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初めて選挙の裏方をやって体感する当たり前にやり遂げる凄さ【「選挙に行こう」から「子どもと選挙に行こう」という提案】

先日の激動の衆議院議員選挙、世の中は結果に一喜一憂している中
僕は人生で初めて選挙の裏方をやり切りました。

教育委員会も市の職員になるので、選挙関係のことも仕事に入ります。
僕は投票所の前日準備と選挙当日の投票受付を担当しました。

自民党の総裁選が始まったタイミングで、役所の中では、衆議院がいつが解散になるのか、選挙の準備は必要なのか、緩やかではありますが役所のみんなが気にするように会話していました。

総裁が石破さんになったタイミングで、役所の話題はいつ解散するのかということで、元々の話だとすぐには解散しないとのことだったのだが、まさかの就任して6日後に解散、26日後に衆議院選挙ということで、僕の知り合いの学校では運動会と日程が被っていて、大変だったところもあったようですが、役所的にもなかなかに大変なスケジュールだったということは想像に容易いでしょう。

もちろん、解散になったことも見越して、どの地方自治体も動いていたとは思いますが、それでもなかなかにタイトなスケジュールでした。そんな中でも、先輩方は懸命に汗をかいていました。

そもそも選挙になると多くの役所の人が手伝いで駆り出されるのですが、通常業務が止まることはありません。通常業務に合わせて、選挙対応がプラスαされるのです。これがいかに大変かというのは今回働いてみて、傍で見ていて体感したことです。

そして、前日準備に選挙会場に行かせてもらいました。役所の先輩方に教えてもらいながら、人の動線を考え、備品を準備していきます。この時、本当に勉強になったのは会場をお借りしているという意識だったと思います。投票所には学校や幼稚園などが使われることがしばしばあります。ですからこそ、子どもの個人情報を守るように隠したり、施設が汚れたり、傷がついたりしないように気を付けたり、当たり前のことだけど、日ごろ使わない施設で、そこまで気を配り続けるのは本当に大変でした、

そして、選挙当日は朝の6時ごろから集まって最終準備開始です。ちなみに僕が6時だっただけで、早い方は5時ごろから、投票用のパソコンや機器を当日に役所から貸し出す自治体の場合はもっと早いと思います。当日の担当者の方がみんな集まって打ち合わせ開始です。

実は投票所の当日の運営は役所の人だけではありません。投票所によりますが、役所の人とは別に投票所の受付の派遣業務を行っている会社の方に手伝ってもらうこともあります。また、投票立会人という投票する地域の投票権がある方で投開票を見守ってもらう方もいます。たぶん他にも関わってくださっている方はいると思いますが、僕が当日の運営で出会った人達はこんなところでした。

さて、このメンバーで投票所を1日回していく訳ですが、午前7時に衆議院選挙が開始してから夜の8時まで有権者の方は割とずっと来ます。それぞれのタイミングで、投票所に来て、投票して帰っていきます。その間同じことを1500回以上やるんです。投票権を受け取って、確認して、投票用紙を渡して、記入する場所に誘導、投票箱に入れてもらいます。今回は小選挙区と比例があったので、それを二回繰り返します。

この僅かな見える過程でもトラブルはつきものです。投票用紙を忘れる人、雨で濡らして確認できない人、他の投票所を指定されているの来ちゃった人、間違った投票箱に入れちゃった人、ペンを持ち帰っちゃった人などなど様々です。そのトラブルにも都度都度対応しながら1500人以上の人と対話します。休憩は適宜入りますが、休んでいても有権者の方は来てくださるので、どこか気持ちは休まりませんし、短い休憩をこまめに取る形でないとスムーズに進まないのもまた事実なので、結構な肉体労働でした。投票所によっては、人が来ない時間帯があることで、逆に座ったまま何もできないという違う大変さもあったようですが、なかなかに大変なのは大きくは変わりません。

午後8時を過ぎると片付けを済ませます。原状復帰をしながら傷ついた部分はないか確認していきます。派遣の方には決められた勤務時間がありますので、それまでに大半を済ませておかないと、役所の人だけで片付けることになるので、最後の最後まで必死でした。

僕の勤務はここまででしたが、ここから役所では開票作業が始まります。夜の20時に集合して徹夜で開票作業に取り掛かります。日を跨ぎ、ひどい時は朝の5時までかかることもあるそうです。電車もバスもないので、タクシーや車で多くの職員が帰ります。タクシーが捕まらないで、待機に多くの時間がかかった人もいました。そんな業務に携わる人の中には当日投票所の受付をした後に開票まで勤務になっている猛者もいます。そして、投票日の次の日は月曜日になので、そのまま通常業務の関係で勤務している多くの先輩方もいました。

この姿を見ながら、選挙という国民行事を裏方で当たり前のように形にしている方々の存在を目の当たりにして、尊敬の気持ちが強く芽生えてきました。教員をしている時は、学校のことって外から見たら見えづらくて、わかってもらえないよなとも思っていたんですが、今回の件を踏まえて、自分が如何に知らない誰かに日常を支えてもらっているかってことを痛感させられました。

そして働く側になってみて、新しい課題にも出会いました。全国の多くの自治体で投票場所を少し早めに閉めることがネットニュースで話題になっていました。午後6時以降の投票率が低いことを理由にそのような取り組みをしている、それに対して賛否両論があった訳なんですが、昨今投票立会人を引き受けてくださる方が見つかりづらくなっているのも課題になってきています。今回業務を担当してみて、投票立会人の方の負担を軽減したくなる現場の気持ちもよくわかるし、投票所を遅くまで開いて欲しい有権者の気持ちもよくわかりました。特に若い世代は仕事やバイト、部活の関係で遅く出ないと投票できない方もいるのかなとも感じている自分もいます。(そういう人のために期日前投票があるのは理解している前提で)

だからこそ、答えのない問いをみんなで摸索していくたびなんだろうなと思います多くの人が関わる投票という行為がどうすれば多くの人が心地よく運営され、より民意が反映される形になるのか摸索がまだまだ必要なんだなと肌で感じました。

あと、個人的に印象に残ったのは子供連れの有権者の方が多くいたことです。投票権がある子どもを連れて投票所に来て、こうやるんだよって教えてあげる親御さんや、散歩の帰りに子どもと一緒に来て、選挙のことを教えてあげてる姿が印象的でした。

この姿はフィンランドで親子で美術館に来ていた姿に重なるところがありました。フィンランドに行ったとき、美術館に親子で訪れいてる姿をよく見かけました。子どもが絵のことを聞くと親御さんは、絵の説明をしてあげたり、子どもにどう見えるのか尋ねたりする様子が随所に見られたのです。こういう何気ない日常がアートというものの敷居を下げるのだと感じたのを今でも覚えています。

そこから改めて選挙率を上げるためにみんなが多種多様な取り組みをしている中で、キャッチコピーが変わっていく気がするんですね。たぶん「選挙に行こう」っていう当事者にアプローチをするよりも、その習慣を日常化するための施策の方が美しい感じがしています。

「選挙に行こう」から「子どもと選挙に行こう」にするのが、美しいような気もしています。若者が有権者になる前やなってからも家族で行く初詣みたいになったらなって思っています。

立場が変われば見てくるものも変わってくる

当たり前だけど、多くの気づきを得た経験でした。
それでは次の選挙でお会いしましょう。


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小泉しのぶ(小学校教諭×起業家→教育委員会×起業家 )
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