落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『世界の歴史 フランス革命とナポレオン』桑原武夫責任編集~
<<感想>>
フランス革命は、近代世界を導く世界史上最大の事件。
ここから「近代ナショナリズム」が生まれたといってもいいだろう。
革命前夜、南欧諸国は権力と富が一部階層に集中していた。王族・僧侶・貴族は惰眠をむさぼり、ブルジョアは伸び悩み、農民は王権に保護されながらも悲惨な生活を送っていた。
フランスはヨーロッパの中でも一番社会矛盾の大きい国であった。
ここから、革命の思想的背景となる「啓蒙思想」が生まれた。
主権在民の国を作ることによってのみ、自由で平等な社会は生まれるとするものである。
フランス革命は、啓蒙思想のもと、「ブルジョアの知的活動」と「人民の巨大なエネルギー(貧困化に対する不満)の結果として発生したものである。主導力はブルジョア階層が持つ一方で、推進力は小市民・小農民にあったといえる。
結果的に、「封建的な身分制度が徹底的に打破される」とともに「貴族や僧侶などの特権もはく奪」され、数百万人という自作農は完全な土地所有者として解放された。
しかし、ここにいたるまでいかに多くの血が流れたことか。
ラファイエット→ミラボー→シエース→バルナーヴ→ブリッソー→ヴェルニョ→ロベスピエール→サン=ジェスト→(シエース)→ナポレオン・・・・・・。
革命指導者(権力)は幾度となく変わっていった。その多くは処刑による。
革命には血が必要なのか。
ナポレオン自身も「人民は自分たちが獲得し、かつ血を流しても守ろうと欲するところのものによってしか革命を理解することはできない」としている。
こうしたフランスで生まれた近代ナショナリズムが、のちのヨーロッパ諸国に多大な影響をもとらした。
また、よくフランス革命は明治維新と比較される。
確かに明治維新は大きな革命ではあるが、いきなり民主政府が誕生したわけではない。
ポイントは革命によって民主的な社会が確立されるという点だろう。
そう考えた時に日本の場合は明治維新がきっかけとはなったが、1945年の敗戦によって初めて革命が終わったといえるのではないか。そこがフランス革命との決定的な違いであると考える。