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バンド活動が100倍捗る?!音楽業界との接し方 アレやコレ【小山純平(PCI MUSIC)】vol.1

現役のバンドマンが抱える、誰も教えてくれない疑問や悩み

ライブハウス、イベンター、ライブ制作、レーベル、マネジメント、チケットサービス、媒体…etc。
音楽業界にはバンド、アーティスト以外にも様々な立場で仕事をしている人達がいる。
しかし、彼等はいわゆる裏方。
彼等がどんな仕事をしているのか、どんな熱意や想いを持っているのか、中々外に発信する機会は少ない。

意外とアーティスト側と相互理解が追いついていない事も多いのではないか。アーティストに、もっとこうしてくれたらお互いにとって良い結果になるのに…と思う事も。

もっと広まって欲しい想い、知って欲しい知識もあるのではないか。

どのくらいになったら食っていけるの?
タイアップってどうやったら取れるの?
どうやったらフェスに出れるの?
レーベル、事務所はどんなバンド、アーティストを探しているの?
音楽業界の人と知り合ったけど、この人とはどんな関わり方が出来るんだろう?
あのバンドが人気になっていった秘訣とは?

現役のバンドマンが抱える、誰も教えてくれない疑問や悩み。

QOOLANDのVo&Gtとして活動し、メジャーデビューやROCK IN JAPAN FESをはじめ様々な大型フェスにも出演してきた平井拓郎が語り部となり、毎回様々な音楽業界人をゲストに招き『伝えたい』『知りたい』を実現し、お互いの相互理解を深め、より建設的な関係性を目指す対談企画。
 
~第一回~

<HOST>

平井拓郎
・プロフィール
ロックバンド『QOOLAND』のVo&Gtとして、ユニバーサルレコードからメジャーデビューを果たし、3度のROCK IN JAPAN FESTIVAL出演をはじめ、様々なイベントで活躍。2018年4月に解散。
以後、起業し営業会社の経営者としてバンドマンたちの高収入を実現するための場を構築。
noteに書き綴っていたブログがキッカケとなり小説「さよなら、バンドアパート」を出版、2022年春には映画化される。
現在は、新たにロックバンド『juJoe』を結成し活動中。

<GUEST>

小山純平(PCI MUSIC)
・プロフィール
神奈川県出身。アウトドアが好き・基本ゆるいのが好き・お酒も好き。
これまで店舗営業、レーベル窓口・販促担当を中心に、宣伝など一通り経験。近年はグループ会社出向を経て音楽配信・デジタルプロモーション業務も担当。基本は営業職。

大きく看板をつけてもらったりとか、試聴機入れてもらったりとか

ー平井ー
早速なんですが、PCIはポニーキャニオンインディーズの略称だと思うんですけど、具体的に何をしてる会社なんですか?
 
ー小山ー
今のメインの業務はCD だったり DVD のパッケージ商品のディストリビューション流通と、音楽配信のディストリビューションを主にやっています。あとはマネジメントをやってる部署もあります。
 
ー平井ー
ちなみにこの流通っていうのが、どことどこを繋いでいるのかわからないというバンドマンも多いそうです。
 
ー小山ー
全体の話をするとまずアーティストがいて、主にライブやスケジュールなど管理する事務所マネジメントっていう人がいて、レーベルっていうのが音源を作る会社を作る立ち位置の人たち。

このレーベルが音源を作ったときに、CDショップとかに出すときに、僕たちがディストリビューターとして間に入ります。レーベルからCD などの商品をお預かりし、お店に僕らが営業して卸していく。
僕らがお店の営業や、CDが売れるためのプロモーションのお手伝いだったりをやっていくという立ち位置です。
この営業っていうのはお店に、是非このアーティストのCD を置いて下さい!商品を少しでも多く取り扱って下さい!っていうのと、店頭のプロモーションというところです。

大きく看板をつけてもらったりとか、試聴機入れてもらったりとか、MV流してもらったりとかも含めて営業していくって流れですね。レーベルから委託されてる営業会社って感じなのかな?

だからニーズでいうと、自前の流通の機能を持っていない組織が対象ですね。

流通を自分で持っている会社...メジャーのレコード会社はその辺りの機能も全部自分で自前で持ってるけど、インディーズになると、自前の流通の機能を持ってる会社がないので、そこを僕たちが補填するというか間に入って、お店に流していく感じです。単純に日本全国のお店との流通経路を僕らは持ってはいるんです。
 
ー平井ー
なるほど、わかりやすい!初めてちゃんとわかった気がする。ありがとうございます。
小山さんの歴代部署だったり、その業務内容など教えてもらえますか?

