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【スポーツ心理学#13】コーチは「自分の経験」が頼りだからこそ、どんな経験をするかが大事
こんにちは。早川琢也です。
ここ最近は少しアクセルふかし気味だったので、
少しスローダウンさせています。
特に、最近は公私で文章を書くことが多いので、
ある一定のペースを保って長く続けるためのシステムを作り上げるかを、
テーマにしています。
今日のテーマはコーチの経験則についてです。
指導において一番のリソースは、「自分が受けた指導」という経験の可能性
コーチが一番頼りにしているコーチングのためのリソースは、
「自分のスポーツ経験や自分のコーチから受けた指導」に頼ることが多い様子です。
この記事を読んで下さってる指導者の方の中には、
以前自分を受けた指導を思い出したり、
現役時代にやっていた事を参考にしている事が多いかもしれません。
実は過去の研究や調査でも、指導する際に過去の経験に頼っている様子が報告されています。
少し前のデータですが、2012年に笹川スポーツ財団が報告した調査では、
アンケートに回答した指導者のうち73.1%の指導者は、
自分が指導をする上で参考にしているのは自分のスポーツ経験だと答えています。
同じ調査で、研修会や参考書を参考にしている指導者はそれぞれ約53%でした。
体罰を受けると一定数の選手は体罰を容認している傾向がある
こちらも少し前ですが、2013年に全国大学体育連合が運動部に所属する学生に対して行った体罰に関する調査では、
調査対象となった選手全体のうち40.9パーセントの選手は体罰が必要だと答えています。
実際に体罰を受けたことがある割合は全体のうち20.5パーセントであり、
体罰を受けたことのある選手のうち57.8パーセントの選手は、
運動指導に体罰は必要だと答えています。
体罰が必要な場面の内訳を見てみると、
危険な行為をした場合や礼儀、規律、日常での不適切行為などが主な理由として挙げられています。
(全国大学体育連合の調査)
仮に、今回の調査結果を単純化して考えてみると、
100人のスポーツ選手がいたとしたら、約20人の選手は体罰を受けた事があり、その20人中の約11人は運動指導に体罰が必要だと感じていることになります。
100人のうち11人が多いか少ないかは、捉え方次第かもしれません。
ですが、もし1,000,000人の選手がいたとしたら11,000人は体罰を容認していることになります。
この結果を見た時はもう少し少ない数字を予想していたので衝撃でした。
おそらくその背景には、いわゆる「教育的指導」として危険なことをした場合や規律や不適切な行動を正すために必要、と考えているのからかもしれません。
このデータを見る限りでは、部活動は教育活動として捉えられているが故に、
スポーツや運動として楽しむ機会へパラダイムシフトする難しさが見て取れます。
さらに、全体のうち78パーセントの選手は、将来指導者になりたいと思わない、と回答しています。
しかし、体育系学部や学科を専攻している学生のうち約64パーセントの学生は、将来指導者になりたいと回答しています。
この調査結果から思うこと
今回ご紹介した2つの調査結果はそれぞれ別の団体が行い、
対象も指導者と選手とそれぞれ異なっていましたが、
・指導者が指導する際に頼るのは、過去に受けた指導である事が多い
・体罰を受けると、一定数の選手は運動指導での体罰を容認する傾向がある
という結果が見えてきます。
つまり、体罰を受けた事がある選手が将来指導者になった時には、体罰に頼った指導をしてしまう指導者が一定数いる可能性がある事が考えられます。
この傾向は決して全体の中の大多数を占めている訳ではありません。
また、データが最新のものではないので、昨今の体罰のない指導を目指す傾向もあり、
この傾向は多少変わってきているかもしれません。
見方を変えれば、今の選手たちが受けている指導方法が、将来のスポーツ指導のスタンダードになっていく事も考えられます。
未来のスポーツの在り方は、今の選手たちがスポーツに対してどのような体験ができるかどうかで変わってくるのではないでしょうか。
こうしてみると、指導者が選手に与える影響はものすごく大きいことが伺えます。
しかし、今現在部活動を指導されている顧問の先生方が膨大な業務がある中で部活動指導をされている現状も理解しているつもりです。
おそらく、多くの先生方はより良い運動指導を学ぶだけの時間と余裕が無いために、
過去に受けた指導を参考にして部活動を教えているのが実態かかもしれません。
このような課題が生まれる背景は、指導者個人の問題と言うよりはシステムの問題も大きいと思います。
部活動の顧問として現場に立つ前に、適切な指導方法を学んで実践できる場が十分にあれば、
不必要に体罰に頼ることも減るかもしれません。
指導者としての資質について考えることも大切ですが、
指導者を育成している仕組みやシステムについては、もっと見直す必要があるように感じています。
今回は少しメッセージ性の強い内容になってしまいましたが、一石を投じるきっかけになればと思い書いてみました。
早川
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![早川 琢也, Ph.D.](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/21839217/profile_cff108fa09d2b1b9adf5b91acb44d1de.jpg?width=600&crop=1:1,smart)