【読書感想】中村文則『土の中の子供』
2019/05/16 読了。
中村文則『土の中の子供』
親に捨てられ、孤児として生きてきた27歳のタクシー運転手の話。
主人公の名前は記されていないので、「私」もしくは彼と呼びます。
とにかく徹底的なまでの「私」の内省。読んでいて私に「私」が浸食してくる。でも、彼が物を落とす時の興奮も胸の高鳴りも「私」のものであって、分かったようなふりをしている私を恥ずかしく思ったりした。
死を求めているわけではないのに、死の近くにいると感じる観念を、私は知っている。だから、読んでいて辛いのにどこか懐かしさも感じていた。「私」の自意識がなだれ込んできて、私と混じる瞬間が気持ち良かった。中村文則さんの作品は、意図しなくても、自分自身の内省、内観に繋がってしまうことが特徴だと思う。
彼が、施設を訪ねる際のタクシーの中で運転手に対し抱いた感情が好きだ。
「笑った彼を見ながら、気持ちが楽になっていくような気がした。私は、客をこのような気持ちにしたことがなかった」
彼は、彼のオリジナルな方法で克服していっている。すんなりはいかないし、実際いってないけど、ほんの少しの希望を感じながら読み終われたことが私には幸せだった。
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