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カメラ系 YouTube を観るときに気をつけること

今日は、カメラ系 YouTube を観る時に視聴者が気を付けるべきことを考えたい。

最終的な結論自体は平凡だ。しかし、結論に至るまでの過程を考えてみると実に興味深い。YouTuber・視聴者の双方が構造的な問題を抱えており、話が複雑になっているのだ。結果として、ネットリテラシーに自信がある人でも落とし穴に落ちる可能性がある。お守り感覚でご一読していただきたい。


1.カメラ系 YouTube とは

ここではカメラ系 YouTube を「写真や映像の撮影手法や考え方、撮影機材について情報発信を行う YouTube チャンネル」と定義する。
また、こうした YouTube チャンネルを運営する団体・個人をカメラ系 YouTuber と呼ぶこととする。

2.カメラ系 YouTuber の構造的問題

まず、カメラ系 YouTuber は構造的に難しい立場にある存在であることを確認しておきたい。

2-1. カメラ系 YouTuber の目標

チャンネルによって目指している先に違いがあるだろうが、どのチャンネルでも特に重要な目標は次の2つだろう。

  • 目標①:ファン(チャンネル登録者やSNSのフォロワー)を増やす

  • 目標②:正確な情報発信を心がけ、炎上を避ける

目標①は、インフルエンサーとしての最重要課題だ。ファンが多ければ、再生回数に応じた収益も多くなり、また YouTube 外での仕事(イベントへの登壇など)の話ももらいやすい。有料のオンラインサロンを運営している場合には、そこへの流入も期待できる。

目標②は、目標①とコインの裏表の関係にあるようなものだ。正確な情報発信によってチャンネルの信用力が上がれば、それだけファンも付きやすくなる。逆に言えば、動画内に不正確な情報が多いと視聴者は離れてしまう。また、炎上系の YouTuber でない限り、炎上はチャンネルのイメージダウンにつながるため、できれば避けたいところだろう。

2-2. カメラ系 YouTuber のジレンマ

しかし、この2つの目標は両立することが非常に難しい

まず、目標①(ファンを増やす)を達成するためには、できる限り多くの人に見てもらえる動画を作るべきだ。そのためには、動画内で特定の層に語りかけるよりも、より広い層に向けたメッセージを発信する方が望ましい。

一方で、目標②(正確な情報発信)を達成するためには、想定する視聴者を限定した方がいい。下の記事でも解説したように、最適な撮影機材はその人が置かれた状況や目的、予算によって異なる。

同じロジックで、撮影手法や撮影哲学のようなものも状況・目的などによって異なる。正確性を期すのであれば、想定している条件をハッキリと動画内で明言すべきである。例えば「野鳥撮影を行うカメラマンで、予算が潤沢にあり、重量級の機材を運搬することよりも撮影した写真の解像度を重視する人には、レンズAよりレンズBの方がおすすめだ」くらいまで言えば、ツッコミ所は限りなくゼロだろう。

すなわち、目標①は「議論の主語を大きくする誘因」を持ち、目標②は「議論の主語を小さくする誘因」を持っている。完全には両立し得ない目標なのだ。

このような場合は、両者のバランスが取れる点を探ることになる。主語を過剰に大きくすることはしないが、かといって100%正確だと言えるほどに保守的にもしない、そんな塩梅でカメラ・写真・映像を語ることになる。(もちろん全員がそうだとは言ってない。)

このように、カメラ系 YouTuber の話は「ちょっとデカい主語」で語られやすい。しかし、それは彼らの知識不足や人間性に起因するものではなく、カメラ系 YouTuber という職業の構造によるものだ。

3.視聴者側の社会構造的な問題点

ただ単に「話が盛られている」とか「過剰に一般化がされている」みたいなことであれば、インターネット上の至る所に見られる。そこに「ネットリテラシーを
高めて、言い過ぎな話は無視しましょう」以上の新しい教訓はない。

ひろゆき氏の有名な言葉(テレビ朝日『報道ステーション』より)

しかし、カメラ系 YouTube に関しては、視聴者側も根深い問題に直面している

詳しい話は下の記事で説明しているが、ざっくり言えば、「自分の趣味・趣向が否定された場合、私たちは過剰にネガティブに受け止めがち。結果として自分と異なる意見を否定するようなポジショントークをしてしまう」という性質が私たちにはある。

つまり、カメラ系 YouTuber が自分と異なる立場を示して場合、僕たちは思った以上に傷つき、そしてSNSなどに「(YouTuber名)は全然わかっていない」などと否定的なコメントを残しがちである。たとえ、ネットリテラシーが高い人であってもだ。

もちろん、ネガティブな感想であったとしても、誹謗中傷にならない範囲であれば、それをSNS に投稿をするのは各人の自由だ。しかし、その投稿が、今度は逆に元々の YouTuber と考え方が近い人たちにとって「趣味・趣向の否定」と映る可能性がある。そうなると、水掛け論に繋がるのは想像に難くない。

そんな不毛な時間を過ごすのであれば、自分の好きなように写真・映像・カメラと触れ合っていた方が、精神衛生上好ましくないだろうか。(もちろんレスバが好きなのであれば止めはしない)

4.まとめ

この記事では、僕たちがカメラ系 YouTube を観る時に気をつけるべきことを考えてきた。

職業の構造上、カメラ系 YouTuber の話は主語が大きく語られがちである。一方で、社会構造上、視聴者である僕たちもカメラ系 YouTuber の意見に対し過剰に反応しがちである。

このことを意識して、視聴者である僕たちは、カメラ系 YouTube で語られる内容を割り引いて受け取った上で、自分と異なる意見が出てきても過剰に反応しないように努めるべきだ。

繰り返しになるが、「過剰反応しない」というのは案外難しい。例えば、自分が開放F値での撮影を好んでいるのに、YouTube 動画内で「絞り開放で撮るな」という言説が出てきたら、どうしても何か一言言ってやりたくなる。それ自体は正常な心の動きだ。

しかし、「YouTuber は主語を大きく話しがちなんだな。そして、私はそれに過剰に反応しがちなんだな」と自らをメタ認知することができれば、単にYouTubeを見ただけの時よりも、冷静に対応できると思う。自分と異なる意見の動画に出会ったときは、少しだけこのnoteのことを思い出してほしい


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たなぱんだ
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