【ストリートバー開業記⑦:結果】売上・利益も全公開!飲食店"nephew"の企画から結果までを振り返る
こんにちは。井澤卓です。
仲間とデザイン会社を経営しながら、会社のメンバーで飲食店"LOBBY"と"nephew"を経営しています。
このnoteは、僕達が2021年4月にオープンした新店舗"nephew"を立ち上げるに当たり、構想段階から作り上げる過程を書き連ねるシリーズです。
第一章〜第六章はこちらをご覧ください。
新店舗の企画段階から1年書き連ねてきたこのシリーズも今回が最終章。
第七章では、nephewの営業結果について。
当初のコンセプト、事業計画は達成できているのか。どんな課題があったのか。経営はうまく行っているのか。
2021年を振り返り、nephewの経営状況を包み隠さず公開します。
1.新規出店のきっかけ
本題に入る前に、まずはこれまでのおさらいから。
nephewというお店について簡単に説明させてください。
nephewは、代々木公園徒歩2分の立地にある"カフェ & ストリートバー"。
ストリートバーという、1号店のLOBBYで称していた夜の業態に加え、昼帯のカフェ営業を実施するお店です。
デザイン会社をメイン事業とする僕達が、2021年4月にオープンしました。
出店の大きな目的は、「自分達が作れる空間のショーケース」を増やすこと。
「将来的に空間を出発点にしたトータルプロデュース業を主軸にしたい」という目標に基づき、自社で出店することで空間実績を増やしています。
そんな新規出店理由の詳細は第一章のnoteにまとめられています。
気になる方はこちらも是非チェックしてください。
2. 新店企画時の収支計画
1号店のLOBBYはバー営業のみ実施するお店。
基本的にはお酒が好きな人しか来ないし、路地裏にあることもあり間口が狭く、広く認知を得ることは難しい。
そんな背景から、2号店のnephewでは、より幅広い人々が利用できる業態を設けるべきと考え、カフェ営業も取り組むことにしました。
とはいえ当時はカフェ経営の知見は全くない状態。
今見返すと、かなり弱気な収支計画を立てていました。
こちらが当時の計画です。
<物件条件>
立地:代々木公園駅徒歩2分(裏通りの立地)
建物:戸建て
広さ:71.19㎡ / 21.53坪 (2階建て)
家賃:¥407,000
坪単価(事業面積あたり):¥18,903
初期投資金額:1,900万円
回収目標期間:3年
<業態>
営業日:週5
営業時間:
-カフェ(コーヒーと焼き菓子):10時〜17時
-バー:19時〜1時
<目標数値>
・月間売上:¥2,665,000
−カフェ:¥615,000
−バー:¥2,050,000
実際は、初期投資の金額も、月間売上も、意味を成さない程乖離がある結果になりました。笑
本当に計画って当てにならないものですが、全ての意思決定は計画をベースに行われるので、やはり可能な限り詳細になければならないもの。
そんな事業計画の詳細は第二章でまとめています。こちらも良ければ。
立ち上げには、当初掲げていた初期投資金額1,900万円に対し、終わってみると2,850万円かかってしまいました。
その上振れ額、950万円。
この時点で売上目標の大きな修正が迫られます。
開業資金の詳細は、こちらのnoteに公開しています。
3. 全て公開!nephewのリアルな経営状況
前提を簡単に振り返った上で、早速ここから実際の営業結果を書いていきます。
結論だけ先に書くと、全体を通して当初の計画を大きく上回る結果を残すことが出来ました。
まずは全体売上のレビューです。
■売上レビュー
全体売上(4月〜12月):¥39,968,275
平均売上 / 月(6月〜12月):¥5,709,754
平均売上 / 日(6月〜12月):¥237,906
■利益レビュー
全体利益(4月〜12月):¥7,841,308
平均利益 / 月(6月〜12月):¥1,287,027
平均利益 / 日(6月〜12月):¥53,626 ※24営業日想定
※月々の回収金額¥791,200を差し引いた利益額
■その他実績
instagram フォロワー:9,400 (2022年1月時点)
平均売上は、通常営業を実施した6月〜12月の期間の平均を出しています。
オープンは4/20。そしてその4日後に緊急事態宣言となりバー営業が実施できなくなる前途多難なスタートでした。
そのため、4月、5月は通し営業とし、営業時間は20時まで。
夜17時〜20時はモクテルバーとして、モクテル(ノンアルコールカクテル)を提供するスタイルで運営しました。
コロナ真っ只中で、夜は殆どお客様が来ない苦しい時期でした...。
▼売上推移
6月からはフル営業を再開し、そこからの月の平均売上は¥5,709,754。
計画時に掲げていた¥2,665,000円に対し、2倍以上の結果となりました!
