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【感想文】普請中/森鷗外

『「本人にとってはまんざらでもないというクソダサムーブ PartⅡ」に挑戦』

私は、2022年1月~12月にかけて開催された、とある読書会の場で掲載された全ての読書感想文(※1)を拝見させて頂いた。
※1・・・この読書会は、読書会参加者同士が課題図書について対面で議論するのではなく、参加者が書いた「読書感想文」を主宰者が紹介してその所見を伺うといった形式をとる。

ここで、もし誰かに「全感想文の中でどれが一番良かったですか?」と尋ねられたら私は迷うことなく、

本人にとってはまんざらでもないというクソダサムーブ

と答えるだろう。この風変わりなタイトルの読書感想文は『森鴎外/ヰタ・セクスアリス』の読書会で読書会主宰者の方が書いたもので、単純に笑える&物語の本質を突いた名作であり、当時この感想文を読んだ私は「イイなあーマネしたいなあー」と思っていたら、なんと間の良いことに今回私が参加した読書会の課題図書は、あの森鴎外の『普請中ふしんちゅう』であった。

というわけで今回は私も主宰者にならって「本人にとってはまんざらでもないというクソダサムーブ PartⅡ」なるものを書いてみることにした。
※注)別に私は主宰者にびているわけではない。私はヨイショはしない。

▼読書感想文 ~本人にとってはまんざらでもないというクソダサムーブ PartⅡ~

で、PartⅡを書こうとしたがムリだった。本書『普請中』には肝心の「クソダサムーブ」が存在しないからだ。
いや確かに、この本を読み始めて開始3秒で私は「今回もクソダサムーブになりそうだな。」と内心期待しながら読み進めた。例えば、参事官の渡辺が精養軒ホテルでオツに澄ましたり、サロンの装飾を「日本は芸術の国ではない」と切り捨てたり、元恋人のドイツ女(世界を股に駆ける歌手)と再会して愛を語らったり、鴎外恒例の「Begleiten(ベグライテン)」「Kosinski soll leben(コジンスキイ ゾル レエベン )」という想像も付かない外国語を作中に放り込んできたりといったように、クソダサムーブのお膳立てバッチリやんけと思っていた。

が、物語全体を通して考えたとき、私はクソダサムーブよりも祖国に対する渡辺の切実さを強く感じた。それは <<日本はまだ普請中だ>> という本書のタイトルに直結した台詞に如実であり、参事官という権力側の立場にありながら、そして近代化を推進していく立場にありながら、「日本は芸術の国ではない」と近代化を暗に非難したり、ドイツ女に冷淡であったりと、渡辺の言動からは「祖国を愛すりゃこそ」の切実さが垣間見えるからである。

といったことを考えながら、でも本当の感想を言うと「愛国心の欠落した渡辺がドイツ女をはじめとする西洋人&西洋文化に媚びまくってくれたら、私としても『クソダサムーブ PartⅡ』が書けたのに残念だなあ」である。

以上

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