子どもの習い事 全敗の記録
「お子さん、習い事なにかやってる?」
私の子どもは現在六歳ですが、三歳を過ぎた頃から、やたらと聞かれるようになりました。
実際に、周りのお子さんたちが通っている習い事は様々。
定番のピアノやスイミングはもちろん、空手や体操といったアクティブなものから、プログラミングや実験教室などの最先端おけいこまで。
中には週に三つ以上の教室に通っている、というツワモノの友人もいます。
私もご多分に漏れず、わが子が三歳になった時、腕まくりしながら心に誓いました。
「子どもの適性をしっかり見極めて、可能性を広げるような習い事をさせてあげるんだ!」と。
そう誓ってからはや三年…
子どもが六歳になった今も、習い事はゼロです。
これは、「習い事」という魔物に取りつかれた私の挫折の記録です。
習い事についての作戦を練る
ひとくちに習い事といっても種類が多すぎて、一体何を基準に選べばよいのか。きっとお子さんの習い事を検討している多くの親御さんも、同じように悩んでいるのではないでしょうか。
ぱっと考えただけでも、決め方のパターンはこんなにあります。
我が家の作戦は、①「今、子どもが興味を持っている」習い事一択でした。
子どもの思いを尊重していると言えば聞こえがいいですが、我が子は好きなものには何時間でも夢中になるけれど、興味のないことには見向きもせず、何なら「ぜったいにやらない!」という好き嫌いがはっきりしたタイプ。
親の意向を汲んでもらうのは不可能だと、最初から諦めていただけです。
だから、習い事は正直なんでもいいけれど、「家と会社の往復」ならぬ「家と保育園の往復」にならないよう、第三の場所をつくってほしいな、と考えていました。
この前提を夫と共有したうえで、少しでも子どもの興味センサーに反応した習い事教室に、片っ端から体験に行ってみました。
そして、全敗しました。
<挑戦①>英会話教室→教室に入れず断念
我が子が通う保育園では、定期的に英語の先生が来てレッスンをしてくれています。
家でも「先生におしえてもらったの」と好きな魚を英語で言ってみたり、英語に親しみを感じている様子。
すでに興味を持っているならこれ幸いと、「じゃあ英会話教室に行ってみる?」ということで、初めて習い事教室の体験に行ってきました。
場所見知り傾向のある我が子は、絶対に嫌がると思っていましたが、意外にも道中はご機嫌な様子。「なんだ、案外いけるじゃん」と思っていました。
が。
教室の入っているビルにたどり着くやいなや、急に子どもの「知らない場所怖い危険センサー」が発動。「やだ!いかない!」と泣き出しました。
ついさっきまでニコニコしてたのに、もう手が付けられないくらいのギャン泣きです。
子どもは半ばパニック状態で、ビルの入り口で完全にストップ。
どうやってもそれ以上は進めそうにないので、その場から英会話教室に電話をしました。
「今、教室の入っているビルの入り口にいます。子どもが大泣きで教室にたどり着けません。大変申し訳ありませんが、体験キャンセルさせてください…」
そんな感じで、大失敗の初回となりました。
それから少し経った後、件の英会話教室から「ぜひ、もう一度いらしてください」とお電話をいただきました。
直前キャンセルしたにもかかわらずお優しい…と親側は感謝するも、子どもは果たしてどうか。
子どもに聞いてみると「まーいいけど。いってみようかな」とのこと。
先日の出来事が嘘のように、教室までスムーズに辿り着くことができました。
今回は他のお友達に混ざって楽しそうに過ごしています。
この教室は「クッキータイム」と呼ばれる休憩時間があり、先生に「クッキープリーズ!」と言うとクッキーがもらえるようで、それが子どもたちの楽しみになっていました。
我が子も嬉しそうに「クッキープリーズ!」と言っていたので、「これはいけるかも!通ってみる?」と終了後に子どもに確認しました。
すると、返ってきた答えは、
「たべっこどうぶつは家でもたべられるから、もういかない」
でした。
<挑戦➁>ドラム教室→私が習って終了
英会話教室の体験から数か月経ち、子どもと一緒にテレビを見ていると、ドラムをたたく人の映像が。
ドラムに釘付けになった子どもは「なにこれすごい!やってみたい!」と言うではありませんか。
「おおっ!習い事リベンジできるかも!」ということで、子どもの気が変わらないうちにドラム教室に足を運びました。
今回も教室のビルに入る段階で「知らない場所怖い危険センサー」が反応しましたが、優しい受付の方のおかげで何とか教室に入ることに成功しました。
「教室に入る」という第一関門を突破し、ほっとしたのも束の間、今度はドラムの先生への人見知りセンサーが発動。
先生とは目を合わせず、「やらない!おかあさんがやって!」の一点張り。
「私が少しやれば、子どもも興味を持つかな」と考え私がたたき始めると、子どもは「おかあさんじょうずじゃん!」と褒めてきます。
先生まで「お母さん、お上手ですね。もしかして、過去にドラムを触った経験ありますか?」とおっしゃるので、
「いやあ~///実は中高時代に吹奏楽部に所属してましてね、パーカッションの友人に教えてもらってドラムは少したたいたことが(ペラペラ」
