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原体験にはご注意を
新規事業やスタートアップのアイデアを考える際、「原体験」を出発点とする手法はとても有名。自身の経験から課題を抽出し、それを解決する形でプロダクトやサービスを構築することは、情熱と推進力を得やすい方法。けれども、「原体験」を基にするアプローチにはいくつか落とし穴があるので、今日はそれを紹介していこう。
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一つ目の落とし穴は、過去の原体験と現在の乖離。現体験が強烈であったとしても、その体験が現代において再現性を持たないことが起こり得るもの。
例えば、「子供時代にミカンの皮を剥くのが大変だった!」という経験を元にして「簡単に皮が剥けるミカン剥き用の専用ツール」を開発したとしても、現代では既に品種改良により皮が薄く簡単に剥けるミカンが主流になっており、課題自体が市場に存在しなくなっているケースも。
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二つ目の落とし穴は、過去の原体験の価値の過剰評価。自分たち人は、記憶を美化する傾向にあり、過去の体験に対する主観的な評価が膨れ上がっていくもの。
例えば、「子供時代にミカンの皮を剥くのが大変だった!」という経験を、「誰もが不便に感じる課題!」「誰も口にしていないだけ!」と思い込み突き進むようなもの。けれども実際には、ミカンの剥きやすさは重要視されておらず、味や価格が良ければ何でもok!というケースも。
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三つ目の落とし穴は、過去の原体験が曖昧で具体性がないこと。過去の経験を元にして新しいものを生み出そう、と思ったとしても、具体的な状況や詳細が思い出せず、結果としてその課題の解決策となる製品やサービスの設計に移れない、といったことも。
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例えば、「子供時代にミカンの皮を剥くのが大変だった!」という漠然とした記憶だけで、具体的な課題感(指が痛かった、剥くのに時間がかかった、剥いた後手が汚れたなど)が明確でない場合、解決策の方向性が定まらず、製品やサービスが曖昧になり、次に進めなくなってしまう。
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「原体験」を起点とするアイデア創出は情熱や独自性を引き出す一方、落とし穴が存在するもの。だからこそ、原体験があるから大丈夫!と言って突き進むのではなく、仮説検証を繰り返すことで原体験を客観的な真実へと昇華した上で、アイデアをカタチにしていこう。No Talk, All Action!!!