近年、レーベルさんじゃなくて、バンドのメンバーさんと直で契約するっていうことも増えていった

ー小山ー
PCIに入るキッカケは…PCI が取引先にしてる2次卸の会社があるんですけど、そこでもお店の営業とかをやっていました。その中で小山は営業できるな!っていうので誘ってもらって PCI に入りました。

PCIではまず最初にお店の営業をやりつつ、アーティストさんに声をかける営業もやり始めました。各レーベルさんだったりとかアーティストさんからPCI に仕事を任せてもらうための営業ですね。
自分でレーベルやアーティストさんに声をかけて、流通するためのタイトルも持ってくるようになってきました。

お店の営業も、レーベルさんの担当も徐々に増えていきながら、プロモーション担当みたいなこともやっていました。
 
ー平井ー
PCIさんの立場だとどんなプロモーションをするんですか??
 
ー小山ー
まずは Web 系のプレスリリースを出したり、インディーズを取り扱うフリーペーパーでskreamや激ロックとか当時はジャングルライフだったりとか、あとはロッキンとか MUSICA とかの主要な音楽媒体。
ラジオ局も人づてに紹介して繋いでもらって...本当全方位って感じですね。担当として浅く広く1年間ぐらいはやってましたね。
 
ー平井ー
それを聞くと、世の中の人はレーベルがやってる仕事って思いそう。
 
ー小山ー
そうですね。本来であればレーベルがやることが多い仕事ではあると思います。じゃあPCI としてはその業務をして、何がメリットになるかっていうと、取り扱ってる CDやDVD が沢山出荷されて売れることが嬉しいことなので。

そのために僕らがプロモーションとして動ける部分動いて、ちゃんと作品の紹介に繋がっていくっていうことが、僕らにとってもお店にとってもアーティストさんにとってもプラスになるよねっていうところです。

今までやりたかったけどやれていなかった部分が、僕がちょうど入った時、人が少し増えたタイミングでチャレンジしてみようという事になりました。
あとは近年、レーベルさんじゃなくて、バンドのメンバーさんと直で契約するっていうことも増えていきましたね。

バンド個人がいろいろプロモーション動きますって言っても繋がりもないですし、そういうバンドさんたちの窓口に僕らがなる必要も出てきたっていうのもあるので。

僕らがちゃんと顔を繋いでおいて、少なくとも主要なところにはこういうタイトルが出ますよっていう情報は渡しておけるっていう状況にしておかないと、直でやってるバンドさんたちがかわいそうだなっていうのもあるんで、そういった意味でも僕らがプロモーションも動き始めたっていうのはあります。

音楽ぐらいじゃないかなと思うんですけど、何か自分が売ったものを使ってそれを喜んでる瞬間が見れるって

ー平井ー
そのプロモーションをやるのは、普通流通会社としてはちょっとプラスの仕事じゃないですか。そういうことをお願いするのに別途費用はかかるものなんですか??
 
ー小山ー
追加で経費はかかってないですね。動くっていうこと自体に対しては。

ただ、そのプロモーションによってお金がかかるものとかありますね。
出稿してインタビューが幾らとかそういうのはレーベルさんに支払いをいただきます。でも僕らの手間賃っていうところでは基本的にはいただいていないです。

ただ、今配信でやっている PCIのサービスの方だと、なかなか配信で1曲だけで動いてプロモーションやるのはとても大変な部分もあります。そこで配信リリースのみの場合はオプションっていう形を設けてはいて、オプションで追加料金を支払っていただいたら配信リリースだけでも、プロモーター動きますよみたいなこともやってたりはします。

プロモーターも1人なので、なかなか全部やってっていうのも正直できない部分があるので…そういった部分のちょっとオプションっていう1個壁も設定しつつっていう形でやってはいますね。

プロモーションってやっぱ難しいところがあって、初めてバンド組んで1曲目リリースします!っていう子たちが、いきなりテレビのプロモーションを狙っていったとします。
もし奇跡的に取れたとしても、何もベースがない状態でテレビに出て、何も残せず、それで終わっちゃうっていうパターンは多々あるので。
プロモーションは規模感とかアーティスト特性によって動く感じではありますね。
 
ー平井ー
なんか急に中学生みたいな質問なっちゃうんですけど(笑)
今の仕事の一番面白いところ、やりがいを感じるところは何ですか??
 