時期により差がありつつも、10月は約700万円の売上に達する等、開店直後から大きく成長を続けています。
ここまで計画を上回る結果を出せた要因として、「カフェの爆発」が大きいです。
業態別の売上高は、カフェが54.6%とトップとなっています。
前述したように、当初カフェは認知獲得のための業態としてスタートしました。
一般的に、カフェは単価が安いのは周知の事実。
元々既存店のLOBBYで一時的にカフェ営業を行った際も1日平均2万円弱の売上だったため、nephewでも同じくらいだろうと考えていました。
そんなカフェが予想を上回る大盛況となり、今では売上を引っ張る業態となっています。
4. カフェタイムの売上実績
結果の要因を詳細に説明していくために、ここからは、カフェとバーを切り分けて各数字を見ていきます。
まずはカフェの売上と各種数字です。
■全体売上レビュー
全体売上(6月〜12月):¥21,821,555
平均売上 / 月(6月〜12月):¥3,117,365
平均売上 / 日(6月〜12月):¥138,549
平均来店客数 / 日:101名
平均客単価:¥1,294
スタッフ数:平日3名・週末4名
月の売上は平均¥3,117,365。カフェの当初の月額売上目標は¥615,000だったことを考えると、実に5倍以上の結果に。(61万円は弱気すぎでしたが...笑)
1日7時間のカフェ営業(ランチ無し)で1日¥138,549円の平均売上はとても立派です。
数字を見ると、来客数と平均客単価の結果がカフェにしては高いことがわかります。
ではなぜそれが実現できたのか。
要因は以下の3つです。
要因①:カフェというより焼き菓子屋の認知
要因②:周辺に人気焼き菓子屋やカフェが点在しており、お店巡りが盛んな立地
要因③:オリジナルグッズやコーヒー豆が一定の人気を得ている
それぞれ詳細に要因を見ていきます。
要因①:カフェというより焼き菓子屋の認知
ランチをやっていないnephewでは、普通に考えれば客単価1,000円を超えるのは至難の業です。
当初僕達も、「カフェでは必ずしもお菓子を頼むわけではないので、多くのお客様が客単価500円程度になる」と思っていました。
ただ、nephewではほぼすべてのお客様が焼き菓子もオーダーしてくれるため、1,000円を超えるのが当たり前になっています。
これは、早い段階で「カフェというより焼き菓子屋の認知」を得ることが出来たのが大きかったです。
どの世代にも、そして各SNSにおいてもグルメ系アカウントが人気あるように、焼き菓子にも熱狂的なマーケットが存在します。
最近では、スコーン専門、キャロットケーキ専門、チーズケーキ専門等、マイクロニッチな専門アカウントも多数見られるようになっています。
nephewでは開店当初からカフェマネージャーのケイミが作る焼き菓子を1番の特徴として打ち出しており、すぐにこの層に拡散されたことで、早期に焼き菓子屋としての認知を得ることが出来ました。
焼き菓子が広がったおかげでInstagramのフォロワーも一気に伸び、現在1万人を目前にしています。
2年前に出来た1号店のLOBBYも抜かれてしまいました。やはりカフェ業態の拡散のスピードはバー業態の比ではありませんね。
(一方、認知ばかりが先を行くことの弊害もありました。この点は悩みの一つでもあるので、また別の機会に書いてみようと思います。)
加えて、店頭のメンバーが焼き菓子へのトッピング提案を行うことにより、更に客単価が上がっています。
要因②:周辺に人気焼き菓子屋やカフェが点在しており、お店巡りが盛んな立地
2つ目に、代々木八幡というエリアの特徴も後押ししてくれました。
隣接する代々木上原エリア、松濤エリアをまとめると、人気焼き菓子やカフェが非常に多く点在しています。
オープン前にカフェ巡り系YouTubeを見漁ってリサーチをしていた時に、カフェ巡りをする人々は皆大体同じルートでお店を回るという事実に気づきました。
