2024.09 米原・醒ヶ井の清流にゆれる梅花藻
敬老の日の3連休。
実家の岐阜へ帰省してきました。
夏に帰ったら行きたいと思っていた場所があったので、ちょっと足を伸ばしてお隣の滋賀県へ。
岐阜駅を出発。
JR東海道線で西へ向かうこと49分。
やって来たのはこちら、醒ケ井。
とても自然豊かの場所に位置している醒ケ井は、関ヶ原を越えた滋賀県の米原駅の手前にあります。雪が降ると電車が止まるのはだいたいこの辺りですね。
何をしに醒ケ井へ来たかと言うと、梅花藻(ばいかも)というお花を見るため。
梅花藻はキンポウゲ科の水草です。
梅の花に似た白い花を咲かせることからこの名前が付いたそう。
水温14℃前後の清流でしか育たないため全国でも生息場所が限られていて、有名なところだと北海道の支笏湖。
何年か前に世界ふしぎ発見で紹介されていたのを見てからずっと支笏湖で梅花藻を見ることに憧れていたのですが、ダイビングともなるとなかなかハードルが上がるので未だ行けないまま。
その貴重な梅花藻が見られる場所が醒ケ井にありまして、透き通った水の中で揺れる白くて小さな花に魅せられてやって来たわけです。
見ごろが7月下旬~8月下旬にかけてなのでちょっと時期が過ぎてしまったけど、少しでも咲いているところが見れたら良いなぁ。
そんな感じで駅を後にし、梅花藻が咲く地蔵川を目指します。
土地柄も関係しているのか、歩いていると歴史のある建物がちらほら。
醒ケ井駅から地蔵川までは徒歩5分。
橋が見えて来たのでさっそく川を覗いてみると…
梅花藻が咲いてる!!
びっしりと藻が茂った川の水面から、小さな白い花がいくつも顔を出していました。
この可憐さから清流の妖精と呼ばれているのも納得。かわいい。
あちらこちらで花を咲かせているけど、全盛期はもっともっと咲いてるんだろうか。
サラサラと涼しげな水音を立てて流れる地蔵川の水は、湧き水を水源としていてさまざまな神話や逸話が残されているみたいです。
ところで、
醒ケ井に来て驚いたのが地蔵川沿いの街並み。
どう見ても歴史があるであろう景観。
それもそのはず、地蔵川が流れているのは中山道(なかせんどう)という江戸時代に整備された街道。
中山道は江戸の日本橋と京都の三条大橋を内陸経由で結ぶ街道で、ここは昔は醒井宿という宿場町だったそう。
梅花藻だけを目的に来ていたので醒ケ井がこんなにそそられる場所だなんて知らず。
到着5分で目的達成したので危うく直帰しそうになりましたが、せっかくなので立ち並ぶ店舗を覗きながら地蔵川沿いをお散歩。
・明治39年創業のヤマキ醤油。
醒ケ井の清流仕込みのお醤油屋さん。
昔ながらの店構えで、お醤油や味噌のほかに甘酒なども販売していました。
醤油ソフトや醤油プリンなんてスイーツも。
せっかくなのたまごかけごはん用のお醤油の小瓶を買ってみた。
・旧醒井宿問屋場(現在は醒井宿資料館)
江戸時代に建築されたと推定される貴重な建物。
・久保田呉服店にかかる橋。
現在は湧水コーヒーやお団子を楽しめるカフェですが、その名の通り昔は呉服店だったのかな。
川にはいくつも橋がかかっているのと、川辺に降りられる階段がついています。
醒ケ井に住んでいる方は、川辺に降りて夏になるとスイカとかラムネ冷やしたりしてるのかな。
良いな、そういうの。
地蔵川はとても水深が浅いのですが、場所によっては50cmほどあるのでしょうか。梅花藻のお花が水面に花を出しているところもあれば、完全に水中に潜っている場所もあります。
水中でゆらゆら揺れる白い花もとてもかわいくて、ふと川に手を入れてみると10秒も我慢できないほど冷たい。氷水のよう。
醒ケ井に来てからなんだか暑さが落ち着いたなと思っていたのだけど、こんなにも冷たい川が流れてたらそれは涼しいよね。
かじかむ手でおそるおそる秘密道具のアクションカメラを取り出し…
覚悟を決めていざ、水中撮影へ。
冷たぁ…。
