の能力やタイミングなどの範疇を超えていることがわかったとしても、目の前におられる相談者さんは、数ある相談所の中で、たまたまかもしれないけども、私たちのところを選んできてくださった方です。目の前の人を喜ばせるという観点からも、リファーをする際は、相談者さんの話をまずは私たちがしっかりと受け止めたのちに、自分では力になれないことを素直に認め、しかるべき専門機関や別のカウンセラーへの紹介、場合によっては同行も必要になることがあります。

いずれにしても、自分が対応するよりも、その方が相談者自身のためになることを伝え、行くか行かないかは相談者自身に決めていただく必要があります。基本的には、どのようなことがあっても、強制はできませんので、相談者さんに納得していただいたうえで、専門機関などを紹介する形になります。

様々な経緯があるとはいえ、自分のことを頼ってきた人を別の人や所へご案内することになるのですから、そのこと自体に対しての責任が生じます。

だからこそ、私たちは、別のカウンセラーや、専門機関について、その人や場所がどのようなところであるか、どのような対応が行われているか、紹介するだけの信頼に足るところであるかについても、知っておく必要があります。

私に紹介されて行ってみたが、ひどい対応をされた、ということであれば、紹介者としての私の信頼も失墜し、おまけに相談者も期待したものが受けられず困難の中にいて孤立する、という、最悪の事態を招くことすらあります。

ですので、カウンセラーは、自分の近くにおられる同業他者のことも知っておく必要がありますし(横のつながりを作っておく)、医療機関なども含めた専門機関がどのような支援を行っているかについても知っておく必要があります。情報入手については、そのような人が集まる勉強会などに参加したり、相談者さんからの評判を聴いておく(ただし、それが相談者さんからの主観的な評価であることも十分考慮する)必要があります。書籍やサイトなどで、情報を集めることも必要です。

とはいえ、1つの地域やコミュニティーにおいては、しっかりとした、同業者からも、相談者からも評判のいい支援者というのは、それぞれの支援者集団を形成していることもあります。自分が信頼できる人を幾人か見つけることができれば、芋づる式に見つかっていくということもあるでしょう。

さて、自分にできないことを、誰かに(どこかに)頼ってお願いする、のがリファーなのですが、紹介先が病院である場合、相談者さんが「自分は病気ではない、自分を病人扱いするのか」と激高して、二度と相談に来てくれない、といったケースがカウンセリング業界ではあります。

このようなことが起きてしまうのは、相談者さんにとっても、カウンセラーである私たちにも、ひいては、社会にとっても損失であり、残念なことです。そのようなことが起きないようにするためにはどうしたらいいのかを、次回は考えることして、そうすると、傾聴のポイント3つ目である「おうむ返し」の話がまた伸びてしまうことになり、申し訳ありません。

さらに言うと、カウンセラー業界には「リファーしたがる症候群」と「リファーしたくない症候群」という相反する2つのリファーについての病があり、それらがなぜ起きてしまうのか、それらにどう対処すればいいのかを考える必要もあって、1つのことを話そうとすると「I・MO・DU・RU・I・MO・DU・RU」コールが巻き起こり、なかなか前に進むことができないのも、カウンセリングにまつわることあるあるだったりします。

学ぶ必要のあること、考える必要があることが、とっても多いことだけは、おわかりいただけたでしょうか。



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谷川勝彦(たにかつ)
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