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厳しい役目を果たすこと

 アイデアに対してフィードバックを返す役割、いわゆるメンターやジャッジ、壁打ち役を担うときに最も重要なのは、厳しい役目を果たすこと。一見冷たく感じられるかもしれないけれども、相手の成功を真に願うならば、これは避けては通れない道。というわけで今回は、その理由について深掘りしていこう。

 優しいフィードバックがよろしくない理由は非常にシンプルで、それは、相手のためにも自分のためにもならないから。アイデアを育て成長させるためには、甘い言葉や表面的な褒め言葉は意味を成さない。どんなに独創的であっても、初期のアイデアには必ず改善点が存在する。その改善点を見つけ、相手に伝えることがフィードバックを返す側の使命。相手のアイデアをあらゆる角度から考察し、潜在的な問題点や改良の余地を見つけたら、包み隠さず、時には厳しく指摘することが求められる。

 もし、誰からも指摘を受けずに改善点に気づかないまま勢いに任せてアイデアを進めてしまった場合、結果は残念なものになることが多い。失敗によって当人は時間もお金も、さらには精神的な体力も失う可能性が高い。そしてフィードバックを返した側も、「なぜあの時止めなかったのか」「なぜ改善点に気づかなかったのか」と相手や周囲から失望されることも。

 具体例として、ミカンを使ったアイデアを挙げてみよう。例えば、「ミカンを蒸して甘い饅頭を作ろう!ミカン饅頭だ!」というアイデアがあったとする。このアイデアを冷静に評価すると、果たしてミカンを饅頭の中に入れて美味しいものができるのか?と疑問に思うのは当然。ミカンを愛して止まない中本ですら全力で懸念する。

 しかし、相手との関係性や気まずさを避け、「厳しいことを言ったら関係が悪化するかも」「相手のやる気をそがないようにしよう」と考え、「斬新ですね!」「ミカン大福の進化版ですね!」「新しいニーズを切り開くかもしれませんね!」といった褒め言葉を投げかけた場合、後に待っているのは厳しい現実。

 実際にミカン饅頭の試作が行われ、他の人々に食べてもらうと不評が続出し、当人は大きく落胆する。加え、フィードバックを与えた側も「なぜ正直な意見を伝えなかったのか」と責められ、「使えないフィードバックをする人」というレッテルを貼られることになるかもしれない。

「アイデアの初期段階で、相手に優しいフィードバックしかできない人は、相手に気に入られたいか、アイデアの本質を理解していないか、そもそも相手に関心がないか、またはアイデアを発展させる意思がない」といった言葉を耳にすることがある。

 確かに、アイデアに対して真摯に向き合わず、ただ褒めるだけでは、相手の成長を願っているとは言い難いし、自分を守る行動とも言える。厳しい言葉を伝えると、その瞬間は胸が痛むかもしれないが、中長期的には相手の未来を明るくすることに繋がっていく。

 だからこそ、アイデアには厳しい声を届けていこう。時には焼け野原を目指す覚悟で、時には氷河期を乗り越えるつもりで、心を鬼にして初期段階のアイデアには向き合っていこう。

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