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本質を忘れずにピッチを

 アイデアをピッチする際、一見すると「これを重視すれば良い!」と思える要素、いわゆる惑わす要素がいくつか存在する。けれども、審査する側は日常的に無数のビジネスに触れているため、こうした惑わす要素が評価に与える影響は実際には限定的。というわけで今回は、その現実を簡潔にメモしていこう。

 一つ目の惑わす要素はデザイン。スライドのデザインが美しいと確かに印象は良くなるもの。けれども、スライドの見栄えがどれほど良くても、そこに掲載されている内容が優れていなければ評価には繋がらない。

 例えば、ミカンを使ったデザートを作るケーキ教室、いわゆる「ミカンケーキ教室」をピッチする場合、鮮やかなオレンジ色のケーキ画像をたくさん載せても、参加者の継続率や市場の成長可能性など、ビジネスに必要な情報が欠けていれば評価されることはない。

 二つ目の惑わす要素はストーリー。感動的な物語をピッチに盛り込むことは、聞き手の心を掴むことに繋がっていく。けれども、ストーリーがどれほど感動的であっても、ピッチしている内容自体が優れていなければ評価には結びつかない。

 例えば、「幼い日に母が作ってくれたミカンケーキに感動し、それがきっかけでパティシエを目指し、ミカンケーキ教室を開くに至った」というストーリーを語ったとしても、それは創業者のモチベーションが高い理由に過ぎないという現実。顧客の存在証明やビジネスの客観的価値評価とは直接関係がない。

 三つ目の惑わす要素は情熱。ピッチを迫力ある声で抑揚をつけて話すことは、説得力を増す効果が確かにある。けれども、どれだけ熱意を込めて話しても、伝える内容が本質的に優れていなければ評価には至らない。

 例えば、ミカンケーキ教室について熱意とユーモアを交えてプレゼンしたとしても、参入障壁の築き方や収益性、スケールの方法論が不十分であれば、将来性がないと判断され、容易に落とされてしまう。

 デザイン、ストーリー、そして情熱。それらはピッチを惑わす三大要素。けれども勝負すべきはアイデアの本質という現実。「誰の」「どんな課題を」「どうやって解決し」「どのように収益を生むのか」、その根本を突き詰めた上でピッチに挑んでいこう。自戒を込めて。

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