“労働者の国” x “消費者の国”|ドイツと日本のハイブリット生活
ドイツに来た頃から僕のフィルターに引っかかっていて、ずっと読みたいと思ってたけど後回しにしていた本。ドイツでの将来を現実的に考え始めたこのタイミングが重なり、やっと熱量を持ちながら読み終えることができた。
本書では、日本とドイツの両方で働いた経験のある筆者が、主にドイツの労働環境を説明しながら、日本との違いに触れ、日本の労働環境や文化に対して問題提起をしている。
日本とドイツを比較することで、ドイツで生活してきた僕にとっては当たり前になっていたドイツの文化や感覚を言語化してくれているようで、自分の当たり前を再認識し、初心を思い出す良い機会になった。
またこの本からは、「『生産性』とはなにか」という問いの答えに繋がる大きなヒントを得ることができたように思う。『生産性』とはスピードを上げることではなく、無駄を省くこと。もっと言えば、生産的に仕事が捗るような(“勝手に”無駄が省かれるような)環境や仕組み、文化を構築することなのではないかと僕は感じた。マネジメントや管理職、経営者などの労働環境や仕組みを改善していく仕事をする人におすすめしたい本だ。
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僕が本書で一番印象に残ったのは以下の文章。
この文章を基点に、日本とドイツのあらゆるものが説明できるなと。
かゆいところまで手が届き、たくさんの配慮がされた日本のサービス。それに比べてドイツでは、スーパーのレジ店員は座っているし、お客さんが歩み寄って成り立っているサービスがたくさんある。
以前は、ドイツのそういったサービスに触れる度に、「日本のサービスってすごいな」と感心していだが、この裏に隠されている構造まで考えると、一概にそうも言えないなと。こうした日本のサービス精神は素晴らしい一方で、「お客様は神様」という客がサービス提供者よりも偉いという構造を作り出し、労働環境を悪化させているのかもしれない。悪く言えば、誰かの犠牲の上に高品質なサービスが成り立っている。
一方でドイツではそこまで客に媚びることはなく、対等な関係を気付く。サービス提供者だからといってなんでも完璧にできるわけではないし、客だからといって威張っていいとも思っていない。お互いがお互いをリスペクトすることで円滑なコミュニケーションが生まれ、働きやすさに繋がっているように思う。
もちろん、これらには文化や言語などなど根本から違いすぎて一概にこれを直せばこうなるというのも言えない。どちらが悪いとか良いとかの価値観も人それぞれで一長一短だ。ただ、一つ言えるのは、ドイツの方が労働者としては生きやすい、日本の方が消費者としては生きやすい。
僕はこれに加えて両国の社会や経済状況など、僕の持っている情報を総合的に考慮して一つの最適解を導き出した。
これがひとまずドイツと日本の選択肢を持っている“今の僕にとっての最適解”なのではないかと。
労働環境も整っていて、働きやすいドイツで仕事をする。為替の関係性を考えてもユーロを稼いでおく方が将来性はありそうだ。ドイツでは有給を3〜4週間消化しなければならないので、その有給休暇を使って日本に帰り、遊んだり友達に会ったりしながら満喫する。日本とドイツのハイブリット生活。良いとこどりだ。
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たまたまサッカー留学という形でドイツに来た僕だが、まさかドイツで生活していこうと思うなんて思いもしていなかった。サッカーがたまたま僕に与えてくれたドイツという選択肢。ただのラッキーだ。
もちろん、日本でどうしてもやりたいことができたり、何かあったときは柔軟に意見を変える。時代の変化や社会の動きに合わせて、臨機応変に選択していけたらなと。
これからも情報を仕入れて、その時々で最適だと思う道を、自分の価値観と照らし合わせて歩んでいこうと思う。