3つのポイントで考えるUXライティング
こんにちは。TAM UX/UIチーム、デザイナーの和佐(@wa_sser)です。普段はUX設計からUIデザインまで幅広く担当しています。
Webサイトやアプリケーションを設計するうえで、ユーザに対してどのような『言葉』のコミュニケーションを行うのか。今回はUXライティングのお話です。
UXライティングとは、サービスとユーザを繋げるコピーライティングのことで、タッチポイント(UI)にて適切な言葉でユーザを導く役割があります。例えば、サービスを紹介する文章、FAQの受け答え、お問い合わせフォーム、ボタンやナビゲーションの項目、エラーのアナウンス、など多岐にわたります。
私はお世辞にも文章力はありませんし、かっこいいコピーが書けるわけでもありません。(このnoteも毎回ひーひー言いながら書いています😭)
ただ、過去携わった仕事を振り返ると、UXライティングは誰かにどうしても伝えたいことがある時に考えるプロセスに近いのではと感じています。
人の心を動かすのは、”あなたに向けて”が伝わる言葉。
そして『どんな人に』『どのタイミングで』『どのような内容を伝えるのか』が重要です。
まずは、相手(ユーザ)の気持ちに寄り添うこと。次に、どんな風に伝えようかな、少しの工夫で受け手の印象や伝わり方も変わります。最後に、相手に応えるようにストーリーで伝える。この3つのポイントといくつかの事例をもとに、UXライティングを考えてみたいと思います。
1. ユーザの気持ちに寄り添う
UXデザインのプロセスとして、まず最初に行うのは『ユーザに共感すること』です。そのためには、ユーザのコンテキスト(=今置かれている状況や環境)を理解する必要があります。
デザイン思考のプロセス
1. 共感する(empathize)
2. 問題定義する(define)
3. 創造する(ideate)
4. プロトタイプを作る(prototype)
5. テストする(test)
参考:The Design Thinking Process
UXデザイン設計では、ユーザ調査やクライアントへのヒアリングなど、様々な手法でコンテキストを読み解き、理解を深め(共感)、問題定義を行いますが、これらの内容はコピーライティングにも共通することです。
例えば、メルカリの「捨てない大掃除プラン」。
サービス名称からもどのようなターゲットに向けたサービスなのかが伝わってきます。
大掃除といえば、不用品が出てきて始末に負えないこともしばしばですが、それを「捨てない」選択肢。『もったいない』はユーザのコンテキストであり、見る人を前向きにさせるコピーが続き、『今年はもう大掃除やめておこうかな…』なんて人も、我が家にも何かあるかも、という気持ちにさせてくれます。
2. 少しの工夫で伝わり方が変わる
UXライティングと聞くと難しいことをするように見えますが、少しの工夫で伝わり方が変わります。
スマートフォンが主流になり、ユーザの閲覧スピードが早いことから、情報を簡潔に伝えることはもちろん、発信側は『どこで』『何を』伝えるのかが問われます。
Apple、Spotify、Pinterestを例に見ると、コピーの文章量を抑えながらも、適切な箇所にサービスの良さを伝える内容が詰まっているのが伺えます。
Apple (Website)
オンラインで購入すると送料無料。配送は非接触。スペシャリストのサポートなど魅力もいろいろ。
こちらはAppleのWebサイトの一番最初に表示されるコピーです。
送料に関する表記はよく見かけますが、コロナ禍の配送に関する配慮も伺えます。Appleの魅力のひとつである手厚いサポートもしっかり添えられています。店舗で触れて検討するのが難しい時期であり、購入に悩む方に向けて、端的にポイントを抑えています。
Spotify (App)
ピンとくる曲に出会うまでスキップし続けよう。
Premiumなら、スキップを使い切る心配をしなくて大丈夫。
こちらはSpotify Premiumの広告コピーです。
SpotifyのFreeプランは、時間ごとに楽曲をスキップする回数制限があります。Freeプランでサービスの魅力を実感したユーザの気持ちを突いたアプローチと言えます。操作の合間に表示される広告ということもあり、簡潔なコピーとモダンなイラストで、嫌な気持ちにさせずオシャレですね。
Pinterest (App)
こんにちは、○○さん!
Pinterest から毎日のインスピレーションや最新アイデアのお知らせはいかがですか?
こちらはプッシュ通知を受信するよう誘導するモーダルです。
「こんにちは」と挨拶があると親近感がありますね。ユーザ名も添えられていて、話しかけられているかのようです。“プッシュ通知を受け取りましょう”といった直接的なコピーではなく、Pinterestのプッシュ通知を受け取ることでどのような体験が得られるのかを感じる内容になっています。
このように、
- 簡潔にまとめる。
- 『どこで』『何を』伝えるのかを考える。
- 難しい言葉は使わない。
など、ポイントを押さえることで、ユーザと程よい距離感を築き、言葉のコミュニケーションを図ることができます。
3. ストーリーで伝える
淡々とサービスを紹介するだけではユーザには響きません。
企業側の目線が強すぎると、文章の端々から「情報を与えられている」印象が出てしまい、ユーザの気持ちから遠のいてしまいます。
例えば、フェムテックブランド「Nagi」。
個人差はあれど生理日というのは憂鬱なものです。そんなマイナスな気持ちも動かすような前向きなキャッチコピーと、サービス内容が端的に紹介されています。D2Cブランドならではの、強いメッセージ性を感じますね。
あなたを自由にする下着
Nagiはわたしたちの身体ともっとうまく付き合うために生まれた、
1枚でも過ごせる吸水ショーツです。
このようなコピーではじまり、吸水ショーツに馴染みのないと『1枚で大丈夫なの?』という疑問を持つ方もいるかと思います。そこで、続いてこのようなコピーで応えています。
本当にこの薄さで大丈夫?
ご安心ください。
Nagiは、それぞれ別の機能を持つ4枚のレイヤーからつくられています。
動画の実証実験とともに添えられたコピーは、ユーザの気持ちに寄り添う歩調で展開されており、物語を読むように次第とサービス理解が深まるように設計されています。
おわりに
こうして様々な事例を見ると、UIデザインやワイヤー設計だけではなく、コピーライティングもUXに密接していることがよく分かります。目の前にあるデザインに注力してしまい、コピーライティングを見落としてしまいがちですが、デザイナーとしてご提案できる範囲はどんどん広がっていて、細やかな心遣いは見る人の印象を変える!とあらためて感じました。
TAM はWebサービス、業務アプリなどの新しい価値を作り出すサポートしています!お気軽にご相談ください。
参考サイト/アプリはいずれも 2021/1/21 アクセスの内容です。
和佐 阿佑美 / Ayumi Wasa
UX・UIデザイナー
2013年よりTAMに参加。ディレクター、デザイナーと経験し、UX設計からUIデザインまで幅広く担当。“よりよいユーザー体験を形に”を目指し積極的に取り組んでいる。大阪ガス、京セラ、ワコールなど、B2B・B2C問わずプロジェクトに携わる。