ー小山ー
自分が頑張って営業したりとか、いろいろアイディア出して...販促施策だったりプロモーション案を出して頑張ったなって思うアーティストのライブに行って、会場がパンパンになっているのを見てですね。

それを楽しんでるお客さんがいるっていうのは、この中に自分が営業してプロモーションしたところで知ってきてくれた人っていうのが少なからずいるんだろうなぁって思うことが、1番楽しいし幸せなとこかなと思ってます。
 
ー平井ー
素晴らしい。僕がやってた QOOLANDで、PCIに流通してもらったCDも、どこどこのお店で買いました!ってやっぱ言われますけど、そこには営業を担当をしてくれた人の力があったわけですもんね。
 
ー小山ー
だからうちらもそうだしお店の人もそうだし、なかなか実際の音楽を楽しんでるお客さんを生で見れるっていう...

これって音楽ぐらいじゃないかなと思うんですけど、何か自分が売ったものを使ってそれを喜んでる瞬間が見れるって。
掃除機を売っても実際掃除してるところとか見れないですしね(笑)

流通会社が取るパーセンテージって各権利者の中でいうと結構少ない方

ー平井ー
なんか流通って聞くとちょっとあれだけど、コンビニにチョコ持ってく仕事だよみたいなのとはちょっと違って、もっとユーザーやアーティストに近いってことですよね。
 
ー小山ー
本当は段階的に行ったらマネジメントだったりレーベルの人の方が近いってとこなんですけど、PCIはそこの距離感がアーティストと熱量同じぐらいでやれているというか…そういう想いを持ってやっているっていうのがPCI のいいとこなのかなと思ったりしますね。
 
ー平井ー
僕もPCI以外にも何社か流通してるんですよ。でも、他社の流通会社って誰1人知らないんです…その流通会社の方のお名前もわからないし、キャラとか何もわかんないですよ、本当に。
会社に伺った事もあるんですが何の記憶もないから、PCIの方は付き合い方が突出しているイメージを持ってます。
 
ー小山ー
自分らが別にど真ん中にいたいと思ってるわけではないですけど、業界の隅っこの方で軽く仕事やってますっていう、そういうテンションでは全然ないなっていう。自分がやりたくてやってるし、そこが強みなのかな。
 
ー平井ー
そもそもの仕組み、流通会社全体の話になるんですけど、例えばレーベルとか事務所だったら、最初にアーティストにお金をかけて投資するじゃないですか。

たとえば、QOOLANDの話だと、マネジメントに所属して1年経ったときに、お前らに1000万放り込んだけど、回収がまだできていない!って言われたんですよ。そういう仕事ですし、全アーティストがヒットするわけないんですけど、会社からしたら苦しいですよね。
流通会社のいいところって、こういうリスクがないところかなと思っているんです。アーティストに会社の予算をかけなくていいじゃないですか。

手数料というか手間賃というか、取り分は半々が基本なんですか??
 
ー小山ー
流通はもちろんお店の取り分っていうのもあるので、だから流通会社が取るパーセンテージって各権利者の中でいうと結構少ない方だったりしますよ。

特にインディーズだとお店との条件っていうのも強気な契約じゃなかったりするので、お店さんも持っていく部分もあるし。だからその分お金はもらわないし、権利ももらわないっていう。
 
ー平井ー
ローリスク、ローリターンな立ち位置??
 
ー小山ー
そうですね、変な言い方したらいい意味で気楽な立ち位置でもあるしっていう部分ではあるので、僕らは制作に対してはそんなにスタジオ行ってディレクションしたりとか、こういうのがいいとか、そういうのは全然やってないです。

もちろん意見を求められてどんな感じがいいですかねとかあったら、今のトレンドはこんな感じかもね、みたいな話だったりとかはするんですけど、そこら辺ぐらいなので。

流通は権利を持たずにやれる仕事だから、会社がお金を投資するわけじゃないので、そういった意味ではリスクをしょってないっていうのがあります。でも、その分入ってくるのも少ない。だからもう僕らはやるしかない、数をたくさんやるしかないんです。

