同級生について 成人式なので
背の高さや価値観が周りと大きく違わない小学生時代というのは、どうも転校生に大きく反応する。
枯葉が目立つ低学年の秋、クラスに1人の男の子が転校してきた。
以下、メガネをかけてたのでメガネくんとする。
メガネくんはそれほど遠くない学区外から転校してきたらしい。
洒落っ気づいた思春期であれば「かっこい〜!」だの、「胸がデカい!」だの外見審査が始まるのだが、それほど特徴のないメガネくんはすんなりクラスに順応していった。
理科の実験でマッチを使った際に数本パクって授業中に火をつけたのがバレた際には、自分を含めて5人くらい連隊で怒られたりもしたし、(幸いぼや騒ぎにすらならなかった) 放課後にはマックでポケモンなんかしたりした。
ごく普通のメガネくんの雲行きが怪しくなったのはクラスメイトのタレコミだった。
「アイツんちめっちゃボロいぞ!」
お家に遊びに行ってみるとメガネくんは母子家庭で家もボロっちかった。
おまけに知的障害のお兄ちゃんがいた。
大人になってみるとそれほどボロくはないのだろうが、新築家庭が集まる住宅街から通う小学生の目からすると如何にもボロ家でなんとも嫌な感じがしたんだ。
メガネくんのお兄ちゃんはポケモンをやっていた時にいきなりパンツを脱いで突進してきた。
ポケモンのボックスにはポッタイシとムックルしかいなかった。
子供というのは残酷なものでひとつネタを見つけるといじめのターゲットになってしまう。
やれボロ屋だの、お下がりの文房具だのちょっとしたいじめがはじまった。
とはいえ、低学年の内はそこまで酷いいじめはなく、高学年へと進級した。
高学年になるとグループだの男女間だのを意識し始めるのでなんとも厄介になるのだが、僕は当時大流行のフェアリーテイルをマガジンで読んでいたのでそこそこ良い立ち位置に定住できた。
メガネくんも別にカースト的には悪くなかったと思う。
中〜高学年の頃はデュエルマスターズだのベイブレードだのコロコロコミック発の娯楽に夢中な子が多かったので、クラスの垣根を越えてワイワイ遊ぶことが多かった。
ある日、メガネくん含め数人で金持ち吉田の家で遊ぶことになった。
余談だが金持ち吉田の家はめちゃくちゃ豪邸で庭は広く、母親がステレオタイプの教育ママみたいな感じですっげーキモい。(吉田はスネ夫っぽくは無い)
吉田の家でガヤガヤしてさて帰宅となる時に、クラスメイトのカードが無くなってしまった。
みなまで言わないけど「メガネじゃね?」「あいつ貧乏だしな」「返せやゴミカス」みたいな雰囲気が流れ始めた。
結局、犯人はメガネくんではなく、クラスメイトの勘違いだった。
僕は他罰的な雰囲気と、メガネくんが犯人だと疑ってしまった僕のことが凄く嫌だった。
中学生に上がると治安がとても悪く地獄みたいな環境だったので、いじめも激化した。
みんなで遊んでいたはずの運動部のウェイは女の前でイキるゴミカスDQNに成り下がるし、
なぜか水泳部と卓球部はモヤっぽいけど(白目)
アニオタはカースト下位で煙たがられるし
女の子もランク付けみたいなのが出来始めてきた。
メガネくんとは3年間同じクラスだった。
とはいえ、自分は精神病を患い出したり、元々体調がよろしくなかったので、たまに行って保健室で本読んでるみたいなそういう人だったのでクラス内の雰囲気というのはあまりわからない。
友達はいなかったけど、クラスには部活の女の子がいたので昼ごはんを食べる際に混ぜてもらったり、レアポケモン扱いで知らないDQNに声をかけられたりした。
メガネくんは1人でご飯を食べていた。
近年発生している感染症みたいな扱いだった。
時代を先取りの隔離
野球部補欠ピッチャーの話によると
メガネくんの誕生日にはブレスケアとファブリーズをあげるらしい
なんかそういう次元まで達するんだな〜と他人事なので気にもとめなかった。
クラスには虐めていい人が4人くらいいたので、カバンが壊されたり蹴られたりなんやかんやあった。
メガネくんは不登校になった。
自分も虐められたらすぐ不登校になるつもりだったけど、接点ない人からは空気扱いなので、そんな日はとうとう来ず、のんべんだらり過ごしたら高校生になった。
高校生にもなると酸いも甘いも経験することとなる。
勉強が難しくなってヒィヒィ言いながら赤点回避のために頑張ったり、中学生までの付き合ってんだか付き合ってないんだかの男女関係を飛び越えて、背伸びしたスキンシップをしてみたり(通信だから細々だけど)
そんなこんなで当時の彼女と映画を見に行くこととなった。
将棋だか囲碁だかの三月のライオン?みたいな映画の前編を見た。
エンドロールのスタッフクレジットでスマホをいじり出したのでちょっと冷めたのを覚えてる。
帰りにゲーセンでプリクラを撮った。(がおーって)
さて、ご飯でも食べましょーってなった時に、全身ダボジャージで汗だくになりながら音ゲーをするデブがいた。
メガネくんだった。
呆然として眺めていたら彼女に「知り合い?」と、聞かれたので「んーん、お腹すいたからご飯行こ!」って返した。
メガネくんを見たのはその日と、学校帰りに1回だけ。
そこまで話した覚えも仲良かった記憶もないんだけど今でも忘れられない。
彼が幸せであればいいなと願うと同時に、人の世は理不尽なことが多いなと感じる。
なんとも消化できないモヤモヤを供養したいので書きました。
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