右手がダメなら、左手で。
10代からカラテの試合をそれなりにやってきてよかったことのひとつは、
「今、この瞬間にやれることを見つけ、選択し、遂行する」という型を知ったことだと思う。
真剣勝負は、こっちも勝ちたいけど、向こうも勝ちたい。
世に溢れる達人セミナーみたいに「達人さん都合」に合わせてはくれない。
そうなると
「自分の得意な距離になる」、とは限らない。
「自分の得意パターンの機会がやってくる」、とは限らない。
もし得意な距離、得意なパターンになったとして、相手側にとっても「待ってました」かも知れない。
試合中、足にダメージを受けて動きづらくなるかもしれない。
拳が折れてせっかくの武器が弱点に変わるかもしれない。
よく「練習でやってきたことを試合で出す」と言うけれど、脳に一撃を喰らってみれば、脳のOSはパニックに陥り、冷静さは瞬時にブッ飛ぶ。
そんな感じだから、
「その瞬間にやれる最適解を選択しながら、試合の流れの中で自分のストーリーを成立させる」
ということをやらざるを得ない。だから、
右手がダメなら、左手で。
右足がダメなら、左足で。
全部ダメでも、それでも何とかしなければ。
「やれないこと探し」ではなく、「やる」に徹底フォーカスせざるを得ない。それでもなんともならないことのほうが圧倒的に多いのだけれど、なんともならないことから学べるってこともあるんじゃないか。
憂いなく身体が動く年代、ダメージがすぐに回復する年代だから積み上げられる経験をしておいて、余計なものを全て削って自分の型つくる。
そうしてできた型は、耐用年数がとても長い。