【読書感想】朝井まかて『恋歌』
2017.02.24読了。
朝井まかて著『恋歌』
私はずっと幕末がわからない。
知れば知るほど、考えれば考えるほど、わからなくなる。
そんな時、この本に出逢った。
直木賞も受賞された、朝井まかてさんの『恋歌』は、攘夷派、佐幕派など、男性から語られることの多い幕末を、女性目線で描いた作品だ。
実在した歌人・中島歌子の手記を、三宅花圃が読み進めていくという構成だ。
構成が実に素晴らしい。
三宅花圃を巧みに使い、新時代である「明治」を表現する。
そして、三宅花圃は聞かされる。
中島歌子という女が、何を見てきて、何の音を聴いて、何の臭いを嗅ぎ、誰を恨んで、誰を愛しているのかを。
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ー戦場の夜も昼もあの人の胸で響き続けるような、そんな言葉をなぜ捧げられなかったのだろうー
中島歌子が戦に向かう夫が詠んだ歌に対し、拙い返歌をしてしまったことを悔やむ一文だ。
天狗党の乱によって捕縛や投獄され、多くの人間が処刑されていく。
その者たちは辞世の句を詠み冥府に旅立つ。
それこそ命懸けで歌を詠むのだ。
31文字に大切な人への想いを込め、その歌は人から人へと渡って、大切な人へと届く。
尊皇攘夷とは。
公武合体とは。
幕府とは。
朝廷とは。
武士とは。
命とは。
幕末のありとあらゆる概念がこの小説には詰まっている。
幕末の悲喜交々が詰まっているのに、それでもこの小説は「恋の小説」であると言い切ってもいい。
生涯でたった一度、本気の恋をした。
中島歌子は、その恋心で生き抜いたのだ。
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