国立大学の学部増設の形態 金沢大
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学部増設の経緯
金沢大学は、新制大学成立時点は、他の大学と同様に法文学部、教育学部、理学部、医学部、薬学部、工学部という、母体となった旧制大学・学校を基礎とした学部を設立しています。昭和55年に法文学部の法学部門、経済学部門、その他の部門を分離して、法学部、経済学部、文学部を設置します。ここまでは普通の国立総合大学の動きです。
学部の解体!
21世紀に入ってから、金沢大学では他の大学とは根本的に違った大学の在り方を模索する事になります。単純に学部を増設していくという方策ではない、大学の拡充の方法です。そして平成20年に、今までの学部を解体して、人間社会学域と理工学域、 医薬保健学域という3つのまとまりに再編して、それぞれの学域内に以前の学部にあたる様な学類という単位を設けて、そこを教育の 基本単位としました。
人間社会学域については、人文学類、法学類、経済学類、学校教育学類、地域創造学類、国際学類の6学類
理工学域については、数物科学類,物質化学類,機械工学類,電子情報学類,環境デザイン学類,自然システム学類の6学類
医薬保険学域については、医学類,薬学類,創薬科学類,保健学類の4学類
学域・学類の実際の運用
入学単位は学部の様に、学類で募集します。1年間の基礎教育の後に、入学時に所属が固定される医学類などの一部の学類以外は、自身の興味に合わせて学類内のコースに分属します。また、主専攻とするコース以外に、同じ学類内や他学域の学類のコースを副専攻とする事が出来ます。また、転学類の制度も整備されていて、学部制度と比較して、フラットな制度を有効に活用しています。
こういう改変を行なうと、研究組織と教育組織をよく言えば分離、悪く言えば分断するケースが多いですが、金沢大学のケースでは、3大学域に対応して3大研究域に研究組織を集約したうえで、教育単位の学類に対応した学系に再編していて、学部時代の研究と教育の連関を出来るだけ維持するなど、他大学でのドラスティックな改革による弊害などに学習して、制度を構築している感じを受けます。
進化する金沢大学
令和3年度に、現在の学域とは別に、文理融合の学域として融合学域を設置しています。今回融合学域に設置された先導学類は、他大学での国際教養学部的な位置づけの様ですが、そもそもの組織がフラットだったので、比較的設置が易しかったのかと思います。この学域を活用して、新規の学術分野に対応した学類が今後設置されていく事かと思います。進化に対応して今後の発展が楽しみな大学の一つです。
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