そういう意味で本当にいろいろなチャレンジだったりとか、いろんなプロジェクトに関わったりすることができるっていうのが、僕らのプラスの経験値にもなって役立ってる部分もあるのかもなとは思いますね。
 
ー平井ー
バンドマンの立場で自分の表現は曲げたくないみたいな、こだわり強い頑固系バンドマンからしたら付き合いやすいですよね。
 
ー小山ー
そうですね。もちろん売れてくれるのが一番いいんですけど、僕らも音楽が好きだったりするんで、めっちゃアングラなバンドとかでも、一般的ではないよねっていうアーティストでも、単純にうちらが好きとか、めっちゃカッケーなみたいに感じるものは、それだったらそれ相応の形でプロモーションします。

あんまりリスクとか返品とかも多くなってしまいそうだなとか思ったら抑えながら、ポイントだけ営業したりとか...でもそれが売れていってて、もしかしたらどっかで伸びる可能性もありますからね。

毎日何もしなくても150万円ぐらいが入ってきます!みたいな状態になったとか

ー平井ー
CD に比べて、配信配信じゃないですか時代は。ぶっちゃけ配信って儲かるんですか??
 
ー小山ー
配信は当たればめっちゃデカイです。あたれば10、当たらなければ0ぐらいの世界になってはいます。
配信で10万再生回りましたとかって言っても、6割とか半分ぐらいとかが売上になり、それを各権利者でまた分配したりすることになるので、跳ねないと正直つらいと思います。

ただ、跳ねた時の跳ね方がもう凄い事になったりするので、そうするともう、毎日何もしなくても150万円ぐらいが入ってきます!みたいな状態になったとか。
当たれば凄いんだけど、そこまでいかないと中々リクープするっていうのが正直難しい部分ではあるかなと思います。
 
ー平井ー
CD の方が優れている部分もまだありますかね?
 
ー小山ー
ビジネス的なところで言うと、CDは単価が高いっていうのがまず一番あるなっていうところですね。

値付けも自分たちでできますが、サブスクはそれができないので。
何かそういった意味ではビジネス的にはいろんなグッズとかもつけて、1万円のボックス作りましたっていうのも全然できるし。

あとはもう単純に物として手に持ってもらうっていうのが、リスナーがよりファンになってくれる過程の中で大事なことだったりもするかなとは思います。そういった意味で昔とはちょっと CD の立ち位置は確かに変わってるだろうなとは思うんですけど。
 
ー平井ー
令和現在、この流通を CD でかけるっていうメリットがなくもないと?

店から流行らす

ー小山ー
必要なアーティストとそうじゃない人はもしかしたらいるかもしれないですけど、やりようによっては全然プラスになるし、今で言うとCDショップにはコロナ前と同じぐらいか、もしかしたらそれ以上の人が来るようになっているんですよ。

全世界的に見てもフィジカルっていうのは、去年からすると上がってるんです。そこはレコードが伸びてきてるっていうのもありつつ、あとは世界的に見たらそれこそ BTS とか、ファンダムって言われる熱狂的なファンたちが買ってくれるっていうのが増えてきていて、日本でも推し活ブームっていうのもあるんですけど、そういうアイドルさんだったりとか、 K-POP アーティストとかにめっちゃCD を買ってくれるお客さんが増えてきているっていうところが一番要因としては大きいとこだったりしますね。

バンドにしても若い女性ファンがたくさんついてるようなグループとかは、見ていると、一部推し活っぽいなみたいな売れ方をするケースも出てきている印象です。
 
ー平井ー
1個難しい質問なんですけど、お店で展開をするじゃないですか。このときにスペースを確保する費用としてレーベルが展開協賛金を支払うケースが多くあるじゃないですか。

CD自体が全盛期に比べたら売れなくなってる時代において、協賛金を支払ってリクープ出来なさそうですよね。協賛金の金額帯とかってどうなんでしょうね、適切な額なんですかね?
 
