融資選択の背景
スタートアップの資金調達といえば、株式による資金調達(エクイティファイナンス)が一般的。けれども近年では融資が注目を集め、スタートアップが株式ではなく融資を選択するケースも。この変化の背景について、今回はできる限り簡単にメモしていこうと思う。
ただその話に入る前に、簡単に株式による資金調達の説明を。大前提として、その手法は投資家に株式を譲渡することで資金を得る方法。具体的には、会社の価値が1億円だったとすれば、株式の100%が1億円相当と見なされ、その20%を投資家に手渡すことで2,000万円を調達する、という流れ。
(※細かな計算式や条件は実際とは異なるものの、話を簡単にするためにあくまでイメージとして)
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融資が活用される背景の一つ目は、株式の譲渡が不要だから。先ほども述べた通り、株式調達は会社の一部を投資家に譲渡することで資金を得る方法。もし初期段階で大きな割合の株式を譲渡してしまうと、経営権を手放さざるを得なくなる確率が上がり易くなってしまう。
例えば、ミカンの新しい品種を開発するプロジェクトがあったとする。株式調達を行い、多くの割合の株式が外部に渡ると、「この品種ではなく、別の品種に切り替えよう」と外部の意思決定で方針が変わってしまうことも考えられる。
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融資が活用される背景の二つ目は、過度なプレッシャーを避けられるから。株式調達を行った場合、中長期ではなく短期での成果を求められることが増えるもの。もちろん融資には返済義務こそあるものの、外部から短期的な成長要求に縛られずに済む。
例えば、新しいミカンの開発プロジェクトにおいて、じっくりと研究開発に専念しているとき、もし初期段階から多くの株式を外部に譲渡していた場合、「もっと早く事業を成長させるべきだ」といったプレッシャーがかかり、時には心が折れてしまうことも。
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融資が活用される背景の三つ目は、次の資金調達の交渉を有利に進められるから。スタートアップの初期段階で多くの株を手放してしまうと、成長して資金がより多く必要な段階になったときに、譲渡できる株が手元にあまり残っておらず、次の資金調達が難航することも。けれども、融資では株が減ることがないので、その心配は不要に。
例えば、新しいミカン開発プロジェクトの初期で株式調達の重要性を十分に理解せず、誤って多くの株を譲渡してしまうと、次の資金調達で苦戦し、研究開発に続く販路開拓に進めなくなってしまう可能性も。
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融資には返済義務が伴うものの、株式調達のデメリットを回避できる面を持っている。もちろん融資が完璧な方法というわけではなく、それ自体にデメリットも存在する。けれども「スタートアップといえば株式調達!返済不要のお金を手に入れるんだ!」と固執するのではなく、様々な手法を駆使してアイデアをカタチにするための原資を確保していこう。これから挑戦を始める皆様の一助となりますように。