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バーベキュー場が厳しい冬を越すためにしていた仕事について。

本日、関東地方が梅雨明けとなりました。

私が働くバーベキュー場「タマリバー」のスタッフは、まだ長い夏の始まりだというのに、すでにいい感じに日焼けしています。

肉体的には辛い季節ですが、夏が稼ぎ時のバーベキュー場にとっては数少ない、私の精神が安定する時期でもあります。

閑散期の冬における私の精神の不安定さは、とんでもないものでした。
焦る私をよそに筋トレにいそしんでいたワタル(夫)と丹沢山脈を縦走していたよっしーの悪口をnoteに書き殴るくらいには、私の心はすさんでいました。

閑散期に遊び散らかしていては次の春が来る前に会社がつぶれてしまうので、ふたりのお尻をたたいて色々な方からお仕事をいただき、何とか食いつないでいました。

今日は、バーベキュー場が次の夏まで生き残る術についてお話ししたいと思います。


【生き残る術その1】大使館にモニターを設置する仕事

これはよっしーが担当した仕事です。

とある大使館で行われるとあるパーティーを主催する企業の方から「大型モニターの設置を手伝ってほしい」というご依頼でした。

タマリバーで柵や看板や遊具を作ったり、トレーラーを改装したり、基本的にあらゆる設備をDIYで乗り切ってきた我々なので、こんなの朝飯前の仕事だろうと思っていました。

が、思わぬところに落とし穴が。

設置する場所は大使館の中。つまり外国です。

Googleマップの住所は東京都を指していますが、その場所は間違いなく外国なのです。

大学時代に探検部に所属していたよっしーは、ネパールやらボリビアやら東南アジアといった各地を旅した経験があるので心配ないかと思いきや、英語は全くしゃべれないそうです。

当時の話をいろいろ深堀りしていると、「基本的に航空券だけとって宿や細かい行先は現地に着いてから決める」とか「シェルパと仲良くなって自宅に招かれた」とか「タクシー運転手にぼったくられそうになって喧嘩した」といった、明らかに現地の人と会話しているシーンがでてきます。

「英語が話せないのに一体どうやってやりとりしてたの?」と聞くと、よっしーは真顔で

「基本は日本語っすね」

と言っていました。

「相手が外国語でまくしたててきても、同じ勢いで日本語で返答すると、なんとなく双方理解できて、なんとなく会話が成立するんすよね」

とよっしーは私に日本語で説明してくれ、私も日本語話者ですが、彼の言っていることは全く意味が分かりませんでした

私の心配をよそに、よっしーは「大丈夫っすよ」と言って大使館に出かけていきました。

当日はよっしーはモニター組み立てのために大使館の入り口でパスポートを提示し、荷物検査を受け、X線検査を受け、さらには係員の方からの質問(日本語)を受けたそうです。

「この仕事って国家機密レベルだったっけ?」と困惑するくらいに厳重な警備と緊張感の中、よっしーは大型モニターを無言で組み立てるという重大ミッションを完璧に遂行しました。

弊社では普段なかなかない、緊張感のある仕事でした。

【生き残る術その2】熟年夫婦を演じる仕事

これは私が担当した仕事です。

とある家族向けサービスを展開する会社の方(男性)から、「競合が顧客にどんなサービスを提供しているのか実際にお店に行って調べたい。ただ、一人で行くと怪しまれるので、妻役として同行してほしい」というご依頼がありました。

依頼が来た瞬間、私のテンションはぶちあげ状態でした。

ついに私、女優デビュー。しかもスパイもの。

依頼主(超大手企業にお勤めの40代男性、イケオジ)の妻役として遜色ないよう、家のクローゼットをひっくり返し、「持ちうるもののなかで一番高いもの」を身に着けていくことにしました。

洋服やメイクのイメージが固まったら、次は演技の練習です。

「夫婦」を演じるため、ご依頼主のファーストネームを呼ぶ練習をしました。

鏡に向かって「も~!あきら(仮名)ったら~。いや、これだと新婚夫婦っぽいな、もっと熟年夫婦感を足すか」とぶつぶつ言いながら練習しました。

いま思い出すと、もう、ただの狂気

入念な準備と練習の甲斐あって、当日は、大変落ち着いて夫婦を演じることができました。

潜入先のお店でとある用紙に記入してスタッフの方に提出する際も、

「あ、ちょっとあきら、出すのはこっちの紙よ」

とさらっと名前で呼んでみたり、ガッキーもびっくりの名演技をかましました。

ひとつだけ焦ったのは、依頼主が突然「本当は業界を知り尽くしているのに知らないふり」をしようとしだしたことです。淡々とサービスの説明をしてくれていた店舗スタッフの方に向かって、