カメラを川に入れてはみたものの、意外と流れが早いのと水温が冷たいのでまともにシャッターボタンを押せない。地上に出すと、レンズがすぐに真っ白に曇ってしまう。
おそるおそるデータを確認すると、碧い地蔵川の中でゆらめく梅花藻。
川の中は別世界で、幻想的でした。
これが見たかったんだ…。
あんまり上手に撮れなくて画質が良くないですが、動画も撮ったので壁打ち用のXアカウントに載せておきます。
地蔵川には入れませんが、支笏湖だとこの景色の中でタイビングできるんだよねぇ。
来年チャンスを狙おうかな。
あとやっぱりGoPro欲しいな。貯金しよ…。
アクションカメラをリュックにしまって再び歩き出すと、白い梅花藻の花に混ざって川面にピンクや紫がかった色の花びらが浮かんている場所がありました。
どうやら百日紅の花びらが散って、花筏みたいに地蔵川を彩っているよう。
自然が成すコントラストは美しいですね。
そのまま川沿いに5分ほど歩いて梅花藻のスポットを一通り見終えたところで、いくつもお寺や神社立ち並ぶエリアにやってきました。
・醒井延命地蔵尊
本堂の中に安置されているのは、鎌倉時代に作られた地蔵菩薩坐像。
大干ばつの時に、最澄が夢で見たお告げに従いたどり着いた先が醒ケ井の地。
醒井で地蔵菩薩を彫刻して降雨を祈願し、大雨が3日間降り続いたと伝えられています。ですって。
・水汲み場
この岩の下から水が湧き出ていました。
1日1.5万tもの水が湧き出ているんだとか。水質の良さは環境省が選定している平成の名水百選にも選ばれるほど。
絶滅危惧種のハリヨというお魚も生息して、地蔵川が保護区域になっています。
・居醒の清水
遡ること1700年以上前、古事記に登場するヤマトタケルの伝説。
伊吹山に住み着いた大蛇を退治したヤマトタケルは、戦いの際に大蛇から受けた毒をこの醒井の湧き水で癒したそう。
・鮫島中将の歌碑
加茂神社へ渡る橋の左側に設置されている歌碑。
これ明治時代の話のようですが、古事記の伝説のあとだと割と最近に感じてしまうので不思議。
台湾で熱病にかかって水を求める親王に、鮫島中将が醒ケ井の清流の冷たさを思い浮かべて歌を読むと言うやんごとなきエピソード。
水が欲しいって言ってんのに歌で返されたらそうじゃねぇよって思わず手が出そうですが(野蛮)、北白川能久親王はにっこり笑顔になられたとか。
生き物としての格が違う…。
醒ケ井がいくら少し涼しいとはいえ、まだまだ蒸し暑くてここまで来るのに汗だらだら。
私は和歌や怪談話で涼を取るようなポテンシャルを持っていないので、しっかりカフェ休憩を挟んで涼むことに。
・和cafeたち季
加茂神社の向かいにある古民家カフェ。
ケーキやアイスなどの甘いもの中心の軽食に、季節のかき氷がいただけます。
イチジクかき氷を注文。
イチジクそのままの味のかき氷蜜に、コンポートが贅沢にまるごと1つ。イチジク大好きな人にはたまらないかき氷。
中には紅茶のゼリーが入っていて、練乳をかけると甘くて優しい味に。
落ち着いた照明と木の色合いの店内で、火照った体を冷ましながらのんびりできました。
カフェを後にして、もう一度梅花藻を眺めながら駅まで戻る。
こちらのお店には置いてなかったですが、この辺りはビワマスという鱒の養殖場があって鱒寿司が有名みたいです。
醒井の清流育ちの鱒はさぞ美味しいことでしょう。駅前には鱒寿司や近江牛を出す飲食店なんかも。
歩いて片道10分の短い道のりなのに、神話のような時代から始まり平安、鎌倉、江戸に明治、大正に至るまでさまざまな逸話がたくさん残されていているのが感慨深かったです。
醒ケ井すごいところだな。
内緒にしておきたいくらい素敵な場所でした。
ちょっと咲いてたら良いなぁくらいに思ってた梅花藻も、たくさん見ることができて良かったです。
きっと9月いっぱは楽しめるんじゃないでしょうか。のんびりお散歩すれば癒されると思います。
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