機内で娘を2時間半あやし続け搭乗がトラウマとなったわたしが3年後娘の成長を感じ涙した話
「今回はご機嫌でいてくれるかな」
一歩一歩と機内へ近づくたび私の胸はドキドキしていた。
旅へのワクワク感……ではなく不安から。
わたしの前には夫、3歳の娘が歩いている。私の手の中には0歳の息子。
そう。心配の種は娘である。
3年前の恐怖が私の頭をよぎっていた。
友人の結婚式に参加するために羽田から沖縄へ飛んだ。
まるで地獄のような2時間半を過ごした。
当時1歳の娘は普段からよく泣く子だった。
機内で他の乗客の迷惑とならなよう、あらかじめいくつかの作戦を練った上での搭乗。
頼りになる夫と座席は離れてしまっていた。
9月半ばの那覇行きはほぼ満席。早めに座席を予約したはずだったが、
並びの席は取れなかった。
さぁ、いざ出発!!!
那覇へ向かう機内。
乗客の多くのみなさんの目的は旅であろう。
これから待ち受けている旅にドキドキワクワクしているに違いない。
ところが私はドキドキでも違ったもの。
娘が泣かないかハラハラドキドキしていた。
離陸して10分後。「うぅー」娘のうなり声。
「早すぎないか」焦りに焦るわたし。
抱っこしている娘はもぞもぞ動きだし「へっへっ」と泣き顔になる。
嫌な予感。
昼寝する気配全くなし。早くも作戦①は失敗。
隣には20代前半のカップルが座っていた。娘の様子を察してか、
お兄さんが「ほれほれ」と持っていたスマホをあちらこちらに動かして、おもちゃ代わりにして遊んでくれた。
娘は初めて見るおもちゃ……というかスマホに興味深々。
「ありがたい。いい人。神!!」と心の中でつぶやいた。
しかし、この遊びをずっと楽しんでいるはずがない。
娘の機嫌がまたもやくもってきた。
新設なお兄さんへ「ありがとうございました。助かりました。」とお礼を言いつつ、作戦② のおもちゃであやしてみることに。
予想外。普段遊んでいるおもちゃはお気に召さないよう。
お気に入りでいつも10分は遊んでくれているのに。
手で払いのけてしまう。何度トライしても同じこと。
「ダメか」
おもちゃ作戦はしぶしぶあきらめることにした。
作戦③ のおやつ作戦へ。
パクパクとおとなしくベビーせんべいを食べてくれている。
私もホッと一息。張りつめていた緊張がほぐれ、しばらく何も考えず
ただただ娘におせんべいをあげていた。
おせんべいが底をついた。時間稼ぎのため、なるべく少しずつ与えて
いたがもうなくなってしまった。
「へっへっ」と娘が再び泣きの態勢になってきた。
よし。最終作戦「ギャレーであやす」を決行してみよう。
抱っこひもをつけ、立ってゆらゆらしているとにっこりと笑顔を見せてくれるようになった。窓から一面に広がる雲の景色を見せたり、ギャレーの中を歩き回ったりした。客室乗務員の方も手遊びをしては、娘のご機嫌をとってくれた。
1時間半ほどギャレーで過ごしていただろうか。
娘はいつのまにか寝てしまった。
そんな時「着陸態勢に入りました。座席についてください」と機内アナウンスが流れた。座席についた途端、2時間半ずーっと張りつめていた緊張が一気にほぐれどっと疲れを感じた。
「あー疲れた」と思わず口からこぼれてしまった。
隣の優しいお兄さんに聞こえたかどうかはわからない。
あれから3年が過ぎ、今回機内で娘はどのように過ごすのだろうか。
もうすぐ4歳。言えば大抵のことは素直に聞いてくれる年齢になった。
しかし3年前の出来事を少しトラウマのように感じていたわたしは
不安でいっぱいだった。
羽田から札幌までの1時間半のフライト。
「あれれ」
わたしの心配をよそに、娘はとても楽しそうに過ごしていたのだ。
客室教務員の方からパズルのおもちゃをもらっては、夫と夢中に組みたてていた。窓の外に広がる白い雲を見ては何度も「すごいねー」とつぶやいていた。離陸と着陸は、遊園地のアトラクションを楽しむかのようにキャッキャッと手足をバタつかせて超ご機嫌。
「機内で過ごす」という貴重な体験を娘なりに十分楽めていたようだ。
「成長したなぁ」
あっという間に札幌に到着。
機内を降りる道すがら、客室乗務員の前を通っては「バイバーイ」と得意げに手を振る娘。それを後ろから見ているわたしは目頭があつくなった。
抱っこひもで揺られている息子はそんなわたしをぼーっと見つめている。
おわり
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