
【読書感想】西條奈加『無花果の実のなるころに お蔦さんの神楽坂日記』
2019/06/05 読了。
西條奈加『無花果の実のなるころに お蔦さんの神楽坂日記』
神楽坂に住む中学生の男の子・望が主人公のミステリ小説。といっても、日常の中に起きるいざござくらいなので、気楽に読める。おもしろいのが、望の祖母のお蔦さん。元芸者でとにかく粋。竹を割ったような性格。欠点といえば料理が全く出来ないこと。ただ、このお宅は、代々男性が料理を担当するので、お蔦さんの食事は望くんが作っている。
望くんの料理とお蔦さんの啖呵を楽しむ小説で、ミステリ要素は少ないけれど、たまにはこういう人情に溢れる街の小説世界に入ってみるのも悪くないなあ。神楽坂のみんなに愛されている少年の素直さがとても可愛らしく、私も望くんのご飯を食べて英気を養わせてもらったような感覚になった。
私は重苦しい陰惨な小説を好むのだけれど、そういった世界に没頭していると少しずつ淀んでくる。日常から離れたくて小説を読むのに、小説の世界でも疲弊するのはあんまり良くないなあと思っていたところだったので、この本でリフレッシュできた。続編も出ているようなので、小説世界に疲れたら、お蔦さんと望くんの街に立ち寄ろうと思います。