ー小山ー
昔に比べたら全体的な金額はだいぶ下がってはいるところなので、ある程度発注数に対しての協賛金みたいな感じがあったんで、発注数が減ってくれば協賛もやっぱ減ってはいます。

それでも主要な大きなお店さんとかはかかったりもするし、高いかどうかは...正直単体のお店でのCD売り上げで見たらリクープできないことも多いとは思うんですけど、何とも言えない部分はありますよね。

例えば渋谷のどこかであのサイズの看板つけて1週間掲示するとしたら、普通に広告代理店に行ったらもっと金額が高くなる可能性もあるしなとか。
 
ー平井ー
ただ広告として捉えたら前向きに考えられるよと。
 
ー小山ー
そうですね。だから単純に CD の売れだけじゃなくて、そこで見てくれた人がサブスク聞いてるかもしれないねとか言ったらもうわかんないんで、あれですけど...でもやっぱり金額的には高いとは思います。

そこは交渉だったりとか、状況によって金額を相談したりとかすることも勿論たくさんありますし、下がってくれれば嬉しいけど、お店もお店でそれはやっぱ必死なとこでもあるっていうのは正直なところなんで。
 
ー平井ー
整理すると、この協賛金っていうのはお店側がもらうものですよね?そしてレーベル側が支払うもの。展開スペースの取り合いというか、当然競争があるんで、競争だったりとか交渉するのは流通会社の方がやってくださると。
 
ー小山ー
そうですね。でも難しいですけどね、お金払えば何でもできるってわけでは勿論ないので。ちゃんと売れないといけないし、そこのバランスを取りつつっていう感じですね。

あとは誤解がないように、全ての展開がお金で出来ているわけではないので。たくさん払うから!と言っても嫌だって言われることもありますし、バイヤーさんのセンスや気持ちもちゃんと反映されています。
 
ー平井ー
昔、タワーレコードの渋谷か新宿だったと思うんですけど、バイトの子が自分たちのファンで、業務外の時間でもめっちゃポップ書いてくれるじゃないですか。ああいうのがついているとやっぱ全然破壊力違うし、入荷枚数もやっぱ多くなりますよね? どういうやり取りが PCI とあったのかわからないんですけど。
 
ー小山ー
僕らもお店のバイヤーさんだけじゃなく、アルバイトの子たちにもどんなバンド・アーティストが好きなの?とかは聞いているんです。
例えばQOOLAND好きです!みたいな子がいても、店内も結構大きいので、バイヤーさんもその情報を知らなかったりするんですよ。

バイトの○○さんがQOOLAND好きって言ってるんですよね、きっと展開頑張ってくれると思うんです!とバイヤーさんに伝えてみて、それで話してみたら、そのバイトの子が、頑張ります!応援してます!とか言ってくれて、そういう人がいるんだったら展開やってみようかって話にもなりますし。

そういう情報は常に探していて、この展開は誰が作ったんですか?とかもよく聞いたりしてましたね。やっぱりCDショップのいいところは、そういう人の熱さみたいなところだと思うんです。
 
ー平井ー
僕もお店回りしてる時にバイトの方とかに聞きましたね。この展開誰がやってくれたんだろう?って。
自分と縁もゆかりもないような店が白熱してたら熱くなりますしね。 HMVの立川店とか凄く覚えてます。マキシマムザホルモンと一緒のサイズの凄いのが、何か壁にでっかくついてましたから!
 
ー小山ー
そういうのが全然あり得ますからね、メジャーインディー関わらず、本当に押してくれる人がいたらこんなこと出来るんだ!みたいな。
 
ー平井ー
店から流行らすっていうことがかつてあったと思うんですけど、記憶だとKANA-BOONもお店から凄く広まった印象があったし、一時期はタワレコメンとか凄かったですよね。
相対性理論もヴィレヴァンからでしたっけ? 最近はどうなんですか? まだありますかね、店からっていうのは。
 
ー小山ー
最近は減っている印象はやっぱありますね。店発信っていうのはそんなにないかな、大きな例は。
 
ー平井ー
試聴機に人がいないとか??
 
ー小山ー
そうですね。コロナ以降で変わったなって思うのは、「ついで買い」が激減したなっていう。みんな目的買い。前だったら人気のアーティストの Disc 2に入ってたら一緒に併売で売れるとかもあったんです。
めっちゃいい音でこの併売でも売れないんだ...とかにショックを受けるのはコロナ以降にありました。試聴をする文化っていうのも変わってきたのかなと。
でもせっかく人が増えてきているので、もう少し増やしていけたらいいですね。

Mrs. GREEN APPLE売れそうって思った

ー平井ー
今まで業界って結構長いと思うんですけど、全然売れてなかったのにその後めっちゃ売れたなってアーティストとか、これはそのうち売れると思ってたアーティストっています?

