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「痛み」について、フェルデンクライス・メソッドと認知行動療法

介護予防センターというところで働いていて、そこには慢性的な「痛み」を抱えて不自由な日常生活を送っている人が結構いて、そういう方たちに指導しています。

「痛み」は害になるものを回避するためだったり、傷ついたところを無理して使わないで休めておくために大事な感覚です。
でも、都合のいいことばかりではなく「痛みを学習してしまう」という面も大事なことだと思います。

「特定の痛み」を回避する体の使い方が学習され習慣となってしまい、傷が癒えて動かせるはずのことができなくなってしまう。逆にその動きをしようとするだけで「痛み」を感じてしまったりします。

認知行動療法では次のように説明されています。

慢性疼痛は右に⽰す悪循環慢性疼痛の悪循環によって⽰すことができます。 痛みがあるせいで、ネガティブな認知が⽣まれ、嫌悪感や不快感など、気分も落ちていきます。 体は筋緊張がおこり、そうなることでますます⾏動を制限する傾向がうまれます。 ⾏動が制限されることにより ⼀⼈で考え込む時間もふえ、さらにネガティブな認知や気分が⽣じてくる、という悪循環がうまれます。認知⾏動療法ではこの悪循環を良循環にかえ、痛みをコントロールすることを⽬指します。

慢性疼痛の認知⾏動療法 (低強度マニュアル)千葉大学大学院医学研究院

フェルデンクライス・メソッドの指導者の立場としては、もっと細かな、個々の動作についてアプローチしていきますが、基本的には同じことを目指していると考えています、

フェルデンクライス・メソッドの具体的戦略としては、「動きをいつもと違ったやり方でやる」「動きを、痛みや違和感を感じない範囲だけで、つまり小さな動きで再学習する」「その動き自体は安全で問題なくできるものだと安心してもらう」ということをやって「動ける自由を学習してもらう」のだととらえています。

「痛みのない範囲で動く」ということをクライアント自身が探索できると、驚くほど自由な動きを手に入れることができたりするんですよね。その探索はなかなか一人では難しいので、指導者(プラクティショナー)が安全を確保しつつ手伝っていくことになります。

まず、「痛み」は大事な感覚ですが、だから「痛くても我慢すべき」ということでは決してなくて、「これ以上行くのは嫌だ」という体のサインだからそれ以上行かないことが大事、つまり我慢するのはよくないわけです。

ただし、「これ以上行くのは嫌だ」は単なる体の記憶だったり体の思い込みのことも多く、それが過剰な反応として動きを制限し、かえって無理な動きをすることになり、それが新たな痛みを引き起こしていることも多いんですね。認知行動療法でも説明されている「悪循環」です。

なので「絶対痛いことはしないから、どんな動きがどこまでできるのか、体に聞いていきましょう」という探索を一緒にやります。痛みを感じているクライアント自身は「いつもはやっていない動きのパターン」があることに気づいていないし、「動かせない」と思っている方向も少しだけなら痛みなくできて、実は「その方向の動き自体はできる」ということにも気づいていないので、それに気づけるようにお手伝いが必要なわけです。

そうして「痛みなくできた動き」を体が認識してくれれば、体は安心して動いてくれるようになります。

このように細心の注意を払って「安全・安心」を確保して「できることを見つける」お手伝いをするわけですが、「痛み止め(薬)で痛みを忘れてもらう」だけで上手く動けるようになってしまうことも多いんだと思います。

「痛み」は大事な感覚だけど(だからこそ)感じないようにした方がいい
なかなか面倒ですね。

https://ameblo.jp/taknuno55/entry-12491718932.html

13年ほど前に似たようなテーマで書いたものがあったので、貼り付けておこうと思います。

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