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『ムービーズ』 #SEVEN(完全版)

ヘイ!浮かれている少年、少女たちよ!今、君たちにもっとも熱い情報が得られる情報誌があるぜ!ヘイ!君たちも知っている、この情報誌さ!欲しい情報のすべて、それが全て書いてあるぜ!何て言う雑誌か!?ハハッ!そんなの一つしかないだろう!?『ムービーズ』さ!!
今日は記念すべき第1記事目さ。どれにするかって…。この第1記事目に何をもってくるかって!?そんなの一つしかないじゃないか!今をときめく、デヴィッド・フィンチャーの最高傑作『セブン』しかないだろう!ヘイヘイ、そんなことまで、オレに説明なんてさせないでくれよ!今をときめくキチ◯イ映画の最骨頂にして最先端、それが「セブン」だろう!?ユーノウ!
ヘイ!それで、ここからが本題さ。どうやって、「セブン」を君たちに紹介するか…血に飢えた君たちにさ!君たちはもう飢えて飢えて飢えまくっているのさ!骨の髄まで飢えているのさ!わかってる!実はここだけの話だぜ…”オレは映画の中に入り込むことができるのさ”。そういう、特殊な体質にいつからかなっちまったんだ。だからこそさ、血に飢えた君たちに熱い本物の情報ってのをさ、血に飢えたものたちにさ!届けることができるのさ!いいかい!?この機会を逃すなよ。耳をカッポジってよく聞くんだぜ!オレのことばを一文字もお漏らししちゃだめぜ、ベイビー!!それでは、オレがセブンの中の主要登場人物に会ってインタビューしてきたことを書いていくぜ!あっオレの名前か。そんなことは重要なことじゃない…へっ、でも名乗っておこう。名もない一記者のTaさ。

(トレーシー・ミルズ)
一人目はトレーシーさ。オレはセブンの中に入るなら絶対にトレーシーに話を聞くことに決めていたのさ。どんな女性かって…どこにでもいそうで、なかなかいない…けれど、とびっきりに美しい女…というわけさ。多くを語るもんじゃないぜ!映画の劇中、トレーシーはウィリアム・サマセットという黒人のベテラン刑事に相談を持ちかけるんだ。ちなみにトレーシーの夫は新米刑事のミルズで、サマセットの最後の相棒。サマセットは定年まであと数日ときているというわけさ。でだ…、その相談ってのが“放っておけない“問題なんだな。トレーシーはミルズの子を妊娠していて、その子を産むかについてサマセットに相談をしたんだ。どうして、 1回しか会った事のないサマセットにそんなことを相談したかって!?それは、トレーシーに見る目があったってことだろう!ニューヨーク中を探したって、サマセットより信頼できる人なんていやしないんだからさ!俺だって、サマセットに相談したいことなんて山のようにあるのさ!でだ!そんなトレーシーにサマセットは言うんだよ。ここからが、サマセットの真骨頂だぜ!聞きなよ、ベイビー。サマセットは言う。「その子を産む気がないなら、ディビットには知らせるな…」そして、サマセットはこうも言う「もし、その子を産む気があるのなら精一杯甘やかして育ててやれ」ってな…。俺は知りたいんだ。その言葉を聞いて、ダイナーを後にしたトレーシーにさ!…トレーシーがダイナーから出てくるぞ。俺の出番だ!自分を信じろ!俺ならできるさ!なんせ、俺はムービーズの一番記者なんだ!
俺はトレーシーがダイナーから出てきたのを見届け、しばらく後ろをつけることにした。どこかの信号で止まった時がチャンス!こう言うのは信号待ちで話しかけるのが一番なんだ。何年も記者をやっていればな!…なんとなくわかってくるってもんよ!タイミングだ!俺のタイミング!!…トレーシーが赤信号で止まった!俺はトレーシーの隣に並ぶ!そして俺は聞く。「トレーシー。一つ聞いてもいいですか!?俺は記者なんです。」トレーシーは“話しかけた俺“の方を見ることなく。前を向いて静かに信号を待っている。「トレーシー、実はあなたに一つ聞きたいことがある。ディビッドについてのことで。」トレーシーは、俺が“ディビッド“と言う夫の固有名詞を出したことで、俺がただのその辺の輩でないことを悟ったのだろう。トレーシーはその綺麗な瞳を俺に向けた。俺は聞きたいことを忘れてしまった…。「トレーシー。あなたは、どうしてそんなに…この街が嫌いなのですか!?」とうとう、俺は最悪にも…どうでもいいことを聞いてしまった。トレーシーは何も答えずに、そのまま青になった信号を渡っていく。俺は寸前でびびっちまった。一番記者が聞いて呆れるぜ。たださ、一方でさ、俺はもうトレーシーの瞳を見た時点で満足しちまったのかもしれない…インタビューしなくてもさ、トレーシーについてのことはわかっちまったのかもしれないってね。浮かれている少年、少女よ!俺のこの浮かれちまった気持ち。これがこの記事で書きたいことさ…。さぁ、もう一つのインタビューが待ってるぜ!次のインタビューはジョン・ドゥだ!この物語の犯人のさ!こいつからの話が聞きたいだろう!俺は絶対にこいつから話を聞きたい!こいつがいなけりゃ、この話はそもそもなかったわけだ!セブンの大物ジョン・ドゥ様のお通りだ~!!てな感じで行くぜ!!