「このエリアにお店を作れば、そのルートの中に入れることができるだろう」と考えていたので、この点は想定通りでした。
「カフェ巡り」はある種、「ディズニーランドに行く」のに近いイベント的な所があると思っています。
少し遠方から複数のお店を回ることを目的に街を訪れるので、満席でも待ってくれるし、せっかく来たからと焼き菓子も頼んでくれます。
nephewのカフェタイムの売上が安定して高いのは、周辺のお店の存在のおかげで、街として目的地になっていることに恩恵を受けています。
カフェだけでビジネスを成り立たせようと考える場合、どこに開業するかは重要なポイントになりそうです。
要因③:オリジナルグッズが一定の人気を得ている
これは1号店のLOBBYから継続する自分達の強みの一つ。
デザイン会社だからこそできる内製のグラフィックグッズを継続的に展開しており、月平均で15.5万円の売上があります。
12月はグッズ売上のみで30万円を超えるなど、インパクトは大きいです。
グッズは夜よりもお昼の方が売れるというのは、LOBBYでも実証出来ていたので、これも戦略通り機能した形です。
お店とかホテルのグッズって、なんとなく買ってしまいますよね。
イベント的に遠出すると、その時間を楽しみたかったり、振り返りたくて、ついついグッズにも手が伸びてしまう。
これもディズニーランドに行く感覚に近いのかもしれません。
オリジナルグッズは、その日そのお店でしか買えない物。
少し遠方からイベント的に訪れる人は、グッズを買うこともそのイベントの一部なのだと思います。
以上、それぞれの要因を解説してきました。
ただ、一番大事なのはこれを日々実行してきた店頭のメンバー達です。
マネージャーを筆頭に、チーム全体で試行錯誤を続け、日々改善を繰り返した結果が数字に表れています。
nephewのカフェチームを見てると、LOBBYで自分達がおろそかにしてしまっている部分が浮き彫りになり、反省します。
お客様への説明方法や提案方法、物販棚の並び替え、商品開発の修正等、考えることから逃げずに実行し続ける姿勢に、僕自身も頭が上がりません。
上図の推移を見れば分かる通り、カフェチームの売上水準は開店当初から急激に伸びています。
各メンバーが日々突き詰めてアクションを繰り返していることが結果に繋がっているので、常に考え施策を続けるマインドを作り上げてくれたことも大きな成功要因だと実感しています。
5. バータイムの売上実績
次に、バータイムの売上実績を見ていきます。
各種数字は以下の通りです。
■全体売上レビュー
全体売上(6月〜12月):¥17,636,970
平均売上 / 月(6月〜12月):¥2,519,567
平均売上 / 日(6月〜12月):¥115,274
平均来店客数 / 日:37名
平均客単価:¥3,170
スタッフ数:平日3名・週末4名
月の売上は¥2,519,567、1日平均¥115,274と、こちらも当初の計画を超えることが出来ました。
カフェと比較すると低いですが、決して悪い数字ではありません。
やはりバータイムは平均単価が¥3,170と高いですね。
LOBBYの平均単価が約¥2,500なので、nephewはバーとしても良い数字を残していると言えます。
客単価が高いのは、エリア柄お酒をよく飲む常連様に恵まれていることと、思ったよりもフードが良く出ることが影響しています。
▲夜の人気メニュー、自家製フムスとカンパーニュ
フードは徐々に拡充していき、現在は前菜やおつまみ系からお肉料理まで13品がラインナップ。
フード売上は全体の20%を占めています。
確かに昼の賑わいに対し、夜は人が極端に減るエリアなので、早い時間帯のフード需要を満たすことで今後の売上の向上が見込めそうです。
バータイムの売上推移は、山あり谷ありという形。
