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『AIにできること、できないこと』感想メモ
藤本 浩司、柴原一友『AIにできること、できないこと---ビジネス社会を生きていくための4つの力』の感想メモ
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私はAIの最先端を追って、いくらかAI研究もしています。
AIを学習させて何かをさせたり、ゼロからAIのプログラムを組んだこともあります。
今回の感想メモはそういった人が思ったことを書いています。
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コンピュータが発展すると、様々な仕事が奪われると揶揄された時期があったが、
それと同様に、私はAIが人間の仕事を奪うということに納得はしなかった。
本著では、どうしてAIが仕事を奪わないのかを「知性」を明確に定義し、AIの仕組みを元に探っているため、素人感も無く、分かりやすかった。
シンギュラリティが近々来るだろうと思っている人は、ぜひとも読んでおきたい本だと思った。
知性の4つの構成要素
本著ではまずAIの説明をした後に、「知性」とはなにかを定義している。
「知性」とは課題を解決するための能力のことで、
・動機:解決すべき課題を定める力
・目標設計:何が正解かを定める力
・思考集中:考えるべきことを捉える力
・発見:正解へとつながる要素を見つける力
とした。
そもそもAIは、人間が用意した問題と正解のペアを渡してAIに学習させていくものなので、「動機」は持ち合わせていない。
同じ理由で、何が正解かも人間が与えているので、「目標設計」はない。
そして、考えるべきことを捉える力は、人間の力によるところが大きく、「思考集中」は得意ではない。
正解へとつながる要素を見つける力は、AIの得意分野としていることろではあるが、
コンピュータ特有の計算力で量をカバーしているにすぎないのである。
以上が本著の「知性」とAIのまとめである。
AIの研究をしてみると、AIは結局は数学と計算なんだなと思う。
AIの本質的な部分というのは、問題と正解のペアを(コンピュータで扱える)数字を入力として、学習している計算に過ぎない。
「動機」「目標設計」を「知性」として捉えることで、人間が設計していない行動をしたり、暴走したりなどは起こらないのだと理解できる。
AIは人間の仕事を奪うのか
AIの本質的な部分は計算で、計算の中身は人間にとって理解できるものではない。
AIが大量の学習から結果を導き出したとしても、どうしてその答えを出したのか、人間には理解できないのである。
人間とは異なった思考回路をしているために、自動運転のようなAIへの転用は簡単ではなく、
人間の作業をAIが補助するという使い方が今後しばらく続くと思われる。
また、先に説明したように「動機」「目標設計」は今の技術では実現できない。
「発見」のところでAIが活躍したとしても、
与えられた課題をどう解決するか、ではなく、
何が課題かを見つけ出す力、を持つことで、仕事が奪われることはない。
しかし、今の学校教育は「与えられた課題をどう解決するか」に重きが置かれている気がする、、、と思った。
本著ではAIをAI研究者として現実的に捉え、AIの現在と今後について理論的に語っている。
数十年後に人間を超えて、社会が大変なことになると思っていた人にとっては、驚く内容かもしれない。
AIにできること、できないことを明確に理解し、
これから人間に何が必要か見極めていく必要があると感じた。