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【アノマリー 異常】(ネタバレあり)こんな記事は読まないで、すぐに本作を注文して読んでほしい

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆


〜気になる人はすぐに本作を購入すべし〜

さて、随分と乱暴なサブタイトルと見出しをつけさせていただいたが、本心からそう考えている。

本作は、前情報一切無しで、出来ればこういう記事であらすじさえも知らずに読むべきだ。

僕は別の記事でこういう文言を見て、前情報を一切入れずに読むことした。本当にそうして良かったと思う。

読み終えてから、あまりにも面白すぎてこの作品に関する記事を書きたくなるのはよくわかる。それだけ、知的興奮が刺激される作品なのだ。しかし、そこはグッと我慢して、ぜひ「アノマリー 異常 小説」なんて検索はやめて、先にこの本を開いて欲しい。

ゲームプロデューサーの小島秀夫さんが、本書の第1章を終えたところで、「あまりの驚きに本を落としてしまった」とおっしゃっていたのだが、誇張ではないことがわかる。
同じ驚きと興奮を味わうためにも、まっさらな状態で読み始めて欲しい。




※以下、ネタバレ






〜(ここからネタバレ)〜

さて、本作は3部構成になっており、大まかに以下のような内容になっている。

第1章 人物紹介パート
第2章 「この異常事態にどう対応すればいいのか!?」パート
第3章 ダブル(重複者)との対面パート

この第1章が登場人物の多さもありなかなか退屈なのだが、この章が終盤に向けて大きなフックとなっていく。第1章の終わりで、全く同じ飛行機が3カ月の時を経て2台到着する、という衝撃的な展開を見せて誰もが驚くだろう。

個人的に好きなのが第2章だ。
同じ人間が2人いる、という異常事態に国を挙げてどう対応すべきかを検討する。
科学者、宗教家、哲学者など様々な分野の人々がそれぞれの見解をぶつけ合う様は、コントのようだ。
最終的に国の方針としてダブル同士を引き合わせる、という結論になるのは意外だった。
(マクロンや習近平が実名で出ているのに、アメリカ大統領だけ名前が伏せられている ーモデルは明らかにトランプー のは、個人的にはこのストーリーの流れにするために邪魔になったんじゃないかと思う。
(トランプなら「秘密裏にコピーを全部殺してしまえ!」なんて言いかねないイメージだから(笑))

そして、第3章。
単純にもう1人の自分が出現する、というだけでなく3ヶ月の時間のズレがある、というのがこの小説の大きなミソである。

3月に着陸したエールフランス(以下、マーチ飛行機)の乗客たちが、6月にエールフランス(以下、ジューン飛行機)が着陸するまでの間に、その搭乗者たちが人生の分岐とも言える出来事に出会っているのである。
3〜6月の間に、恋人と別れた者、世界的に有名になった者、自殺した者、自分では考えられない決断をしたもの、妊娠した者、などなど、様々な分岐点があった。

ジューン飛行機の乗客たちは、その期間のことを知らないので、3〜6月の間に自分の予想していなかった人生を送っているマーチ飛行機の自分を知ることで、自分を見つめ直す。
非常に面白い設定だと思う。

特に僕が気に入っているのが、アンドレのエピソードである。
年老いた男が若い女性に恋をするのだが、恋をしている間は自分の老いや欲望で目が眩んでいることなどに気付けていない。すでに失恋しているマーチ飛行機のアンドレは過去の自分を見てなんとも表現し難いモヤモヤした気持ちになっているのだろう。
異性への愛を込めたメールを後で見返したときに、恥ずかしさや後悔で落ち込んでしまう心情をこんな壮大な物語の中で表現しているのが、素晴らしい(笑)


巧みなストーリーテリングと著者の多大な知性が相まって、読み応えのある重厚な一作となっている。
SF、スリラー、文学、様々な要素を持ち、かつエンターテイメントとしても楽しめる傑作。
ここまで完成度の高い小説にはしばらく出会えないと思う。

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