ワクワクリベンジ読書のすすめ~『世界のための日本のこころ』世界のための日本のこころセンター著~
会社時代末期に大変お世話になった社長さんからの情報で興味を持った。
そもそも私は思想的には普通である、と考えている。極端に「右」でも「左」でもない。
ただ年をとるにしたがい、「『日本人』というアイデンティティを大切にしなければ!」という思いは日に日に強くなっている。
この書籍の背景には、著者グループの「日本型リベラルアーツ」という考え方がある。
その定義には「①全ての学問のベースとして、早くから学ぶべきもの ②リーダーを役割と考え、全ての人が学ぶべきもの ③『日本のこころ』の源流に立ち、世界に価値をもたらすもの」とある。
「日本のこころ」とは。現実社会の各側面にどのように顕在化しているか。そして、それらがどのような役割を国内外に果たしているのか。深い学びを実感する書籍である。
多方面からの分析がある中で特に印象的だったのは、「日本の生活文化の背景にある禅のこころ」「日本のこころの源流にある大和言葉(現代の日本語の基礎)」というメッセージである。
「日本のこころ」は禅・仏教・儒教・神道などが混然一体となった精神基盤であるという。特に、禅は、武士道精神のバックグランドになっているだけではなく、中世からの彫刻・工芸・美術(匠の道)、茶道、俳句をはじめとする文学の隆盛、農業復興運動、商人道の発展に寄与するとともに、モノづくりや三方よし精神の商業、人間重視の日本型経営に至る、今日の産業・生活・文化を支える源泉になっているなど、歴史的に大きな影響を与えてきたことは驚きである。
一方で、近年のように教育の英語化が進む中、「日本のこころ」の根幹をなす日本語の質の低下を懸念する声も多い。
日本語は日本人の創造性を支えるものであるといわれている。そればかりか「タタミゼ効果」(外国人が日本語を学ぶと性格が日本人のようになるというフランス語の造語)もあるくらいである。
逆にスマホで通訳不要の時代になっている中、もはや英語は方便であり、重要なのは日本語であるといわれている。
「仕事ができる者は英語が使える者ではなく、きちんと日本語で考える能力をもった者だ。信頼する企業経営者も、海外で勤務する人間の選抜基準は、日本語で仕事をしっかりしているものだという」(日本漢字能力検定協会代表理事 会長兼理事長 高坂節三氏)
という声もある。
まさにビジネスの世界にも通ずるメッセージであると思う。
「こころ」と「ことば」。今こそ、われわれ日本人が熟考すべきキーワードではないだろうか。