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“犯罪者”を生み出さないために私たちができること
今回は、昨年感銘を受けた本を紹介したい。
その本は、ジェームズ・ギリガン著・佐藤和夫訳『男が暴力をふるうのはなぜか ―そのメカニズムと予防― 』(大月書店)。
図書館で借りて読んだあとに、いつでも貸し出しできるように、Amazonでポチッと購入した。すべての人に知ってほしい内容ではあるけれど、とくに、子どもにかかわる職業についている人、教育に関心の高い人に読んでほしい。
以下に、多くの人に伝えたいところをピックアップして紹介する。
まず、筆者は「あらゆる形態の暴力は、(中略)病理ないしは病気のあらわれ、形態、兆候である」と強調する。
しかし、処罰が暴力を予防しないとしたら、何が暴力を予防するのだろうか。この問いに対する答えを見いだすためには、暴力を道徳的・法的な問題としてではなく、公衆衛生と予防医学の問題として考えることが有用であり、また必要である。私たちは病気を治療するのであって、処罰するのではない。
『男が暴力をふるうのはなぜか ―そのメカニズムと予防― 』p.42
また、「FBI(米連邦捜査局)の『プロファイラー(犯罪心理分析官)』だった人物で、合衆国におけるもっとも暴力的で危険な犯罪者の人格を研究し、犯罪の動機を明らかにしようとしてきた」という男性、ジョン・ダグラスの意見を以下の通りに記している。
彼が出した結論は、どのような暴力行為も「何かが欠けているという深い感情の結果生じたもの」で、彼らは自己評価の低さを他人の欠点を―それが実際に存在しようがしまいが―非難することで打ち消そうとする、というものであった。
『男が暴力をふるうのはなぜか ―そのメカニズムと予防― 』p.66
その自己評価の低さから起因する暴力の目的は次の通りだという。
暴力の目的は、 他人に対して尊重を強要することである。自己肯定感が低い人ほど、他人からの尊重に依存することになりやすい。というのも、他人からであれ自分からであれ、最低限の自己肯定感を得られなければ、自我は内部で死を感じ始め、無感覚で空虚なものになってしまうからである。
『男が暴力をふるうのはなぜか ―そのメカニズムと予防― 』p.67
そして、自己肯定感を養うこと、教育の重要性について語る。
教育は自己肯定感を得るためのもっとも強力な道具のひとつであり、自己肯定感は暴力を防ぐもっとも強力な心理的な力であるから、教育の水準がひとりの人間が暴力的になるかどうかをあらかじめ決めるもっとも大きな要因のひとつであることはなんら驚くことではない。
『男が暴力をふるうのはなぜか ―そのメカニズムと予防― 』p.159
著書では実際に、受刑者が収監中に学位を得た場合、新たな犯罪で収監されることはなかったとされている。
そして、現状の刑務所は人を「非人間化させる環境」であり、暴力志向を脱し、暴力と距離を取るためには、「純粋な相互尊重の態度」があらゆる関係に必要だと指摘する。
そのあとに重要な原理が2つ書いてある。これがまさに、タイトルに書いた「“犯罪者”を生み出さないために私たちができること」へのひとつの回答だと思う。
1 誰に対しても敬意を持って遇することによって、あなたは彼らに誰に対しても敬意を持って遇することを教えるのである。というのも、ただひとつの効果的な教え方はただその例を示すことだからである。
2 暴力的な行動を誘発するもっとも強力なものが、相手を尊重しないでバカにすることであるように、暴力を防ぐもっとも有力な手段は誰に対しても敬意を持つことである。
『男が暴力をふるうのはなぜか ―そのメカニズムと予防― 』p.192
他者に対して敬意を持つこと。シンプルだけど、実は難しいこと。そしてすべての人にとって、生きていくうえでもっとも大切なことだと思います。
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