7月が最高となりその後上回れなかったのは少し残念ですが、夜の方がコロナの影響を色濃く受ける部分もあるので、我慢の日々も多い1年目でした。
これを書いている1月現在も、まん延防止等重点措置で夜の営業ができなくなってしまいました。
(nephewの夜は2022年1月末現在営業を停止しています。)
バータイムに関しては、今年もコロナと向き合いながら、変化にチャレンジし続ける必要がありそうです。
6.副次的な売上や効果
LOBBYもnephewも、出店の主目的は「空間事例を作り、デザインの受注案件や、会社としての認知を伸ばす」こと。
この点は1年目からかなり機能しました。
まず、グラフィックや内装設計等、nephewをきっかけにデザイン制作の依頼が継続的に発生。
更に、各巨大デベロッパーから施設への出店依頼を多数頂きました。
現在会社として商業施設へ出店する意向はないためお断りしていますが、オファーをもらえるほど認知され、自分達の取り組みを認めてもらえたことは大きな成長です。
また、焼き菓子メニューの開発という新たな案件が生まれたりと、店舗に依存しない売上の芽も作ることができました。
こういった領域は、飲食チームの活躍の場を増やすことに繋がるので、今後精力的に取り組んでいきたいと思っています。
まとめ:自分が立たない現場。任せることでチームの成長を感じた1年。
以上、nephewの1年目について振り返りました。
コロナに見舞われる中でも、結果としては大きく計画を超え、大成功と言える立ち上がりになったと思います。
このペースで行けば、3年回収予定の初期投資金額も、1年数ヶ月で回収できそうです。
会社としてはもちろん、僕個人としても、nephewの立ち上げと運営は新たな成長機会になっています。
nephewの運営で一番特筆すべきことは、「自分達が現場に立っていない」ことです。
LOBBYでは、僕と役員の倉嶋、デザイナーの土堤内が未だに現場に立っているので、都度必要な打ち手とその優先順位が理解出来ます。
でもnephewでは物理的な距離もあるので、現場で何が起きているかを把握し切ることは出来ません。
必然的に、日々の運営は全て現場に任せる形になります。
マネージャー陣も初めての経験ばかりで、立ち上げ当初は皆で四苦八苦しました。
そんなお店も8ヶ月が立った今では力強く自走し、日々現場に立つメンバー同士が意見を交換し合い、新しい施策にもどんどんチャレンジしてくれています。
カフェもバーも、実際にLOBBYよりも売上が高いので、現場で働いてくれているメンバーが日々奮闘してくれているおかげだと実感しています。
経営者の仕事はメンバーが輝くステージを作ることでもあるので、その意味でも場作りが上手く行っていることは、組織としての自信に繋がっています。
もちろんまだまだ出来ていないこともあるので、これからもっと成長していき、10年を超えて地域に根づくお店にしていきたいと思います。
▲目標としていた建築の業界誌、商店建築にも載ることができました!
以上、企画段階から1年間このnoteを書いてきました。
第一章から読んでくださった方には、計画と結果がいかに伴わないか、よくわかる内容だったと思います。笑
一方、当初掲げた戦略はガシッとハマったので、やはり事前に綿密な計画を建てることはとても大事だと実感しました。
2022年は、更に会社として新たな挑戦を計画しています。
今回もまた面白い企画になるはずなので、是非楽しみにしていてください。
もしnephewの内容で読んでくださる皆様が気になることがあればそれも書いてみたいと思っているので、フィードバックあれば是非教えて下さい!
僕自身は最近LOBBYを中心に、たまにnephewにも立っているのでお時間あれば是非店頭にも遊びに来て頂けると嬉しいです。
InstagramやTwitterでも発信しています。こちらも是非!
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