毛布にくるまれた僕は、「ゆたかさ」の四文字を通過する。
「ゆたかさ」について、あたたかい毛布にくるまれながら考えてみた。
年をとるにつれて、自分の中の「ゆたかさ」の定義も変化しているに違いない。
ちっちゃなスマホの画面が灯る部屋の隅で、長かったような短かったような、28年間のタイムトンネルを、ゆっくりと歩く。
小学生の頃ーー。
毎日、必ずご飯が用意されていた。
トーストの匂いがすれば、トーストが出てきた。
スイートポテトの匂いがすれば、スイートポテトが出てきた。
カレーの匂いがすれば、カレーが出てきた。
当たり前のことだが