自発的に動くスタッフを育てるために、まずやるべきこと
「自分で考えて動けるスタッフが欲しい」と思ったことはありませんか?それは、飲食店を運営するうえでの理想的な状態ですよね。例えば、毎日の業務の中で、いちいち指示を出さなくても、スタッフが自発的にお客様のニーズに応え、次に何をすべきかを考えて行動できる。そんな状況が実現したら、店長としてのあなたの負担は大きく減り、スタッフもお客様も幸せになる。そう考えると、まるで夢のようです。
でも、ここに大きな落とし穴があります。多くの店長が、「自分で考えて動けるスタッフに育ってほしいから、あまり細かく教えないほうがいい」という考えに陥りがちです。しかし、これは実は大きな間違いなんです。教えることを避けると、スタッフはどうしていいか分からず、結果的に仕事への自信を失い、不安が募り、最終的には辞めてしまうことにもつながるのです。
教えないと、スタッフはどうなる?
例えば、大手のコーヒーチェーン、スターバックスでは、細かいマニュアルではなく「グリーンエプロンブック」という行動指針を大切にしています。このブックは、どう行動するか、どのようにお客様に接するかを、スタッフ自身が考えて実践できるように導くものです。つまり、スターバックスでは、スタッフに考えさせる力を育てるための「コーチング」という手法がしっかりと根付いているのです。
しかし、ここで注意が必要です。スターバックスのような大企業であれば、コーチングが徹底されており、その基礎となる知識やスキルも共有されています。しかし、小規模の飲食店で、同じことをやろうとするとどうでしょうか?もし、ある程度教えて「その辺は、好きにしていいよ」と言ってしまうと、スタッフはどうしていいか分からず、戸惑ってしまいます。結局は、それぞれが勝手な判断で仕事を進め、チームとしての統一感が失われてしまう可能性があります。そうなると、お客様にとってもサービスが不安定になり、最悪の場合、スタッフが独りよがりな行動に走ってしまうことさえあるのです。
まずは「教えること」から始める
では、どうすればいいのでしょうか?答えはシンプルです。最初は徹底的に教えること、つまり「ティーチング」を取り入れることです。「ティーチング」とは、指導者が正しい答えを、つまり「正解」を直接伝えるという方法です。スタッフに考えさせる前に、まずは基本的な知識や技術をしっかりと教えることが重要です。アクシデントがあった場合も、「この場合はこうする」、「その次はこれをする」などあらかじめ決めておくのです。そうすることで、スタッフは何をどうすればよいのかが明確になり、不安なく仕事を進められるようになります。
スムーズな成長のための「順番」
人材育成においては、順番が非常に大切です。まず、ティーチングで基礎をしっかりと教え込み、その後にコーチングを導入して、スタッフが自ら考え、行動できるように促す。この順番で行えば、スタッフは混乱せず、スムーズに成長していきます。
では、ティーチングをどのように行えばよいのでしょうか?まず、店長であるあなた自身が、自分の業務を振り返り、どんな作業をしているかを棚卸しすることがスタート地点です。自分の仕事をリスト化し、どの作業が重要で、どの作業がどれだけの時間を必要としているかを把握する。この「棚卸し」を通じて、スタッフに教えるべきことが自然と見えてくるのです。
次に、そのリストを使って、スタッフに具体的な指示を与えます。ポイントは、指示があいまいではなく、誰がやっても同じ結果が出るような明確な基準を設けることです。これが、スタッフが不安なく業務に取り組める土台となります。
スタッフの成功を「見える化」する
さらに重要なのが、スタッフの成長や成功を「見える化」することです。具体的な目標や基準がないと、スタッフは自分が成長しているのか、正しい方向に進んでいるのかが分からず、不安を感じてしまいます。逆に、達成すべき目標や評価基準が明確であれば、スタッフは自信を持って仕事に取り組むことができるのです。この自信が、スタッフのモチベーションを高め、最終的には離職率の低下にもつながります。
ティーチングの効果を最大限に引き出す
ティーチングは、単に技術を教えるだけでなく、スタッフが自分の仕事に誇りを持ち、自分の成長を実感できるように導くプロセスです。これは、飲食店にとって、スタッフの定着率を向上させるための非常に効果的な方法です。
教えることを恐れず、まずは基礎をしっかりと伝え、その上でスタッフに考える力をつけさせる。このバランスを保つことで、あなたの店はより強いチームになり、結果的にスタッフも長く働いてくれるようになるでしょう。そして、何よりもお客様にとって、安定した質の高いサービスを提供できるようになるのです。
あなたの店舗に、変化を起こす時が来た
飲食店の運営は決して簡単ではありません。しかし、スタッフを正しい方法で育成することで、今の課題を乗り越え、店舗全体の成長を実現することができます。まずは「教えること」を恐れず、しっかりと基礎を固めること。そして、その基礎の上に、スタッフが自ら考え行動できる環境を作ること。このアプローチで、あなたの店は確実に変わるはずです。