ちなみに僕は岡崎体育なんですけど、お客さんが2人とかの時に京都で対バンして、 京都GROWLYの店長が、こいつがマジでやばいから1回見て!!って言われて。なにこれ名前なん?岡崎体育??って。
やばすぎてこれは絶対売れるなって思って、当時所属してたマネジメントの人に誰かいいアーティストいないっすか平井くんって聞かれて、岡崎体育ってやつがマジでやばいっ!!て答えたけど、どうやって売ればいいかわかんない!!って言われて(笑)
 
ー小山ー
直接自分が担当じゃなかったけど、Mrs. GREEN APPLE売れそうって思ったのはあります。
あとはSaucy Dog。『いつか』を聞いたときに、これはもう行くっしょ!!って感じがありました。それはもうお店の人たちもそんな反応で、やっぱ声っていうのが凄いデカかったなっていう。
凄い苦労しながら頑張って今の位置に行ってるっていうのもちろんあるんですけど、でもそうだよね!そんな感じで行くよね!みたいな。

寄せるのと見失うのは違う

ー平井ー
逆に「これは売れないな」っていう人たちの共通点ってあります? 実際には売れない人の方が多いわけじゃないですか。
 
ー小山ー
うーん...そうですね。
自分の立ち位置がわかってないっていうか、自分の音楽的なジャンルもそうだし、自分がどう見られてるかがわからない、見えてない。
バンドメンバーとかスタッフが全員そうだったとしたら、やっぱ正直きついなっていうのはありますね。

だけどソングライターがもう自分の世界感はこうだ!ってやって、対外的なことを気にしないっていうバンドもたくさんいるんですけど。

誰かしら外向きで、メンバーだったりとかスタッフさんだったりとかが、理解していて、こういう風に売っていこうとかこういう風にやっていこうみたいなのがあると、すごい建設的にやっていけるんですけど、そこがずれてるとプロモーションだったり何にしても、ずれていっちゃうみたいなのがあります。自分の立ち位置がわかるっていうのは一つ重要なポイントなのかなとは思うんですね。
 
ー平井ー
ちなみに、これは見かけたら言うんですか?自分の立ち位置がお前はわかってないぞ!って(笑)
 
ー小山ー
そういう言い方は流石にしないですけど(笑) プロモーションをやるにしろ、対バンとかもこういうイベントがいいんじゃないですかとかって思ったりはしますけど、それでも、これで行くんです!って言われたらそれで行きましょうってなりますね。

あとよくあるのが、バンドマンが言う、『今回寄せたわ~』っていうのあるじゃないですか。凄いポップに寄せました!みたいなっていうの大体寄ってないっていう。
やっぱりバンドだったりアーティストが思うのと、売る側から考えるとやっぱズレはあるんで、その辺りは僕らだったり周りの人間の話とか意見とかも聞いてもらいつつやれると、自分の場所が細かくわかるヒントになるかもしれないなと思います。
 
ー平井ー
何か曲を寄せたりビジュアル寄せたりもあると思うんですけど、寄せるコツってありますかね?
 
ー小山ー
自分のアイデンティティが完全になくなっちゃうような感じだと、それまでのファンもだし、その1曲で広がったり聞いてくれる人が多少増えたとしても、もう一歩踏み込んだときに、あれ?このバンド普段は全然違う音楽やってる人たちじゃん!みたいになるとファンにちゃんとなってもらえるのかどうか不安なところではあるんですよね。
ある程度自分の軸があった上で、どこまで寄せるかみたいな。
 
ー平井ー
寄せるのと見失うのは違うぞと。
上手なバンドはやっぱり上手に新しい事に挑戦しますよね。
 
ー小山ー
なんかぱっと聞いても全然ポップなんだけど、でもちゃんと聞くと凄いことやってんな...みたいなことだったりとか、そういうのは逆に深みにもなって面白いなとは思うんですけどね。
 
ー平井ー
これももしお話いただける範囲で聞きたいんですけど、こんな成功例とか、面白い例があったというお話は何かありますか?
流通会社の人が関わった中での、その立ち位置の中での成功例というか。

リリース前から巻き込んだミセス

ー小山ー
Mrs. GREEN APPLE を最初インディーズで出すっていうときに、僕がタワーレコードの新宿店を担当していて、凄く長い担当のお店の方がいたんですけどさっき言ったようにミセスこれはいけそうだぞ!っていうところから、うちの先輩と一緒にいろんな人をリリースする前から巻き込もうとなって。

