『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(古屋星斗著)で私がグッときたポイント解説。
若手は「育てる」のが難しくなったのではなく、「育ちにくい」環境になったのだ、ということを、私は2003年にOJT関連の人材育成や企業支援を開始した時に思った。
「若い人って●●だよね」
という言説は、もう常に聴くので、それは、「はいはい、そうですね」と応じればよいのだけれど、(自分だってさんざん言われてきた、若いころは)
それよりも、
「若い人の性質とかキャラクタとかあるいは資質みたいなもん」
が「育たない要因」なんではなく、
環境変化が激しすぎることで、その変化が「育ちにくい」方向に向いたものであることで、若手は、そう簡単には育ちにくくなったのだと思っていた。
たとえば、昭和61年(1986年)入社の昭和世代の私が1年目にやっていた仕事と今の新入社員がやっている仕事は、全然質が違う。
断然、今のほうがうんと高い。
求められるレベルがとてつもなく高い。
なのに、コミュニケーションは電子化されて、見えなくなり、
さらにテレワークが加わって、「隣の人を見ながら学ぶ機会」も激減した。
そもそもこの20年で、セキュリティとかコンプライアンスとか、”ルール”みたいなものがどんどん厳しくなり、「門前の小僧習わぬ経を読む」はもう成り立たなくなっている。
門前には、まったくお経が漏れてこないからである。
昔、コピー機に出たままの提案書とか作りかけテキストとか見積書とかいっぱいあって、そういうものを門前の小僧は、こそっと見ていたものだった。
先輩の机の上にあるもの、先輩のキャビネットに並んでいる書籍などを見て、刺激を受けていた。
けれど、そういう環境はほぼ一切なくなった。
環境がとにかく変化した。
何もわかっていない新人(新卒であろうと中途入社であろうと)が環境から学ぶのがとてつもなく難しくなったのだ。
と、色々あって、OJT支援に関わってきたこの20年ちょっと、「変化したのは、若手じゃなくて、環境だぜ」を訴え続けてきたのだけれど、この著者も同様のことを仰っている。
さらに、「経験も違う」とも。
そして、「職場に不満はないけど、キャリアの不安がある」というフレーズにはぐっとくる。
昭和は、たぶん、「職場に不満はあるけど、キャリアは不安なし」だったと思うのだ。(幻想だとしても。そして、幻想だったが)
なので、「職場に不満はあっても、キャリアに不安なし」世代の昭和上司は、「職場に不満はないけど、キャリアに不安だらけ」という若手世代の焦燥感などがきっとそう簡単には理解できないのだろうと思う。
理解できないなら、理解する努力をすべきである。
未来は、若者のものであり、未来を作る若者を理解するのは、先ゆくものの役割だと思うからである。
ひとまず、この本を読んでみて欲しい。
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