「このお店のロゴって、こういう意味なんですかね?あのお店のロゴ(自社)とはなんだか雰囲気が違いますよね~」みたいな斜め上すぎる質問をぶちかましました。

突然すぎて、対応してくださった店舗スタッフの方もぽかん。

慌てて私が「もうあきらったら、余計なこと言わないで。すみませんね~うちの人ったら」と必死のサポートをし、事なきを得ました。

潜入が終わりお店から出て大通りの角を曲がった瞬間、どっと疲れが出て、同時に依頼主の方と大爆笑でした。

スパイと女優を一度に楽しめてかつお金もいただけるなんて、最高のお仕事でした。

【生き残る術その3】公共工事の入札情報をコピペする仕事

これはスタッフ3人が総出で対応した仕事でした。
大手メーカーの方からのご依頼で、参入業界の公共工事の入札状況を調べ、分析をしてほしいといったものでした。

日本全国で行われている数々の公共工事は、どの会社が入札したのか、いくらで入札したのかといった情報がウェブサイト上に公開されています。

最初の仕事は、そのウェブサイトに掲載されている数万件の入札情報を、短納期の中ひたすらエクセルにコピペする、という修行のような仕事でした。

しかも、入札情報の検索システムは行政のウェブサイト内に設置されているので「アクセスできるのは22:00まで」といった時間制限も多く、夜に3人でLINEでやりとりしながら「あと10分でアクセスできなくなる!」みたいなやり取りをし、パソコンキーボードのCtrl+C(コピー)とCtrl+V(ペースト)を永遠と繰り返しました

ただ面白いことに、長時間データを集めていると、今まで全く縁のなかった業界についての知識が自然とついてきます。

「へ~、公共工事ってこんなにお金がかかるんだ」
「この分野だと、XXXって会社が強いんだな~」

なんて、知的好奇心も刺激されます。

その後、3人で集めた膨大なデータを分析し、依頼元に対して分析結果の提言を行うのはもっぱらワタルのお仕事。

その結果、ワタルは特定の業界の特定の分野の特定の公共工事にだけ異様に詳しくなりました

このご依頼以降、ワタルは「近所で見つけた公共工事の入札価格と受注会社を調べる」という新たな趣味ができました。

【生き残る術その4】収穫をお手伝いする仕事

農作物収穫のお手伝いをさせてもらったこともあります。
春はたけのこ、初夏は梅、秋は柿や栗などなど。

柿は、干し柿にしたり柿酢にしたり柿シャーベットにしたりします

収穫をお手伝いした後は、たくさんのおすそわけをいただけるので、懐の寂しい季節には我々の重要な食糧となります。

我が家では食べきれない量をいただいたときは、同じ沿線に住む私と夫それぞれの実家、そして近隣の方々にも配り、大変喜ばれています。

私は無料でもらった収穫物を渡すだけなのに、ご近所さんからは「たくさんいただいたから」とお返しをいただける(ありがたすぎる)ので、収穫のお手伝いをした週の夕ご飯やおやつタイムは異様に豪華になります

ちなみによっしーがもらったおすそ分けは、それはもう完璧に処理します。
梅は梅酒に、柿は干し柿に、栗は栗ご飯に変わります。

この写真を見せてもらったときは衝撃しかなかった

丁寧な暮らしが過ぎる。

【生き残る術その5】イベント企画・事務局の仕事

タマリバーに大道芸人の方を呼んで縁日を開催したり、地域のお祭りにスライム屋さんとして出店したり、ごみを拾うと駄菓子がもらえる駄菓子屋さんをやったり、スケートリンクの整氷作業中に生まれた廃棄氷で氷の遊び場を作ったりする仕事もしています。

これらは生き残りのためにやったというよりは、ワタルの無限に広がる妄想をよっしーが具現化させたら意外と人気が出て、自社サービスとして定着したパターンかもしれません。

他にもタマリバーがある川崎市登戸地域で、川崎市と小田急が取り組んでいる登戸駅前の賑わい創出エリア「ミライノバ」の事務局として、キッチンカーの皆さんが集まる場所を作ったり、近隣にわんちゃんが遊べる場所がないという声から「登戸駅前ミニドッグラン ”いぬのえきのぼりと”」を作ったりしました。

施工はもちろんよっしーとワタルが担当。私の担当は、週1回のドッグランの草むしり

多摩川河川敷で、同じく川崎市と小田急が取り組む実証実験「カワノバ」でも事務局を担っています。
ここでは、もともと多摩川橋梁下へのごみの不法投棄が社会問題化していたため橋梁下をバーベキュー場にし、そこで得た収益の一部を不法投棄ゴミの処分費用として使う活動なども行っています。

事務局の私たちは「黒子として徹するべき」と思っているので表舞台に出ていくことはしませんが、自分たちが関わる地域で楽しい企画が増えていくと嬉しいな、と思っています。

さて、今年の冬は無事越せるのか。
現時点ではまったくわかりません。

「ナミキが冬を越せるようにこんな仕事あげるよ!」なんて慈悲深い方がいらっしゃったら、ぜひお問合せください。

特に女優のお仕事、お待ちしています。