と私が気分よくドラムをたたいて、体験会が終了しました。
先生からは「大人向けのドラム教室もありますので…」と勧誘され、子どもからは「ぼくはもういいよ。お母さんがならったら?」と言われ、"私の"ドラム体験レッスンは大成功に終わりました。
<挑戦③>ダンス教室→先生におびえて退散
会社の事務所が入るビルの掲示板に「ダンススタジオ オープン!」の張り紙を見つけたのは、ドラム教室体験から半年ほど経った頃でした。
当時「全身黒い服にキャップ、そしてサングラス」の組み合わせが一番かっこいいコーディネートだと信じていた子どもは、なんとなくそういうB-BOY的スタイルに憧れがあったようで、ダンス教室に誘うと乗り気になりました。
実際、ダンスはそれなりに楽しそうにやっていました。
大丈夫かも、と少し離れた場所から見ようとすると、それに気づいた子どもは焦って「おかあさん、とおくにいかないで!」と叫びます。
どうやら、親と離れて何かをするのが嫌な様子。
習い事は基本的に親と離れて行うものですから、「習い事の中身云々ではなく、親と離れること」が嫌なのかも、ということがわかってきました。
体験教室終了後の個別相談で、先生に「我が子は親と離れるのが怖いようです。それにより、他のお子さんにも迷惑をかけてしまうかもしれないのが気になっています」と打ち明けました。
すると、先生は笑顔で
「そーっすね!最初は嫌がるお子さんも多いっすよ!でもまぁぎゃーぴー泣き叫んでいてもとりあえずここにぶち込んでもらえれば、子どもはそのうち慣れますから!だいじょうぶっす!」
とおっしゃいました。
たぶん、間違いなく先生のおっしゃる通りだと思います。
ただ、親子そろって先生の「ぶちこむ」発言に恐怖を覚え、退散しました。
<挑戦④>スポーツ教室→夫がぶちギレ帰宅
これまで試した習い事はすべて玉砕したため、私は
「もう疲れた…習い事は、本人が行きたいと言うまで待とう」
というモードになっていました。
しかしそれを聞いた夫は「そしたら、今度は俺も一緒に行くよ。俺が一緒に行けば大丈夫っしょ!」と謎の自信を見せます。
そこで、ボール遊びやかけっこが好きな我が子が喜びそうな「年間通して色々なスポーツを体験できる教室」の見学に、三人で行くことになりました。
が、また当日、最寄り駅に着いたところで子どもがぐずぐずモードに。
いや、ぐずぐずではなく、「やっぱり行きたくない!」と半狂乱。
とはいえ、これはいつものことです。
どうなだめようかなと私が口を開こうとした瞬間、夫が
「ならもういい、帰るぞ!」と逆ギレ。
おい!!!なんでお前がキレるんだよ!!!!!
夫の「俺がいれば大丈夫っしょ」発言は一体なんだったんだ。
もちろん、帰りの電車はお通夜状態でした。
習い事全敗のまとめ
他にもいくつか試しましたが、どれも結局「絶対いかない!」という子どもの強烈な拒否反応により、すべての習い事体験を断念しました。
どうしたらいいのか。
こういうときは、得意の「脳内ディベート」を繰り広げます。
なぜなら私は、華の大学生活の四年間を、英語ディベートサークルに費やしたという黒歴史を持っているからです。
悩み事ができると、脳内で異なる主張を持つ二人を登場させ、その二人に戦わせながら、考える癖があります。
今回は「習い事推進派ママ」と「習い事慎重派ママ」に分かれました。
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<習い事推進派ママの主張>
子どもには、広い視野を持ってもらいたいんです。
直接的に将来につながるかなんて関係ない、「子どもの興味の世界を広げてあげたい」という純粋な気持ちです。
最初はいやいやでも、やっているうちに楽しくなることもありますし、続ける力や協調性も養われます。
子どもが言う「なんとなく嫌」を鵜呑みにするのは、子どもの将来的な可能性を狭めてしまう、ということに気づくべきです!
<習い事慎重派ママの主張>
いえいえ、本人がやりたくないことを無理にさせるのは、本人の自主性を軽んじているとしか思えません。
それは結果として、本人が自立的に生きる力を損なわせることになります。
いまは日々の遊びを一緒に楽しんで、子どもの探求心を育てることが大切です。そうして「本人が興味のあるものを見つける時まで待つこと」こそが、子育てで求められることなんです!===============================================
おどろおどろしいまでに「親のエゴ」まみれの脳内ディベートは、まったく決着がつきません。
「私が考えてもしょうがない、習い事をやるのは私じゃないし」と、子どもに最後にもう一度、聞いてみることにしました。
「ねえ、なんでもいいからさ、やりたい習い事、ない?」
すると、ソファで寝そべりながらブロックで遊んでいた子どもはうんざりした顔で
「あのさ、こっちはまいにち保育園でたいへんなんだよ!やすみの日くらい、ゆっくりさせてよ!!!」
と叫びました。
あれ、私の子どもって「35歳都内某所で働くサラリーマン」だっけ…?
でも、「確かに」と思ったので、習い事探し、辞めました。
エゴまみれの脳内ディベートをする癖がついてしまったきっかけはこちら。