[週末雑記#8]本の虫
物を捨てるのが苦手、特に本を捨てるにあたっては相応の覚悟を要するため、昨年末から2度に渡って選抜を繰り返し、徐々に本を減らしてきた。改めて取捨選択しつつ、断捨離を決行しているが「本を徹底して減らすぞ!」と決意していた朝に「一万円選書」の案内が届き、まさに捨てようとしていた矢先に新しい出会いが舞い込んできた。人生よく出来ているものである。
元々、文章を読むのも書くのも好きで、そういうことばかりできる学部を、ということで法学部に進んだ。自分の考えを言語化するのも話すのも好きで、徐々に「その能力を人の人生に深く関わる分野で使いたい」と思い、不動産や人材の領域に進むことになり、現在に至る。
世の中はすごい勢いで変わる。社会に出た2010年当初は、iPhone流行り初めでリーマンショック直後、さらに輪をかけて東日本大震災、ということもあり、経済ダメージを引きずりつつも、起業ブームも後押しして、活気が出始めていた頃だったと思う。
流行りのサービスが出ては消え、そのサイクルは早く、どの企業も次の時代の生き残りを賭けて事業を作ったり、売ったり、買ったり、立て直したり、潰したり、再構築したり…沢山の企業を回っていて、何がなんだかわからなくなっていた。ただ、すごいスピードで変化が起きていることだけが分かった。一つずつ、それぞれの事業に深く関わっている人からすると大変な苦労があるんだろうな、と、話を聞くたびに思いつつ、社会を知らない就活生の自分では想像力の限界に達し「どこに就職しても、多分大変なんだろうな」ぐらいの解像度で、縁あって最初に内定が出た企業に入社することにした。
自分が入社してやりたかったことはシンプルに「目の前に縁があった人の人生に深く関わりたい」ということだった。本を読むのが好きで、本の虫だった自分は色々経験した気になっていたが、結局のところ、大した経験はできておらず、自分の力で切り拓いた新しい世界を見たこともない。色々なところにクビを突っ込むのが好きで、その物事の中枢に関わることはない、そんな人生を過ごしてきたことにやや劣等感もあった。もっと深く出来事一つ一つに関わりたかったのだ。自分の能力も活かせて、やりたいことも叶う仕事。それが、人生最大の買い物とも言える実需の不動産販売に関わることだった。
今思い返すと、すごい自己都合で仕事がスタートしているが、若い頃なんてそんなもんなんだろう。人生は結局それぞれ一度しかないし、自分が出来ることで与えられた人生を味わい尽くせればそれで良いのかもしれない。
読書はそんな、人生それぞれである人との出会いが多くあり、その出会い一つ一つが面白いから続けている。「そんなに本買って読む意味ある?本って読んだ後、自分の人生に変化があったり、スタンスを変化させるような動きがないと意味なくない?」と最近言われた。目からウロコだった。そんなこと考えたこともなかった。これって日々の食事に対して「バランス良く栄養取れてないと意味なくない?」と言われたように理解していて、咀嚼するのに時間がかかったが、なるほど、世の中にはそういうスタンスで読書に向き合う人もいるのだ。多様性だ。素晴らしい発見である。
ただ、本の虫にとっては、そんなことどうでもいいのだ。どんな栄養が入っていようが、身体に悪かろうが、あまり関係ない。意味なんてないのだ。ただ味わいたいだけだ。バランスの悪い食事で結構。美味しそうな本を今日も嗜む。美味しいと思える本は人生のステージによって変わり、その変化を今後も楽しんでいきたいな。
ダラダラ書いてないで、今日が断捨離の仕上げの日なので、気合い入れてやっていこう。