会社の同僚とルソーを読んでみた ― 哲学書読書会で見つけた新しい自分
今回は8月に会社の同僚と行った哲学書の読書会の内容を振り返っていきたいと思います。
はじめに
読書会を始めたきっかけ
レクリエーションに近いような形で複数人で本を持ち寄り紹介する読書会は既に何回か実施していたのですが、広く浅くという感じが否めませんでした。そんな中で人文系に関心のある3人が集まり、1冊の本について深掘りするような読書会を企画したのがきっかけでした。
読書会の概要
まずは、読む本を選ぶ前に読書会のチームとしての目標を設定しました。大まかに言えば、「今の自分とは何かしら違う自分になっていること」を目標に読書会を行って行くことを目標にしました。
その次に各自興味のある本かつ目標に添えれそうな本を持ち寄りプレゼンをして多数決の様な形で読む本を決めました。課題本はルソーの『社会契約論』の第四篇を読むことに決めました。
最初の読書会ということもあり、長さ的に読破できそうなものということでお試しの意味もありました。
会の実施に向けては2週間ほど各自で読む時間と読書メモを作成する時間を取りました。その後、定時後や昼休みを使って1章ずつぐらいを目安に計5回読書会を実施し、『社会契約論』の第四篇を読み切りました。
読書会前の自分・読書会での学び
私自身、1冊の本を読む外部の読書会には何度か参加したことがあったのですが、その会はいずれも講師のようなポジションの方がいてくださり、本を読んではいくものの資料などの準備は必要ない会でした。
今回の読書会は自分たちで企画していることもあり、初回以外は毎回担当を決めてその人がファシリテーターとなって会を回す形式にしました。資料を準備する必要まではないものの、その章の要約や気づき・疑問点などを事前にまとめる必要があり、今までの読書とは違う本との向き合い方ができた気がします。
また、準備のために一度読んだ部分を再読したり、読書会で他の人の読み方や意見を聞いた後で本文を再び読むことで再読の効果が高まったと感じました。これは一人の読書では得られなかった体験でした。
今回課題本に選んだルソーの『社会契約論』は他の人が推薦した本だったので、今までの自分学習してこなかった概念や考え方を色々と学ぶことができました。ルソーに触れるのははじめてだったので、ルソーについての入門書や関連本も何冊か手に取ってみたのですが、今まで知らなかった啓蒙思想や近代民主主義の形成の流れがしれて自分の視野が広がりました。これは単純かもしれませんが大きい効果だったと思います。
読書に対する向き合い方の変化
繋がりを意識しながら読む
繰り返しになりますが、準備または単純な興味本位でルソーに関連する本を色々と読み漁ったことで繋がりを意識した読書をすることができました。特に「一般意志」という概念については、東浩紀が『一般意志2.0』から『訂正可能性の哲学』で展開している理論にダイレクトに関連しており理解を深めるきっかけになりました。
アウトプット共有の価値
複数人で1冊の本を読むという経験を通じて自分が読んで感じたことや疑問点を共有したり、自分の読み方と他人の読み方を比較することで多角的な視点を得ることができ、アウトプットの共有の価値の高さを感じました。
自分の理解を確認したり、俯瞰することで新たな気づきを得ることができるので、今後も気になった本については読書メモを作って記事にできたらいいなと思いました。
読書会がもたらした具体的な変化
読書量が増えた?
元々哲学に関連する本を集めるのは好きだったのですが、著者ベースで集めているのがほとんどでその著者の思想ベースでは集められているものの、思想史的には偏った集め方をしていたと思います。
今回ルソーを読むにあたって「社会契約説」だったり「一般意志」といった概念について論じている色々な著者の本に触れることができ、読書の幅が広がった気がします。
また、読書会という目的ができたことで強制的に読む機会が増え、読書量が増えた気がします。目的を持って読書することで読むことに対して積極的に向き合えて気がしました。
今後の読書計画
今回の読書会でルソーを読んだことをきっかけにして個人的には東浩紀の思想を追う興味が湧いてきました。「一般意志」という概念を現代の情報環境に合わせてどう考えていくのかということに興味が湧き、色々と関連本を漁っています。
おわりに
この哲学書読書会は、私にとって単なる本の理解を超えた貴重な経験となりました。ルソーの『社会契約論』を通じて、私たちは古典的な政治哲学の世界に足を踏み入れ、そこから現代の思想へと橋を架ける知的冒険を経験しました。
読書会を始めた当初の目標であった「今の自分とは何かしら違う自分になっていること」は、確実に達成できたと感じています。本との向き合い方、思考の深め方、そして他者との対話を通じての学びの重要性を、身をもって体験することができました。
特に、「一般意志」という概念をめぐる議論は、古典から現代へと思想の流れを追う契機となり、東浩紀の著作にまで関心を広げる大きなきっかけとなりました。この経験は、一冊の本が持つ力、そして共に読み、議論することの価値を改めて教えてくれました。
今後も、この読書会で培った批判的思考力と多角的な視点を大切にしながら、さらに幅広いテーマや著者の作品に挑戦していきたいと思います。そして、得られた知見を単に個人の中に留めるのではなく、外部に還元していくことで、この学びの輪をさらに広げていければと考えています。