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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『変身』カフカ著 高橋義孝訳~

ある日突然に、自分の身体が一匹の「巨大な褐色の虫」になっていた…………。

そんな信じられない話からスタートする。
背中は硬い甲羅。
腹の上には横に幾本かの筋。
たくさんの細い足がぴくぴく動く。
さらには、動いた後には粘着性のあと。
大型のゴキブリか、ムカデか。
想像しただけでぞっとする。
読みながら、夢に出てくるのではと思ったほどだ。
なぜ主人公(グレーゴル)はそんな姿になったのか。
また、いったい「巨大な褐色の虫」はなんだったのか。
結局、著書の中には説明はない。
当然答えもない。
そこは読者の想像にまかせるということか。

おそらく、筆者にはもっと重要なメッセージがあったのだろう。
「突然の変化に対する受容」のあり方。
そして、それは変化の前の状況(人間関係)や、個人的な許容量にも影響する。
なかなか難しいところではあるが、そうしたところがテーマであるように思う。

そもそも主人公(グレーゴル)は父親とは決して仲がよくなかった。
父親の事業の失敗のために、グレーゴル自身が外交販売員として激務をこなしていたところからもうかがえる。
また父親は、グレーゴルが「変身」した様子を目の当たりにした時には、「しっ、しっ」と追い払う仕草も。
母親や妹にしても、最初は不憫に思っていたが、疲れ果て、最終的にはあきらめてしまう。
家族にとって、グレーゴルは厄介者となる。
彼が死んだときには悲しみより開放感の方が大きくなっていた。
これが人間の「性(さが)」なのかもしれない。
ある意味で、現実を映し出しているか。

家族の突然の不幸に対する心から支援とは。
深く考えさせられた。
それにしても、いままで感じたことのない読後感である。
感動というより、「気色悪さ」が残っている。
それは、単に僕が「虫嫌い」だからということだけだろうか。

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