(ジョン・ドゥ)
まずはジョン・ドゥが何者かって話だろ!まぁ焦るな、諸君!ゆっくり行こうぜ。ジョン・ドゥって奴はさ、俺たちよりも深いところにいる奴さ!俺たちが見ているものの、もっと奥まで知っちまったんだよ!サマセットもミルズに言っていたろう!ジョン・ドゥを知るにはさ、まずは「カンタベリー物語」と「神曲」を読めってな!これがどういうことかわかるかい!つまりはさ、「イカゲーム」みたいなティッシュを丸めたような話を、ティッシュを丸めたみたいなアタマで見るなってこったろ!どうして、イカゲームとかティッシュかって、そんなの自分で考えろ!おのずのアタマでな!健全な少年、少女よ。君たちから湧き上がる熱い熱情を使って目玉焼きを作って、そいつで白米でも食ってりゃいいぜ!きっと生きていけるさ!ハハハ!なんて、脱線しちまったぜ。まずはジョン・ドゥってのはよ、とにかくさ!大した奴だと思うんだ。自分の日常をノート一杯に“ちっさい字“で、毎日書き続けていたんだぜ!誰に知られることもなくさ!たださ…ここまでなら俺たち凡人にでもできるこっさ!じゃぁ、何が違うって!?そりゃぁさ、誰も見た事のない深淵に向けて、突き進んだんだこっさ!精神の面でも肉体の面でも…現実的な事に関してもな!こんなことは俺にはできない!やろうとはしないが、やろうと思ったってできないだろう…そんくらいのこったぁ、俺でもわかるっつぅわけさ、少年少女よ…。俺がジョン・ドゥに聞きたいことはさ。一つなんだ。すごいシンプルなシーンだったんだけどさ。セブンでも結構重大なシーン!あのシーンさ!ミルズがジョン・ドゥを追いかけるんだけどさ、逆にミルズがやられちまってさ、ジョン・ドゥに銃口を頭に突きつけられるんだ…それでさ、その後に何が起こるってさ…。何も起きないんだ。ジョン・ドゥは引き金を引かなかったのさ。どうしてだと思う!?その後の筋書きをその瞬間に思いついたのか…、はたまた子犬みたいなミルズを可哀想に思ったのか…。俺は聞きたいんだ!そのことについてがさ…!だってそうだろう、少年少女よ。あそこで、ジョン・ドゥは何を思って、引き金を引かなかったか…この映画の真に迫る部分なんじゃないか!そうは思わないかい!?俺は聞いてやる…きっと聞いてやるんだ!『ムービーズ』の一番記者としての誇りにかけてね!さぁ、問題のシーンさ。雨の中、ミルズがジョン・ドゥを追いかけてる!結構、早いぜ、相棒!俺はミルズの後ろを追跡していったんだ!ジョン・ドゥはごみ収集車の上に隠れて、ミルズを狙ってる!俺はすぐ近くの車の後ろに隠れて様子を見守る…この先はわかっている。ジョン・ドゥはこの後、ポールのようなもので、ミルズを叩きつける!案の定、ミルズは叩きつけられ、「ウゥ…!」と声を上げ、苦しそうに倒れ込んだ!ミルズの拳銃は飛んでいく…ジョン・ドゥが車の上から降りてくる。後ろからサマセットが「ミルズ!」と叫びながら近づいてくる!ミルズは顔をしかめる…!ジョン・ドゥが苦しそうに顔をしかめるミルズのこめかみへ銃口を突きつける!あぁ…ダメか、ミルズは諦めたかのように、サマセットへ最後の言葉を発する…「ノォー…」。その時…ジョン・ドゥは何を思ったか、銃口の引き金を引かないで、その場を去っていった!ここまでは、いつも通りのセブン!ここからだぜ、少年少女よ!俺は追いかけたんだ!ジョン・ドゥを!足を引きづりながら、雨の中走るジョン・ドゥを!ジョン・ドゥは走り続けた。俺はジョン・ドゥを追いかけた!必死で!みんなわかるかい!?俺はさっきまで雨の中、走り抜ける新米刑事ミルズと同じくらいの速さで走っていたんだぜ!それなのにだ!俺がいくら追いかけても、ジョン・ドゥに追いつくことはできなかった!ジョン・ドゥは離れていく!俺は諦めない!俺は遥か先に見えるジョン・ドゥに向かって走り続けた!いいかい!勝負はこれからさ!少年、少女よ!血に飢える少年、少女よ!俺はこの雨の中、いつまでもいつまでもさ…ジョン・ドゥにインタビューできるまで走り続けてやる!この記事はまだ未完成のままだ!だが、諦めないさ!
どうしてかって!?

俺が『ムービーズ』の一番記者だからさ!

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