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【読書感想】朝井まかて『福袋』

2020/03/01 読了。

朝井まかて『福袋』

8編からなる短編集。どの話も読後感が芳醇で贅沢な気持ちになれた。

語りは"筆"という「ぞっこん」は、特に私好みの作品だった。栄次郎の元に渡った筆は寄席看板の文字を書くことになる。筆にたっぷり染み込む墨や紙の上を滑る様は読んでいて楽しい。

もうひとつ、かなり唸った作品がある。「暮れ花火」だ。羽織の裏地に絵を描く絵師、およう。このおようは、賢いけど蓮っ葉で男に媚びていない女。枕絵も描いちゃう。この「暮れ花火」、職人の話で恋の話で艶話でもある。 

「腹の上を通り過ぎた男なんぞ脱ぎ棄てて、そんなもの、後生大事に取っときゃしない。(中略)女はいつも、今しかないんだ。だから命懸けで、男を抱く」

かっこいいー!! 

江戸の庶民の悲喜交々。みな生きるのに必死。でも、どこか筋が通っていて恰好いい。

こんな小説読まされたら敵わん。敵わんわ。




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