新宿の担当の方にもリリース前から音源とか聞いてもらったり、ライブ見てもらったりして乗ってくれたっていうのもあるんですけど、CD をちゃんとリリースする前に知名度を上げていくためにもフリーサンプラーを巻きましょうと。

大体フリーサンプラーとかはコーナーがあって、そこに置いてもらったりとか近しいアーティストの展開の所に一緒に置いてもらったりとか、ちっちゃい POP とか手書き POP 書いてもらって、予約お願いします!みたいなのが基本だったりはするんですけど、そのときはもうそのフリーサンプラーで看板も作ってもらって、展開をすごいやってもらったんですよ。

結構な枚数あったサンプラーもやっぱ速攻でなくなり、追加追加で持ってってみたいな状況で、ミセスを知らない人たちも結構持ってってくれたりするっていうとこだったので。

その後に CD をリリースときに、しっかり持ってってくれた人たちが好きになってくれて、初動も結構良かったんです。

巻き込む人をちゃんと巻き込めて、普通だとやらないような展開をやってそれがちゃんと結果に繋がったなっていうのはあったんで、あれはやってて楽しかったです。
結構いろいろ交渉もたくさんあったので、リリースしたときに平台も大きく作って、いい感じに売れててみたいなときは、頑張ってよかったなと感じました。

結構本当にそんなことが起きるんですよ。僕らの提案だったりとかお店さんからアイディア出てくることももちろんありますし、それを僕らが引き出すっていうのも仕事ですけど、それを形にちゃんとしていく。
 
ー平井ー
レーベルとかって、もうちょっとプロモーションをマスメディアで仕掛けるイメージがあるじゃないですか。テレビだラジオだっていう。
やっぱりこうお話を聞いてると仕掛け方が流通会社っぽいと感じますね。
 
ー小山ー
そうですね、アナログですし大変な事も多いですけど、それが凄く楽しいところでもあります。 

たくさん売りたいです!とか、たくさんラジオ出たいです!って言われると結構困っちゃう

ー平井ー
では、最後にお伺いしたんですが、今活動しているインディーズのバンドマンが小山さん、PCIの方と知り合った時にどんな関わり方が相談できるんでしょうか?

お話の冒頭でもありましたが、多分みんなPCI って聞いても、 PCI って何?流通会社って何?って始まって、名刺いただいても、どんなことを協力していただけるのか、一緒にできるのかってのが全く想像がつかない人達が多い中で、どう関わって、どう相談したらいいのかっていうのを教えてください。
 
ー小山ー
お話してきた通り、流通・ディストリビューターなので、まず音源のリリースをしていただくっていうのが一番ではあるんですけど、その音源を広げたいって思っているアーティストさんがいれば、そこはいろんな方法でお手伝いができるっていうのが基本になると思います。

CD で出すにしろ配信で出すにしろ、規模に応じて色々なやり方が提案出来ます。

最近CDだと、一部の店舗限定という形で、東京の基幹店だけ置きますとか、地元のお店だけ置きますみたいなことをまずやってみるっていうのもあります。
あとは配信のリリースとかはCDのリリースと全然タイム感が違ってきたりするんで、リリース計画も一緒に相談していって、こういうふうにしていったらいいんじゃないか、みたいな話をすることだったりとか。

ざっくりで、たくさん売りたいです!とか、たくさんラジオ出たいです!って言われると結構困っちゃうところがあるんですけど、なんか自分らこういうテイストで、例えばこういうアーティストみたいになりたいんですよねとか、そういう方向性を示してもらえると。

それに対してそれだったらここ行ったらいいね!とか、こういうプロモーションしたらいいね!みたいな話だったりとかができるので、リリースをちゃんと広げたいって思ってくれていて、ある程度自分たちの方向性っていうのを僕らに伝えてくれれば、そっからの肉付けはうちらが何かやりますよみたいなことはできるかなっていう。

あくまでレーベルではないので、アーティストさんのブースター的な立ち位置です。
アーティストさんがいて、いいライブをしていて、いい曲を作っていて、それをブーストする感じです。基本はアーティストさんありきの仕事だったと思うんで、そこを見せてくれればいいと思います。
 
文=TAKAI
企画・監修=大井勇/テディ(エルブリード)



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