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広島旅行(13) day2

(14)

次に行ったのは廃校になった小学校の近くにある「ベルベデールせとだ」という黄色い円形の作品だった。小学校の小さな校庭に車を停めさせてもらった。それは海の中にある作品で、潮が満ちていると近づけなくなるらしい。彼女は島のアート作品の中では一番これが印象に残ったらしい。よく考えれば僕もこれが一番印象に残っているような気がしている。その時はまだ潮が満ちていなくて、でも少し水があり、彼女の靴では近づけない感じだった。僕だってしっかりとした靴ではなかった(サボという革サンダルのような靴)…けれど、


好奇心の方が上回った。


僕はベルべデール瀬戸田に近づいていった。階段が近くにあり、(その階段も作品の一部らしい)円に近づくことができるとわかった。近づかないとわからないこともある。さらに気がついたことがある。階段を登って気がついたのは遠くから見ると、階段から円までの道が細く感じられたけれど(平均台のようにバランスをとりながら進まないといけないくらいの細さ)、実際は十分な道幅があり落ちる心配は無用だった。彼女は遠くからカメラを片手に眺めていた。彼女は道幅が十分にあることを知らない。僕は両足を並べても余りあるほどの十分な道幅の中心付近に立ち、両手を広げてバランスをとって歩き始めた。落ちる心配のないところでバランスをとり、時々片足立ちでとまり、手を左右に振り、バランスをとっている振りをして歩いた。

”綱渡り”する必要もないくらいに太いロープ…というか、幅十分の道での綱渡りの振り。

僕はとても滑稽なことをしていたことをわかっていた。彼女は時々声を出していたような気がする。少しハラハラしながら見ていたらしい。やはり、彼女の位置からでは道幅は狭く見えていたのだ。僕はその時、もしかしたら彼女は”道幅の広さが十分なことを知っているのかもしれない”と、心のどこかでは思っていたので、その”バランスをとるふりをする行為”が滑稽なのかもしれないと終始考えていたのを覚えている。この海の上にある円形のモニュメント、「ベルベデールせとだ」は作品自体も印象的だったが、こういった僕の内面的な…思惑(どうでもいい…)もあり、旅行の中でも印象に残る場面の一つとなった。


僕の”大道芸”はそれなりに成功したらしい。

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